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FinTechのマネーフォワードが「金融 × スタートアップらしさ」を表現したオフィスとは

ICCサミット FUKUOKA 2019のセッションと連動したオフィス訪問シリーズ。第2回は、2018年7月に、JR田町駅芝浦口(東口)に隣接する「msb Tamachi(ムスブ田町)」へ移転したマネーフォワードを訪ねました。

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ICCサミット FUKUOKA 2019のセッション「我が社のEX(従業員体験)-オフィスで生み出すコラボレーション体験とは?」で紹介する企業のオフィスを訪問するシリーズ、第2回は、2018年7月に、JR田町駅芝浦口(東口)に隣接する「msb Tamachi(ムスブ田町)」へ移転したマネーフォワードを訪ねました。ぜひご覧ください。

– ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

複数に分かれた口座を一元管理できる、お金の見える化サービス「マネーフォワード ME」、クラウド型ソフトの「マネーフォワード クラウド会計」「マネーフォワード クラウド確定申告」など、個人から法人までのお金の課題を解決するさまざまなサービスを提供するマネーフォワード。2018年の7月に移転したばかりの「msb Tamachi(ムスブ田町)」にあるオフィスを訪ねた。

JR田町駅西口からオフィスタワーは歩行者デッキで直結している

このmsb Tamachi、田町駅駅前ながら東京ドーム1.6個分の広大な敷地に、オフィスタワーが2棟、保育園、芝浦公園に、日本に初出店するフランスのアコーホテルズのアップスケールブランド「プルマン」を有する最新の大型複合施設である。駅からオフィスタワーまでは、雨に濡れずに移動することができる。

エントランスに近づくと、広々とした明るい入り口から、保育園の園児たちが歩行者デッキいっぱいに飛び出してきた。車通りもないために安全に、敷地内の公園へ向かうようだ。緑が多く、多様性に富んだ人たちが行き来する敷地は、ビジネス街田町の職場に向かう風景として新鮮だ。

エントランスから執務スペースへ

マネーフォワードの新オフィスのエントランスは、移転前に似ているが、以前よりも進化している。最初の写真でもわかるように、社名に右肩上がりの木材のデザインは、天井に達して終わりではなく、そのまま伸びている。さらなる成長を目指そうという志のシンボルのように見える。

社名ロゴの裏側のミーティングスペース。ここにも右肩上がりの階段がある

エントランス横の待合スペースも明るいビタミンカラーで、カフェのような雰囲気だ

床面には、ドルのマークが描かれた足跡のペイント。これに沿ってオフィスの中へ

執務スペースを望む

上の写真の通路両側には会議室があり、それを抜けると、左手にリフレッシュルームがある。壁には大きなグラフィティや書棚があり、明るくリラックスできるスペースだ。この場所はランチや、軽い打ち合わせ、フリーアドレスなど多目的な利用をされているといい、社員にも一番人気のスペースだそうだ。

リフレッシュルーム

遊び心のあるデザインの書棚

ビジョンである”BECOMING THE FINANCIAL PLATFORM FOR ALL”という文字が描かれている

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この絵の壁の向こう側は固定席がある執務エリア。大きく法人向け、個人向けの2つにL字型に分かれ、その両方を見渡せる位置に代表取締役社長 CEOの辻 庸介氏の席がある。

社長席からフロアを見渡したところ

写真からは少しわかりにくいが、デスクはあえて斜めに配置されており、目的地には直線で着けない代わりに、コミュニケーションが生まれるような仕掛けにしている。感覚知としては、その効果は上がっているという。

眺めのいい窓際をフリーエリア化

窓際にはさまざまなスタイルのフリーエリアが設置されている。周囲からもひときわ高いこのビルからは、スカイツリーやお台場、夏は花火など、東京タワー以外の主なランドマークはほぼ見えるのだそうだ。いい景色を見て、リフレッシュして仕事に望めるようにと、思い切って窓側をほぼフリーエリアにしている。

モニターのあるテーブル席

個室感のあるファミレス席

カウンター席

靴を脱いで上がる小上がり席。奥に浮かんで見える風船は照明器具

窓側ではないが、デスクスペース以外にもちょっとした作業スペース、打ち合わせスペースがふんだんに設けられている。壁のあちこちにはバリューが描かれている。

ゴミ入れなどを兼ねたカウンタースペース。執務室を出ずにトイレの空き状況が表示されるパッドは、社員の要望で実現

落ち着いた雰囲気のファミレス席

一人で作業に集中したいときのためのMokuMokuブース

非対面式の1on1用スペース

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一通り見せていただいたところで、会議室に移動して歴代のオフィス移転を担当してきた社長室 デザイナーの金井恵子さんと、社長室広報部 部長の柏木彩さん、入社したばかりの社長室広報部の早川有紀さんにお話を伺った。

