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シリコンバレーと日本の違い?アメリカ企業のユニークな社員特典

[November 21, 2017] BY Kazumasa Ikoma

ユニークなオフィスや働き方を推し進めるサンフランシスコ・ベイエリアでは社員への特典もまた興味深いものが多い。今回はベイエリアのスタートアップ企業を中心にアメリカの企業で見られる独特な社員特典を紹介する。

1. 無制限休暇

数年前からメディアで注目を集めることが多くなった企業の無制限休暇。社員は有休日数を気にすることなく休みを取ることができる。この制度を導入する企業の中には上司の許可を必要としないところも多いが、傾向として結果主義の企業に見られることが多い。

この無制限休暇制度は企業にとってもメリットがあると言われている。あえて制限を設けないことで、来年に繰り越せない有給をなんとか使ってしまおうとする社員の動きが見られなくなるという。またいつでも行使できるという安心感から、結果的に制限を設けていた時よりも使われる休暇日数は少なくなる傾向にあるようである。企業の人事担当者が社員の休暇日数をカウントする手間を省けるのもメリットの1つだ。

カリフォルニア州ロスガトスに拠点を置くオンラインストリーミング会社のNetflixでは10年以上前から無制限休暇を導入している。社員の労働時間よりもパフォーマンスを重視するこの企業の特徴がここで明確に表されている。

同じくサンフランシスコ・ベイエリアに拠点を置く、ビジネス特化型ソーシャルネットワークサービスを提供するLinkedinやレストランフードのデリバリープラットフォームを運営するGrubHubでも数年前に同様の制度を開始。社員の時間の使い方を信頼しているからこそ導入を決めたようだ。他にも世界的に有名な会計事務所グラントソントンやコングロマリット企業のゼネラル・エレクトリックといった大企業も同制度を福利厚生の1つとして社員に提供している。

2. ボランティア活動のための有給休暇

企業の社会貢献が今ではより一般的になったこと、それに加えてアメリカのミレニアル世代の社会に対する意識が高いことから、無制限休暇とは別にボランティア活動を行うための休暇制度を設けている企業がある。

私立の保育施設であるThe Goddard Schoolや インテリアデザイン事務所のJennifer Adams Worldwide、Webメールシステムを提供するソフトウェア会社のZimbraといった様々な企業では、社員に有給休暇もしくはフレキシブルな就業時間を提供し、彼らのボランティア活動の推進を行っている。特にZimbraの前CEOであるパトリック・ブラント氏はBusiness News Dailyの記事にて「このような社会奉仕活動は現代のワークプレイスに必要なもので結果的に社員のモラル向上にもつながる」と述べ、現代の企業制度には欠かせないものだと語っている。同様に靴を中心にアウトドア用品を展開するTimberlandの社員は、年に最大40時間までボランティア活動のための有給休暇を取れるようになっている。社会貢献を希望する社員をサポートすることで結果的に企業のイメージアップも繋がり、実は社員と企業共にWin-Winな制度となっている。。

3. 就業時間が定められていない

上に挙げたように社員個人の時間の使い方について信頼を置いていることを表す形で、就業時間を決めていないという企業もある。上に挙げたNetflixでは休暇日数だけでなく、就業時間のトラッキングも行っていない。9時-5時で働くという概念はもはや存在しないのである。

一方で、ミーティング等を行ってチームで揃って仕事を進めていかなければならないプロジェクトがあるのも事実。この制度は個人作業の時間という枠の中で、決められた時間に働きたがらない一定数のエンジニアや、子育てに忙しい父親や母親に好評のようだ。

4. 家庭を大切にする

家族、家庭を大切にするように社員をサポートする制度を企業側が用意することも今では多い。

Facebookでは新しく母親もしくは父親となった社員に4ヶ月の有給育児休暇を与えるだけでなく、最大$4000の「ベビーキャッシュ」と呼ばれるお祝い金に加え、ベビーシッターや託児所、養子縁組にかかる費用の払い戻しも行っている。似たような形で、ファーストフード店のCapriotti’s Sandwich Shopは理由を聞かれることなく子供のイベントに参加できるよう、自由にいつでも取れる休暇日の使用を社員に推奨している。社員のワーク・ライフ・バランスを気にかける企業にとっては取るべきアクションの1つだ。

