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テレワークがはらむリスク、「サイレントうつ」をどう予防するか

[April 30, 2021] BY Mika Kozawa

テレワークが引き起こす「孤立」「疲労」「ストレス」

コロナ禍によって、多くの企業活動および個人の働き方が変わりつつある。その変化は世界各地で見ることができるが、日本においてはどのような特徴があるだろうか。Microsoft社が2021年3月に発表した「Microsoft 2021 Work Trend Index」によると、世界と比較して日本のワーカーたちには次のような傾向があることがわかっている。

・仕事中に孤立していると感じている(日本35%、世界平均27%)
・仕事で疲労を感じている(日本48%、世界平均39%)
・仕事でストレスを感じている(日本45%、世界平均42%)

2020年以降、パンデミック対策として浸透しはじめた「テレワーク」が、上記のデータに少なからず影響を与えたことは想像に難くないだろう。今後も「テレワーク」推奨の継続が予想される中、「孤立」「疲労」「ストレス」に対するケアは企業にとっても喫緊の課題だと言える。

筆者はこれらを「テレワークうつ」の要因と捉え、さらにそれが進行した状態を「サイレントうつ」と呼んで社内外に向けて警鐘を鳴らしている。「サイレントうつ」は、オフィスとは異なる環境、つまり周囲に人が少ないテレワークで起こりやすい状態だ。周囲の人も自分もなかなか気付きにくいことから、「サイレント」という言葉をあてている。今回はその原因と予防策について、具体的な事例を取り上げながらお伝えしたい。

関連記事:テレワークにおけるストレスマネジメント ー 企業・チーム・個人それぞれの対策

「サイレントうつ」とは何か

「テレワーク」という働き方には、メリットがある。その代表が「場所や時間に縛られず働けること」「通勤時間がないぶんストレスが減ること」などだ。

一方で、テレワークという環境が心身に不調を生むケースもあり、アイ・タップ株式会社がオンラインエクササイズの参加者52名を対象に実施したアンケート結果もそれを示唆している。注目したいのが、「リモートワーク前と後での健康面の変化はありましたか」という質問に対し、52.17%が「悪い」と答えている点だ。

リモートワークにおける健康課題と期待されるオンラインエクササイズに関する調査結果
(画像はアイタップのウェブサイトより)

「サイレントうつ」は、まさしくこうした健康面の変化を象徴する。オフィスでは感じ取りやすかった表情や雰囲気などの変化は、テレワークだと周囲には伝わりにくい。中でも筆者は、以下のような心理的変化・環境の変化が「サイレントうつ」を引き起こしていると考えている。

・自宅というメリハリをつけにくい環境で長時間勤務になったこと
・他人とのコミュニケーションが減ったこと
・以前に比べて仕事による極度のストレスが増えたこと
・新型コロナウイルスに対する不安
・ニューノーマルへの突然の移行

さらに、大企業の若手・中堅社員を中心とした約50の企業内有志団体が集う実践コミュニティ・ONE JAPANが、1400名のワーカーを対象に行った調査(2020年4月)を見てみよう。このデータによれば、「在宅勤務・テレワーク・リモートワーク制度に賛成しますか?」という質問に対して96.8%が賛成の意思を示す一方、81.3%が「制度に課題や支障がある」と回答している。

新型コロナウイルス感染拡大「働き方」意識調査
(画像はONE JAPANのPDF資料より)

加えて、制度に課題や支障があると考える理由として「誤解や勘違いを避けるために、コミュニケーションの負担が増える」(452人)、「職場の一体感がなくなる」(393人)、「自分がどのように評価されているか不安」(140人)といった項目を挙げる人が多いことは注目すべきデータだ。ここから、テレワークの機会が増えることで、コミュニケーションが減少し、それによってワーカーに負の感情が芽生えやすくなっている様子がうかがえる。この結果は、まさにテレワークが「孤立」「疲労」「ストレス」を引き起こす原因になり得ることの証左と言える。

企業ができる「サイレントうつ」への対策

では、テレワークがもたらすこうした変化に対し、企業はどのような対策をとるとよいのだろうか。筆者がおすすめするのは、「テレワークが向かない人もいる」ことを考慮しながら、「働き方の指針」や「組織としてのコミュニケーション方法」を決定していくことだ。また、定期的に社員のメンタルに関するアンケートを実施する、必要に応じて産業医に相談できる環境を整えるなど、リモートであっても、不調を訴える社員をケアできるような環境の整備も重要だろう。