「The Site」→「BASE CAMP」→「Let’s make it!」へ

写真左から金井さん、柏木さん、早川さん

金井さん「人数が増えたことで、拠点が2箇所のビルに分かれてしまって、コミュニケーションコストがかかるようになっていました。50名と200名ぐらいに分かれていたのですが、全員が1つのオフィスに集まりたいということから、移転の話になりました。

以前のビルも、移転のときにいろいろと工夫して作ったのですが、人員増で最終的にはすべて執務エリアとなり、社員からオフィスの空気が薄いという声が上がるほどでした。不満、ストレスが高いなかでの移転でした」

金井さんは社員数十名の時代からマネーフォワード在籍。自分が思うマネーフォワードの大切にしたいところは明確だったが、全社員に向けて、会社の好きなところ、誇りに思っているところを全社アンケートで集めたという。

金井さん「オフィスのコンセプト作りにいつも関わらせてもらっていますが、オフィスをきれいな箱に、おしゃれに創るより、今のマネーフォワードの価値観や姿勢を、外部からいらっしゃる方にも、中で働く人にも感じて頂けるようなオフィスにしたいというところからスタートしています。

好きなところだけでなく、これからマネーフォワードがどうなっていきたいかを合わせて答えてもらったら、そこにヒントがありました。もっと挑戦し続けていきたい、いつまでもスタートアップ感をもっていたいという声があったのです。

社内のメンバーのなかに、会社の規模が大きくなっていくことで、落ち着いた雰囲気になってしまう危機感がありました。辻自身も常々、まだスタート地点であり成長し続けなければいけないという危機感をもっているので、まだ自分たち自身が挑戦者であり、成長途中というのが伝わるようなオフィスしようということになりました」

「成長中」「挑戦し続ける」というのは、他の企業でもよく聞かれる言葉だが、そのアウトプットは異なる。そこに込めた「マネーフォワードらしさ」は、オフィスにどう表現されているのだろうか。

金井さん「塗っていない壁や積みかけたブロックなど、あえて作りかけ感を出すことで、まだ完成していないのでここからみんなで作っていこうというメッセージを込めています。

私たちのミッションは『お金を前へ。人生をもっと前へ。』です。お金の課題を解決して、使ってくださる方々の人生を前に進めたいというミッションなので、人生に寄り添うサービスなのに無機質なオフィスは違うし、すごくデザインが尖っているオフィスは私たちらしくないと思いました。

そこで、家、ライフとか、ぬくもり、よりそい、温かみを感じるトーンがベースになっています。金融サービスや金融の会社と思われがちですが、ものづくりのサービスの会社、というのを今回は強めに出し、辻が今回はもっと、遊び心を強めに出したいという想いがありました」

コンセプトを体験デザインに落とし込む

カラフルな柱は社員が色塗りを担当している

方向性が決まったあとは、コンセプトの紆余曲折があった。プロジェクトがスタートしたのは2017年の10月ごろだが、2018年の7月上旬に入居したいという希望があるにもかかわらず、未契約の状態。年内でコンペをしてパートナー選定、企画は2月いっぱいで決めてすぐ着工という急ピッチ。新築のビルだと勝手がわからないと、業者に断られることも多かったそうだ。

金井さん「チャレンジしていくということで、最初に『The Site(用地)』というコンセプトをいただいたのですが、それだと工事中のような無機質な感じや、完成するものが決まっていて、設計図もあって作るだけみたいなニュアンスだから、もっとみんなで作っていくワクワク感が欲しいねということになりました。

次に考えたのが、ここから高い山に登っていこうという『BASE CAMP』。みんなで作っていくのと、山を登っていくのはマインドは似ているかもしれないけれども、空間的に落とし込んでいったらアウトドアのようになり、私たちはお金の会社なので、ちょっと違うのではないかと。

最後に出てきたのが『Let’s make it!』。私たちの企業姿勢である、いろいろな会社やユーザーを巻き込んでオープンに世の中を変えていきたいという想いと合致するし、これからやってやろうぜという思いにもフィットする。ポジティブな表現ですし、これが今の私たちには必要なのではないかということで決まりました」

移転プロジェクトは社内外、チームを横断したメンバーで推進した。コンセプトを体験デザインに落とすために、オフィスを作っていくプロセスを社員で共有した。

金井さん「『Let’s make it!』を体感するためにいろいろ施策を行ったのですが、その中のひとつとして執務エリアの柱をみんなで塗りました。前のオフィス移転のときは社員数60名ぐらいだったので、自然とみんなで作った感がありましたが、300名を超えると、用意されたオフィスに入る感覚になってしまうのではないか?と心配だったので、プロジェクトチームで企画しました。

