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ABW導入でよくある6つの失敗

[October 13, 2020] BY Kazumasa Ikoma

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5. フリーアドレスと混同している

フリーアドレスとして使えるデスクや在宅勤務制度を用意し、柔軟な働き方を提供することで、アクティビティ・ベースド・ワーキングを実現させたと誤った達成感を持つのもよく起こる失敗だ。確かにこれはアクティビティ・ベースド・ワーキングを実現する過程で必要な要素だが、社員の作業内容と用意されるデスクや空間につながりがない点に課題がある。

そもそもフリーアドレスやホットデスキングは単にデスクを「共有」することである。この点に関しては、確かにアクティビティ・ベースド・ワーキングでもいくつものワークプレイス環境を共有することが含まれるため、類似しているように見える。しかし、似ているのはここまでだ。

フリーアドレスにはナレッジ・ワーカーの複雑な作業につながる空間の選択肢が十分に準備されておらず、働き方やマインドセットの変化を伴わない。(大抵の場合、個人デスクと会議室の2つの選択肢しかない。)従業員は自身の活動が変化しているという気付きを得ることはなく、上司との信頼関係が深まる訳でもない。また、オープンエリアのデスクで、1日何時間も作業をし、周囲にさらされた状態でコラボレーションを行うことになる。このような状況ではクリエイティビティや集中力をもって仕事をすることはできない。「フリーアドレスとの誤解が解けないままに、失敗に終わることは驚きではない」とミーハン氏は言う。

例えば、外出が多い営業部署では特にフリーアドレス制度が導入されるケースが多いが、ただ共有デスクが用意されただけでは彼らもどのように活用して良いかわからず、本質的に生産性を高めることにつながらない。営業の作業を紐解いてみると、企業によって異なるものの、基本的には顧客との電話に、他の営業チームや他部署との情報交換、また管理部からのサポートを受ける作業が主になる。これだけ複数の活動がありながら、ただ単に共有のデスク環境を用意しただけでは、結局のところ営業が成果を出すための鍵となる活動を何一つ支えることなく終わってしまうのである。オープンエリアにある共有デスクは、顧客との電話に適している訳でもなければ、多部署とのアイデア出しや営業チーム内での成功事例の共有にも向いていない。「営業のために特別に導入されたフリーアドレス」が実のところまったく彼らから好かれないのは当然のことなのである。

6. テレワークと混同している

アクティビティ・ベースド・ワーキングは、誰もが自ら選んだ場所であればどのような環境でも最善を尽くすという信頼に基づいているため、多くの場合、企業は従業員が他の場所や在宅で仕事をすることを奨励する社内ポリシーを作成するという。 ミーハン氏によれば、これは組織がある程度成熟していることを前提としていると言う。

アクティビティ・ベースド・ワーキングは、企業が従業員の多様な活動を理解し、働く場所によらず、高度な信頼と責任を彼らに与えることになる。その結果、組織が進化し、テレワークを選択する従業員とオフィスにいる従業員の両方が同じ従業員経験(エンプロイーエクスペリエンス)を体験することができるようになる。例えば、テレワークであっても、オフィスで働いているのと同じような組織としての一体感を持つことや、オフィスにいなくても意思決定から外されていないという実感を持てるようになる。

一方で、テレワーク関しては、日本では多くの企業が書面でリモートワークに関するポリシーを定めているが、実際にうまく運用されていない。
ポリシーとしてテレワークを実施しているだけでは、知識共有や意思決定、アイデア出しなどの活動がテレワークではうまくサポートされず、ほとんどのケースで単なるオフィスコストの削減手法としか見なされない。その結果テレワークは、人々に働く場所を選ぶ権利を与える手段とは見なされないのである。

すべての組織に効果的なアクティビティ・ベースド・ワーキングの「公式」は存在しない

「自由な選択肢を与える働き方」というアクティビティ・ベースド・ワーキングには、「奔放」といったイメージを抱く人もいるかもしれない。しかし、実際にはそんなイメージでは片付けられないほど複雑かつ高度な変革が行われていることが今回の記事でわかったはずだ。

アクティビティ・ベースド・ワーキングは働き方そのものではなく、「フィロソフィー」だと語るミーハン氏。すべての会社に当てはまる「公式」というものは存在せず、他社の成功事例がそのまま自社に当てはまるものでもないという。あくまで軸となるのは、各会社の組織を構成する社員の細かな働き方の習性・傾向だ。同様に、パイロットプロジェクトを行うにしても、対象となる一部署が全社員を表しているわけではないため、プロジェクトごとに細かな分析が必要となる。自社を把握するために小さな一歩を踏み出せる企業こそ、大きな変革を生み出せるとミーハン氏はまとめた。

ライフスタイルや価値観の多様化を背景に、複雑さを増す働き方。次世代に向けた働き方には柔軟な順応力が求められる。

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この記事を書いた人

Kazumasa Ikomaオフィス業界における最新情報をリサーチ。アメリカ・サンフランシスコでオフィスマネージャーを務めた経験をもとに、西海岸のオフィスデザインや企業文化、働き方について調査を行い、人が中心となるオフィスのあり方を発信していく。

    
    
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