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アメリカ・西海岸オフィスは日本でも通用する?UNIQLO CITY TOKYOの事例

[October 03, 2017] BY Kazumasa Ikoma

今年2月、有明に新オフィスを建てたユニクロブランドのファーストリテイリング。8月にはニューオフィス推進賞の中でも最高の経済産業大臣賞を受賞し、そのデザイン性と実用性の高さはさらに多くの注目を集めている。会社としての労働環境整備だけでなく、日本のワークカルチャーを変えたいという柳井正社長の願いは着実に形となっている。

このオフィスをデザインしたのは、アメリカ・オレゴン州ポートランドに拠点を置くAllied Works Architecture。これまでシアトル美術館、カナダ国立ミュージックセンター、イギリスのホロコースト博物館等の文化的建造物からアメリカのプロサッカーチーム・ポートランドティンバーズのホームスタジアムまで世界中で数多くのプロジェクトを担当している。同社のプリンシパル、ブラッド・クロエフィル曰く、上で挙げた柳井社長の「日本の労働文化の変革」という超巨大テーマをこの1プロジェクトでどれだけ実現できるかが最大の課題だったという。

関連記事:「働き方改革」の先にあるオフィスとは

今回は彼らがアメリカ西海岸をイメージして建てたこのオフィスに注目。柳井社長とクロエフィルがサンフランシスコ・ベイエリアのオフィスデザインと文化を日本に導入する上で気を付けた3つのポイントを紹介する。

写真:Allied Works Architectureのウェブサイトより引用

1. 「街1つすべてが働く場所」だという認識の導入

2013年にプロジェクトが開始された直後から、シリコンバレー風のオフィスをただ日本に持ってくることだけはしたくなかったというクロエフィル率いるチームは、ユニクロ社員の働き方を考える上で彼らの「自由」に焦点を絞った。

彼曰く、欧米企業の社員に1つ言えることは、彼らがオフィス内や外、家、カフェ、そしてバーでも仕事をしたがるということ。そこで「街全体がワークプレイス」だという基本的概念と、働く場所を選択する自由をユニクロ社員に教え伝えることに注目した。

実際に新オフィスの名である「UNIQLO CITY TOKYO」はそれから由来している。今まで主に通常のデスクと、ガラスの壁に覆われたミーティングルームの2種類しかスペースのなかったオフィスから、カフェやソーシャルスペース、図書室、ギャラリーの他に約1000人収容可能の巨大ホールも完備して計30近くに及ぶスペースを用意。「玄関」や「ご近所」など、クロエフィルが日本家屋をイメージしてデザインしたというオフィスは社員により多くの働き方を提供している。人の動きを促進して、社員同士のコラボレーションを活発にする環境が日本社員のために設計されているのだ。

写真:Allied Works Architectureのウェブサイトより引用
写真:dexignerより引用

社員にアットホームな雰囲気を感じて欲しかったという柳井社長はラウンジチェアやソファ、木製テーブルなど、自然の中にある住宅をイメージしてオフィス家具を導入。シリコンバレーらしい「仕事とプライベートが一体となった生活」感をこの有明新オフィスとリンクさせた。

自分の住む街のどこでも仕事ができるという雰囲気づくりをまずオフィスで表現したかったのである。

2. 「13日間で商品リリース」のスピードをオフィスで実現

「顧客のニーズに合わせた商品を素早く店頭に並べたい」というスピード感を重視し、Zaraで有名なインディテックス・グループ打倒を掲げる柳井社長。そのための手段の1つとして「速さ」を重視し、商品企画からデリバリーまでのスピードを2週間で行うことを目標にしている。

有明新オフィスでそれを実現するため、デザイン部門やマーケティング部門、物流倉庫を集約。物理的に1つのオフィスに複数部門から社員を集めることで商品供給までの一連の流れをよりスムーズに行えるようにした。

また5000坪という広々としたスペースを確保した点にも注目する必要がある。六本木のミッドタウン・タワーにあるオフィスでは社員を複数階に分けていたのに比べ、この有明オフィスは縦ではなく横に広がるスペースで様々な部門の社員が顔を合わせやすいようになっている。結果的に社員がチームとしてまとまりやすく、仕事の効率を上げる環境が整えられているのである。

写真:Allied Works Architectureのウェブサイトより引用

3. 初日から使われるオフィスの準備

アメリカ西海岸の働き方をイメージして設計したオフィスだからこそ、そのデザインの美しさに関しては自信があったとクロエフィルは語る。一方、それが「日本で実際に機能するのか」という部分は非常に不安だったようだ。

結局オフィスは社員あってのスペースであり、彼らにしっかりと使われるという「機能性」を十分に満たしたものでなければならない。実際にファーストリテイリング社内では複数回の研修を通して、管理職の社員と共に新オフィスのデザインの目的とゴールの共有、また社員自身は好きな方法や場所で仕事して良いという「自由」があるという共通認識の確認を行った。

新オフィスに社員が入る初日、クロエフィルはオフィスで彼らの反応を自らの目で確かめるべくその場に居たのだが、社員が早速オフィスの様々なスペースを気兼ねなく使う光景を見て不安が一瞬で飛び去ったという。新しいデザインの提供と同時に社員への教育も徹底し、新しいワークスタイルの導入をスムーズに行ったのである。

写真:MONOCLEより引用

最後に

働き方改革の1つとしてオフィス改善を目標に、アメリカ西海岸のデザインが日本でも少しずつ見られるようになったが、日本への導入は着々と成功しているように感じる。アメリカでこれまで解決されてきたオフィスの問題点は意外と日本のオフィスのものと近いところがあるのかもしれない。

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現にクロエフィルはユニクロの六本木オフィスを見た際、低い天井の下、個人のデスクだけに留まって働く社員を見て、アメリカでまだ多くの企業が抱えている問題と非常に似ていたと語っている。

柳井社長の打倒Zaraという目標のように世界で戦う企業は日本に多く存在する。そういった企業にこそ、まずは世界で戦えるオフィスを作ることは重要なのかもしれない。

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この記事を書いた人

Kazumasa Ikomaサンフランシスコのエクスペリエンスデザイン会社btraxでオフィスマネージャーを務める傍ら、西海岸のオフィスデザインや企業文化・働き方についての記事を多数執筆。企業や従業員にとって居心地がよいオフィスとは何か、日々リサーチし自社で実践している。

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