あえてムラのまま残しているのは、塗ったことを思い出せすため。そこで塗った人たちは満足度があって、愛着が湧いていると思うのですが、あとから入社されてくると感じづらい。それをどうしたらいいかなというのが、これからの課題ですね」

新オフィスになって、社内の雰囲気が変わった

ミーティングスペースの奥にある広々としたワークラウンジは、リフレッシュルームとつなげると100名規模のイベント開催が可能

新しいオフィスに移ったことで、以前の課題は大きく改善したという。

金井さん「懇親会を増やすことができました。2拠点になったり、人数が増えたことで、コミュニケーションの生まれなさや一体感が問題でしたが、場所を確保できるようになったので、月に2回、全社懇親会をやっています。

メンバーと役員の距離を近くするために、役員企画で懇親会を盛り上げようとしています。社内にカレー部があり、カレーのケータリングのシェフを呼んで作ったり、料理人を目指していた取締役は料理を作って振る舞ったり。

そうすると参加率が上がりましたね。店を予約する形での懇親会は腰が重い人も多かったのですが、社内の同じフロアならば、たとえ忙しくても少し参加してデスクに戻ることもできますから。

あとリフレッシュルームができたことで、チームランチなどを行うメンバーが増えたと感じます。それもエリアが広くなった効果だったのかなと思います」

柏木さん「みんな楽しそうで、雰囲気が本当によくなりました。引っ越してからみんなニコニコしていますね。机のスペースは変わらないし、むしろ小さくなった人もいますが、気分がいいというか。毎月人が増え続けているのですが、社内の雰囲気は変わりましたね」

金井さん「懇親会には外部の方も呼んでいるのですが、オフィスを見せると、テンションが上ってくださったり。田町駅からのアクセスもいいし、リクルーティングの効果もよくなっています」

早川さん「私は前のオフィスで面接をして、条件面接で初めてこちらに来たのですが、オフィスの雰囲気が明るくなりましたし、オープンなイメージになりました。とてもポジティブに捉えました」

柏木さん「懇親会だけでなく、イベントをいろいろできるようになりました。メディアの方を呼んで会見をしたりもできますし、エンジニアやデザイナーの勉強会に使ってもらって知ってもらうこともできています。採用イベントや、ユーザー会を開くこともあります。以前もそういったスペースはあったのですが、動線が悪く活用できませんでした」

金井さん「来客エリアはお金がかかっていても、執務エリアが……というケースがありますが、できればそうしたくありませんでした。自分たちが働く環境の中に遊び心や、自分たちが大切にされていると感じられるオフィスにしたかったんです。

オフィスは、会社への当事者意識というより、オフィスへの愛着ぐらいでいいと思います。環境に自分は左右されないぜ、どんな環境でも同じアウトプット出せるぜ、というエンジニアがいたのですが、実際移転したら『すごくいい』と言っていました。だから、環境はよければよくて、自分ごとにできるかどうかとはまた違うのかなと思います」

新築の最新のビルに構えるオフィスだからこそ、明るく、温かみのある雰囲気にいい意味でのギャップがある。ポップな色使いでも落ち着きがあり、親しみやすい印象も与える。

金井さん「オフィスを作るときは、デザインをした人がヒーローになりがちですが、使ってくれるみんな、協力してくれるみんな、裏で地味な作業を担ってきたみんながいてこそできるものです。あまり自分にスポットがあたってしまうのはよくないと思っています。

みんなで『Let’s make it!』したという感じだったので、移転して全員がイェイ!という感じになってよかったです」

創業から、短期間での事業のスケールアップ、マザーズ上場、5回のオフィス移転を経験したマネーフォワード。まだまだ増員を続け、オフィスも総務を中心に、アンケートをもとにアップデートを続けているというが、みんなで築いた居心地のいい城をもとに、右肩上がりの成長をさらに加速させていくに違いない。

コンセプトの「Let’s make it!」のポーズで金井さんと

【マネーフォワード オフィスデータ】

所在地 東京都港区芝浦3-1-21 msb Tamachi 田町ステーションタワーS 21F
オフィスフロア平米数 非公開
設立 2012年5月
従業員数 386名(2018年11月30日現在)
事業内容 インターネットサービス開発

 

※本記事は ICCサミット FUKUOKA 2019 公式ページより転載しております。

この記事を書いた人:ICCパートナーズ編集チーム

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