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拡大する企業・自治体の副業人材活用 ― テレワークでさらに活性化 

[December 15, 2020] BY Fusako Hirabayashi

変化する副業のかたち

従来の副業は、投資、駐車場などのシェアビジネス、アフィリエイトや転売といった個人でできるものが主体であったが、最近では勤務先とは別の企業で副業をするケースも増えてきている。最近、ヤフー株式会社が「ギグパートナー募集」と銘打って大規模な募集を行い話題になったように、大企業や自治体でも副業人材の募集事例が見られ、自治体や中小企業を対象とした副業人材マッチングサービスも盛んになってきた。

本記事では、企業や自治体における副業人材の募集事例を紹介し、関連するマッチングサービスにも触れつつ、現在の副業人材活用の流れを概観する。

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大企業における副業人材の受け入れ

人材確保が難しい中小企業だけでなく、人気の高い大企業でも副業人材の募集が増えている。その中から、3社の事例を紹介しておきたい。

1. ヤフー株式会社

2020年7月に「ギグパートナー募集」と銘打ち、約100名の大規模募集を発表した。原則として出社を伴わないオンライン業務で、契約形態は業務委託。年齢制限はなく、未成年でも保護者の同意があれば応募できる。10月28日付けのプレスリリースによると、応募者は4,500人以上とのこと。10歳~80歳までの104名が選出され、すでに業務を開始している。

同社は、コロナ禍でのリモートワーク拡大を経て、2020年10月1日からリモートワークの回数制限やフレックス勤務のコアタイムを廃止し、「無制限リモートワーク」という働き方に移行した。これにより、副業人材の受け入れが容易になったことを下地として、今回の募集を実施。その目的は、ニューノーマルで必要とされるオープンイノベーションを推進するため、様々な人の意見を取り入れることと謳っている。

2. サイボウズ株式会社

複業採用」として通年受け付けており、基本的にどの職種にも応募できる。同社は、2007年から離職率の低減を目的とした働き方改革を進め、在宅勤務制度も2010年に導入済み。2012年には、社員の都合に合わせて働く場所と時間帯を選べる「ウルトラワーク」制度へと拡大している。自社の社員の「複業(本業がいくつもある状態)」を認めたのも、同じく2012年だ。

複業採用を開始したのは、2017年1月のこと。同社コーポレートブランディング部長の大槻幸夫氏は、同制度について、社員の複業が新たな人脈や知見をもたらしていることから、多様な人材と出会うことを狙いとしていると『BUSINESS INSIDER』で語っている。

3. ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社

withコロナ時代のパラレルキャリアを応援」するとして、2020年7月に副業人材の募集を開始した。募集は通年行われており、業務は全てオンライン。原則として20歳以上の社会人が対象だが、プロジェクトによっては学生の応募も可能だ。選考もオンラインで行われるため、世界中どこからでも応募できる。

個人としての応募だけではなく、提携企業・大学からの副業・インターンシップ人材の受け入れも行う。同社は、2016年に社員が働く場所と時間帯を選べる「WAA(Work from Anywhere & Anytime)」制度を導入しており、今回の副業人材募集はそれを拡張したものと位置付けられている。

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地方自治体でも副業人材募集が拡大

2019年には、北海道余市町や大阪府能勢町が、戦略推進ポジションの人材を副業・兼業限定で募集している。このほかにも、自治体では以下のような募集事例が見られる。

1. 奈良県生駒市

エン・ジャパン株式会社と連携協定を結び、2019年10月にICT推進や収益確保など7ポジションを、「副業&テレワークOK」で公募した。「民間人材だけでなく、現役の国家公務員・地方公務員の応募も歓迎」とし、生駒市自体が職員の副業を認めているだけあって、他自治体の公務員の応募も受け入れた。

約1カ月にわたる募集期間中の申し込み者数は1,000名を超え、一番人気の観光企画担当ポジションは295倍と高倍率に。関心の高さがうかがえる結果となった。

2. 岡山県岡山市

株式会社みらいワークスの支援を受け、2020年6月に「戦略マネージャー職」を副業・兼業限定で募集。民間企業の実務経験者が対象で、日給25,000円(交通費別)という高報酬でも話題を呼んだ。契約形態は業務委託、勤務時間は週1回程度で、勤務地は岡山市役所とテレワークの組み合わせ。