以下に、具体的な施策をいくつか紹介したい。主に筆者が所属する株式会社ニットの事例だが、それぞれに共通する重要なポイントは、「孤独感を感じさせない組織づくり」と「様々な施策の中で、社員が自分に合った方法で心理的な安全性を確保する」ことだ。

関連記事:テレワーク時代に変化する「人の距離感」 4つのキーワードから探る

メンバーが「孤立」しない環境づくり

メンバーの孤立を防ぐ上では、「オンラインコミュニティを創ること」が有効に働く。例えばニットには、業務に関するもの、趣味や雑談といった業務外に関するものなど、27個のコミュニティが存在する。いわゆるオンライン上のサークル活動だが、普段の業務とは異なる人間関係を構築する場として機能しているほか、仕事の息抜きにもなっている。

コミュニティで培った関係性が実際の仕事におけるコミュニケーションを助け、組織の活性化につながるなど、組織マネジメント上のメリットも多い。「コミュニティ活動でのやる気を見て仕事をお願いした」という事例もある。具体的には、「ライティング・スキル向上のコミュニティ」にキャッチコピーの依頼や執筆の仕事が来るなどしている。こうした仕組みは、「孤独感」や「不安感」などを拭い、「サイレントうつ」の予防となるのではないだろうか。


ニットのオンラインコミュニティ例

また、「オンラインイベントの定期的な開催」もおすすめの施策だ。ニットでは世界33カ国400名のメンバーがいるため、対面で全員が参加することは現実的に厳しい。しかし、オンラインイベントであれば世界中のメンバーが参加することが可能だ。

これまで、入社式・お花見・忘年会・バーチャル世界一周旅行などをオンラインで行ってきた。そこでの企画には、ビンゴ・クイズ・絵描きしりとりなど、メンバー同士のコミュニケーションを活性化させるものを採用している。つまり、新人やベテランといった社歴や年次に関係なく楽しめるコンテンツを設計することが大切だ。

同時に、オンラインイベントでは「社長から定期的にメッセージを届けること」も意識している。節目節目で全社会議を実施し、社長から直接メンバーに普段の業務への感謝の気持ちや会社のビジョン・ミッションなどを伝えることで、会社への帰属意識や一体感の醸成を創出している。

ニットのオンライン花見の様子

メンバーの「不安」を取り除く環境づくり

ニットでは入社時に必ず人材育成担当者がつく。具体的には、入社時に1回、さらに入社後の3カ月は毎月1回、1on1ミーティングを実施している。その主な目的は、「新しく入った人が働きやすいようにサポートする」ことだ。「何がわからないかわからない」「誰に聞いたらいいかわからない」といった不安をなくすため、1on1で心理的安全性を確保しているのだ。

こうした取り組みはもちろん他の会社でも見られる。例えば、株式会社Looopではピアボーナス(社員同士で感謝の言葉や報酬を送り合う仕組み)を導入している。同社のさらにユニークなところは、ピアボーナスに「ストックオプション(自社株購入権)」を取り入れている点だ。ピアボーナスが20ポイント貯まると「1株」になり、これが役員から新入社員まで分け隔てなく与えられるという。「ありがとう」を送り合うことで孤独感をなくす。まさにサイレントうつ予防策の好例と言えるだろう。

身体が資本、「一生懸命休むこと」も仕事のうち

筆者自身、テレワークという働き方をしているが、一長一短がある。「通勤時間がなくなり、生産性が飛躍的に向上する」というメリットがある一方で、以上に見てきたような「サイレントうつ」のリスクもはらむ。オフィスに出社するという働き方のメリットは「コミュニケーションの増加」だと言えるが、同時に通勤のストレスや柔軟性の欠如といったデメリットも多い。企業にとっては、今後は、出社とリモートワークそれぞれの良いところを活かしてハイブリットな働き方を実現するのが一番だろう。

個人としては一生懸命に仕事に取り組むのも大事だが、「一生懸命、休む」ことも大事だ。まずは、心身ともに健康であること。その上で、仕事のやりがいを追求したり、余暇や学習を楽しんだりしていけるといいだろう。「サイレントうつ」に気を付けながら、「テレワーク」という新しい働き方が、読者の働き方や生き方がより豊かになるような選択肢になってほしい。

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この記事を書いた人

Mika Kozawa新卒でリクルート入社。採用領域の営業、営業マネージャーを経て、リクナビ副編集長として数多くの大学で講演実施。採用、評価、育成、組織風土醸成など幅広くHR業務に従事。中米ベリーズへ単身移住・起業。その後、ニットに入社し、営業・人事を経て、広報。オンラインファシリテーターとしても活動中。

    
    
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