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企業の文化醸成をオフィスデザインで実現する

[June 27, 2017] BY Shinji Ineda

素晴らしいオフィスは優秀な人材の獲得にも役立つ

現在、国内では人材が売り手市場といわれ各社が優秀な人材の獲得にしのぎを削っている。それは新卒採用だけに限らず中途採用も同様で、転職希望者は幅広い選択肢から行先を選べる状況だ。企業としてはそのような中で採用活動を行い、あわせて既存社員の流出も防がなければならない。

日本特有の新卒一括採用システムは、学校を卒業したての人材を採用し長い年月と費用をかけて育成していくため、育てた人材が何かしらの成果に結び付く前に離れていく事は、企業にとって大きな損失につながる。また個人にとっても、転職活動が非常にエネルギーを必要とすることは、経験者であればよく御存知の事だろう。もちろん、キャリアアップなどに向けた転職を否定しているわけではない。逆に、上司とそりがあわない、仕事に魅力を感じない、会社の方向性に賛同できないといったネガティブな理由があるのであれば、企業としてはその根源を見直していきたいところだ。そのためには採用時点から、企業と求職者との間で起こりうるズレを解消していく必要がある。もしそれを、オフィスを活用して行えるであれば、検討しない手はない。

「価値観」と「やりがい」から成り立つ企業文化

一般的に企業文化と言われるものは、何を指すのだろうか?私は「価値観」と「事業のやりがい」の2つから成り立っていると考えている。つまり企業文化を醸成することは、価値観を共有し、事業のやりがいを伝えていくことであるといえる。共有や伝え方は様々であり、一般的には普段の会話や社内の育成プログラムの中で行われる事が多い。しかしコミュニケーションに利用できる時間は限られている。Face to Face以外にも日常的に行える手段がある方が望ましく効率的なはずだ。そこでオフィスの出番である。トレンドを押さえたデザインも十分大切だが、それだけでは似通った他社のオフィスと変わらない。企業独自の要素や情報が構成の一部を担っていることが重要ではないだろうか。文化醸成に必要な要素について、ここでいくつかあげてみようと思う。

1. History 歴史や成り立ち

企業設立のルーツや現在に至るまでの歴史を知ることは自分が勤めている企業の理解につながる。しかしどの会社にもあるような支社設立や役員人事の歴史だけでは、成長性を示すだけで不十分といえる。もっと重要なのは、印象的な局面において会社の価値観を具体的に実行したエピソードをあわせて伝えていくことだ。また、価値観を体現してきた人物にフォーカスしてみるのも面白い。

シリコンバレーGoogle Visitor center にある検索結果の手書きグラフ。創業からの主要な出来事も一緒に記載されており、企業成長と歴史を感じさせる。左上には「Culture」の文字。

2. Business 事業の内容

働く者であれば、自身の業務内容を理解しておくことは当たり前である。しかし普段関わりのない仕事、全体の顧客数や売り上げなどの数字、業界内での立ち位置など、幅広く事業内容を把握している人はどこまでいるだろうか。事業の強みや業界での立ち位置を理解することは、企業と個人が行うべきことを明確にし、やりがいを生み出してくれるはずである。

サンフランシスコのAirbnbHQオフィスでは、ユーザーが体験する旅の瞬間を切り出して表示している。体験の成熟度によってグリーン・ホワイト・イエローと色分けし、事業の理解と経験によって得られる知見のギャップを埋め、サービスの改善へと活かしている。(Nadia Surtees Web siteより引用)

3. Charm 企業の魅力

仕事では精神的・肉体的にプレッシャーがかかることが必ずある。また業務のマンネリ化や成長の山をむかえている時期では視野が偏り、良いところも見失いがちだ。そのような時こそ、顧客からの感謝の声、仲間の笑顔、福利厚生や社内のイベント活動など、企業は自身の魅力を積極的に社員に伝えていかなければならない。周囲からの高い評価や仕事の楽しさは事業のやりがいを感じさせ、企業が何を大事にしているかを伝えることができるだろう。

クライアントやユーザーの笑顔と感謝を実感できる仕掛けがオフィスにあれば、社員は企業や事業の魅力にいつでも触れることができるだろう。

4. Brand ブランド

ブランディングにおいて定められたミッションやバリューを、明確に共有し浸透させることは、企業内で働く人々がブレなく進んでいく旗印となる。また対外的に発信されるロゴやスローガンは企業そのものを表しており、そこに価値が蓄積されていく。

リクルートホールディングスのオフィス出入口に設えてられたコーポレートメッセージ。

これらの4つのスパイスをデザインに取り込めば、きっとオフィスは文化醸成への大きなサポートツールとなるだろう。お気づきの方もいると思うが、実はこれらの手法は日本企業でも古くから行われている。会議室に社史や創業者の写真が飾ってあるのを見た事があるだろう。現代にあわせてデザイン表現をアップデートしていく必要もあるかもしれないが、これらが重要なことを我々は知っているのである。

時代は変わっても企業・個人が一体となって成果を残していくためには、バックボーンである企業文化の醸成をしつづける必要があるのだ。

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この記事を書いた人

Shinji Inedaフロンティアコンサルティングにて設計デザイン部門の執行役員を務める。一方、アメリカ支社より西海岸を中心としたオフィス環境やワークスタイルなどの情報を、地域に合わせてローカライズ・ポピュラーライズして発信していく。



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