5. 社員の学校教育をサポート

優秀な社員に対し大学院の授業料をサポートする企業は珍しくないが、社員の学びを支えるのは何もそれだけではない。学習意欲の高い社員に対し教育支援サポートを行っている企業も存在する。

有名カフェチェーンのStarbucksは資格のあるアメリカの従業員を対象にCollege Achievement Planを提供し、学費全面負担の上でアリゾナ州立大学のオンラインプログラムにて学士号の取得をサポートする取り組みを行っている。2017年2月にはそのプログラムを拡大し、資格が足りていない従業員に対して上記のプログラムを受講するために、アリゾナ州立大学のサポートチームが彼らに必要なコースを見つけてあげた上で、同大学の1年生レベルの授業を無料で何度でも受講できるようにしている。

また、アメリカでは新入社員の多くが学生ローン返済に苦しんでいる背景があるが、PricewaterhouseCoopersでは、社員の学生ローン返済のために1従業員ごとに年に$1200を負担している。優秀な学生を獲得するためにこれまでの学費をカバーするのも特徴的な社員特典の1つになっている。

6. 国境を超えた、全社スポーツイベントを開催

社員同士の円満な関係を構築することは企業の役目であるが、ある企業ではそれが社員だからこそ受け取れる特典という形で提供されている。

2017年にThe Best Place to Workに選ばれたBain & Companyでは、毎年2日間をかけて行われる全社員向けのサッカートーナメント、「Bain World Cup」を開催。世界中にある同社のオフィスごとにチームを組んで参加しているようだ。昨年はベルギー・ブリュッセル、今年はアメリカ・ロサンゼルスで行われた。

同社の企業カルチャーを表す「A Bainie never lets another Bainie fail(社員は助け合うこと)」という標語のもとに行われている企業行事の1つだが、今ではBain & Companyの社員ならではこそ味わえるイベントとして知られている。

<大会の様子はこちらから>

7. 卵子凍結費用を補助

女性社員が比較的少ない傾向にあるテクノロジー企業では、このように新しい技術を社員特典の1つに導入し彼らの働き方により多くの選択肢を与えるサポートを行っている。

卵子冷凍保存補助が初めて導入されたのは2014年のFacebook。女性社員、もしくは社員の配偶者が卵子を冷凍する費用をすべて会社が負担するという内容の福利厚生で、1回の実施に1万ドルはかかるという。Facebookでの導入直後にAppleも採用し、現在はGoogle、Intel、Linkedin、Netflix、Uber、Yahoo等少なくとも10以上の企業が福利厚生として卵子冷凍保存のサポートを提供している。

妊娠、出産をする年齢を気にせずに仕事に集中してもらいたいという想いから生まれた制度であるようだが、上記のようにテクノロジー企業を中心に導入されていることから、冷凍保存で妊娠時期を遅らせるのではなく、社員のワーク・ライフ・バランスを改善することこそが本当に解決すべき問題だと議論されている。

8. 性別適合手術費用を負担

アメリカならではの社員特典はここにも隠されている。

ニューヨークに本社を置く金融会社、Goldman Sachsは2008年から性同一性障害の社員に対して、一般的に$5000から$150,000までかかるとされる性別適合手術の費用を企業の保険で負担できるようにしている。同様に銀行のBank of  Americaやこれまで挙げてきたNetflixやFacebookでも自社のヘルスケアポリシーに従い費用の負担を行っている。

ワシントンD.C.に拠点を置くNGOのHuman Rights Campaignによると、費用負担を行う企業が2009年で49社程度だったのに対し今年の2017年で647社まで増えているという。年々高まるLGBTへの関心と共にこのような制度の充実は強く求められているのである。

関連記事:LGBTフレンドリーな職場に必要なことは

まとめ

このように社員待遇において独特な特徴が見られるが、共通点として「社員の仕事の仕方」や「社員のアイデンティティー」といった、社員の個性を問う部分が尊重されるようになっているように感じる。社員をケアしている企業にこそ、本記事で挙げた社員待遇の例は良い参考になるのかもしれない。

 

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この記事を書いた人

Kazumasa Ikomaフロンティアコンサルティングにてリサーチャーを務める。アメリカ・サンフランシスコでオフィスマネージャーを務めた経験をもとに、西海岸のオフィスデザインや企業文化、働き方について調査を行い、人が中心となるオフィスのあり方を発信していく。

    

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