最終的に616名の応募があり、5名が採用された。そのうち、3名が副業、2名がフリーランスの兼業だった。プロモーション戦略マネージャーには、テーマパーク事業でのブランドマーケティングが現職という、本業のスキルを生かせる人材が採用されている。

3. 兵庫県神戸市

2020年9月に、株式会社クラウドワークスのサービスを利用して、広報関連の専門スキルを持つ「副業人材」40名の募集を開始した。業務内容は、SNS・広報紙用の記事制作や動画の企画・写真の撮影など。基本的に登庁を伴わないオンラインでの業務となり、契約形態は業務委託。募集開始後わずか10日間で1,000名以上の応募があり、県外からの応募が半数を超えたことが報告されている。

副業人材マッチングサービスも盛んに

副業人材

大企業が副業人材の募集を自社で行う一方、地方自治体や中小企業では転職サービス事業者や副業人材マッチングサービスを利用するケースが多く見られる。

1. 企業との連携で行われた自治体の公募

先にあげた自治体の副業人材募集事例は、いずれも民間の仕事紹介サイトと連携して実施されている。

生駒市はエン・ジャパンと提携しており、応募するためには同社サービスサイト内の「エン転職」「AMBI」「ミドルの転職」のいずれかに登録する必要があった。岡山市はみらいワークスの特設ページを、神戸市はクラウドワークスが運営する副業マッチングサービス「クラウドリンクス」を利用している。

2. 副業人材専門サービス

副業人材専門の人材紹介会社も複数登場している。スタートアップ企業メインに副業人材をマッチングする株式会社シューマツワーカーは、2020年7月に4億円の資金調達を発表したが、その時点での公表登録者数は2万3,000人超。みらいワークスが運営するサービスであり、地方の中小企業と都会で働く人材のマッチングを専門とする「Skill Shift」は、2019年に全国102市町村、約400社の求人を掲載し、応募率99.6%を達成している 。

その他、株式会社Another Worksが提供する、職種を限定しない総合型を謳った「Another works」、株式会社ホールハートが運営するプロ人材を対象とした副業紹介サービス「プロの副業」なども例としてあげられる。

また、経済産業省関東経済産業局も株式会社パソナJOB HUBに委託して、「複活(ふくかつ)」プロジェクトと銘打ち、長野(塩尻)・静岡・茨城の3エリアで複業(複数の仕事を持つ)人材募集の支援を行っている。

転職サービス事業者や副業人材マッチングサービスを利用することで、募集側は「サービスサイトに登録している人材にリーチできる」、「サービス事業者の採用ノウハウを活用できる」といった利点を生かせる。応募側にも、サービスサイトへの登録で募集を見つけやすくなるというメリットがあり、今後もこの傾向は続くと予想される。

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さらなる広がりが期待される副業・兼業人材の活用

テレワークで行える業務の増加に伴い、外部の副業・兼業人材を受け入れやすくなってきている。自治体に関しては、募集によるPR効果も期待できるため、今後も募集発表は続くであろう。

株式会社リクルートキャリアが報告した「兼業・副業に対する企業の意識調査」によると、すでに導入している企業は、「多様な人材を確保できる」、「自社では培えない経験・知識が得られる」ことなどをメリットとしてあげている。受け入れた自治体や企業の具体的な成果が明らかになっていけば、実質的な効果を期待した募集がさらに増えていくのではないだろうか。

一方の応募者については、コロナ禍でのテレワークへの移行や収入面での不安などの影響もあり、副業・兼業を希望する会社員が増えているという。企業が副業を容認しない理由の一つとされる「副業・兼業先との労働時間の通算義務」を緩和するため、2020年9月に厚生労働省から「労働者の自己申告制」と「簡便な労働時間管理方法」を認める通達が出されている。これにより、副業を解禁する企業が増え、副業・兼業人材が質量ともに充実していくことが期待される。

組織には外部人材の活用力が、個人にはプロフェッショナル人材として副業・兼業でも活躍できる力が求められる時代になりそうだ。

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この記事を書いた人

Fusako HirabayashiIT系大手企業で研究開発、新規事業立ち上げなどの業務に携わりながら働き方とそれを支える環境に関心を持ち、裁量労働制の導入検討委員を担当する。宅地建物取引士資格を取得し、不動産仲介業務にも従事。現在は、フリーランスのライターとして、新しいワークスタイルやワークプレイスについて発信している。



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