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企業で分かれる4種類のリモートワーク あなたの会社はどのタイプ?

[September 08, 2020] BY Kazumasa Ikoma

コロナ禍での一時的な対策として多くの企業で行われているテレワーク・リモートワーク制度だが、コロナ禍の長期化に伴いニューノーマルへの対応が強く求められる背景から、本格的な制度の準備へと動く企業が増えている。その中でも、各企業が進める取り組みの方向性には大きな違いが見え始めている。そこで今回は、現在の企業に見られるリモートワークの取り組みを4つのタイプに分類し、各タイプのオフィス環境について簡単に触れる。

1. 出社メイン型
2. タスク線引き型
3. 完全自主性
4. フルリモート型

1. 出社メイン型

・テレワークへの前向き度:△
・オフィス出社義務:◯

まず取り上げるのは、テレワーク制度を一応整えていながらも基本的には従業員の出社を義務とする「出社メイン型」だ。コロナ禍ではテレワークを許可しているが、状況が良くなればまた出社を中心とする働き方に戻る可能性が高い企業がここに分類される。コロナ禍でテレワーク導入が余儀なくされた企業のほとんどはこのタイプであることもあり、テレワークへの前向き度も「△」としている。テレワーク導入の小回りが効きやすいベンチャー企業に比べて対応が難しく、導入が遅れていた大企業やテレワーク化の予算が限られている中小企業に多い。

もちろん、オフィス出社を重視する利点はいくつも存在する。1つはオフィスでの協働作業(=コラボレーション)が目に見える形でわかりやすく生まれるところだ。以前、海外のIBMやYahoo、Bank of Americaが一度解禁したテレワークを再び禁止したことで話題を呼んだが、これらの企業は口を揃えてテレワークを経たことでリアルな場で協働することの重要性に改めて気づいたと述べている。このような企業が多くあるというわけではないが、重要なのはテレワークが必ずしもどの企業にも良しとされるものではなく、企業はそれぞれ自社の業界や規模、また成長フェーズに合わせて導入の判断を下すことが大事であるということ。その点で、これらの企業は良い例である。

また他のメリットとして「従業員間の公平性を保ちやすい」というのもある。テレワークは実のところ、1つの企業内でも部署や作業内容によって実施できるところと難しいところが大きく分かれ、下手すると部署間、従業員間の不公平さを生む要因になりかねない。テレワークを部分導入したが、出社が避けられない一部の従業員からのクレームを集めるぐらいなら撤回する、というのも中小企業を中心に多い話だ。公平性が特に強く求められる日本の会社によく見られる傾向である。

一方でデメリットとして注意しておきたいのは、このような企業では今後、人材獲得や流出防止に大きな課題が生まれる可能性がある点だ。コロナ禍で起きた様々な変化は転職市場にも訪れ、「自分の時間が持てるようになったことで『働き方』の優先度高く転職を考える人が増えている」と日経新聞やリクルートキャリアへの取材を行ったDaily Moreで指摘されている。柔軟な働き方が今後の人材獲得戦略の1つになりつつある一方で、出社メイン型の企業は苦戦を強いられるかもしれない。

出社メイン型のオフィスのつくり

出社メイン型の企業は、文字通りオフィスへの依存度が4タイプの中で最も高い。そのため従来のオフィスのように、全従業員分の席数が用意され、個人作業からグループワークまですべての作業を行えるつくりであることが多い。

2. タスク線引き型

・テレワークへの前向き度:◯
・オフィス出社義務:◯

出社メイン型よりも積極的にテレワーク(というよりもハイブリッドワーク)を実践するタイプがタスク線引き型だ。出社する従業員の割合やオフィススペースの縮小に一定の目標を定めて取り組みを進める大企業や、オンラインでも働ける時代に「オフィスに来る意味」を整理し直すベンチャー企業やスタートアップがこのタイプに含まれる。積極的なテレワーク(ハイブリッドワーク)活用施策の1つとして、企業側がオフィスで行うべき作業と自宅でもできる作業をある程度区別していることが多いことからこのように名付けている。

大企業で言えば、東日本大震災の経験をもとに以前からテレワーク体制を整えていたGMOインターネットグループや日本マイクロソフト、またコロナをきっかけに国内グループ従業員約8万人を対象にテレワークへのシフトを踏み切った富士通や、本社主要機能を兵庫県淡路島に移すことを決めたパソナなどが挙げられるだろう。また「オフィスに来る意味」を再考するスタートアップでは、以前紹介したNEW STANDARD株式会社が良い例だ。同社の代表を務める久志尚太郎さんは、今の時代オンラインでも働けることを前提とした上で、それ以外の「オフィスで得られる体験」の1つとして、社員が交代でキッチンスペースでランチを作り「同じ釜の飯を食う」自炊文化に創業時からこだわり続けている。

これらの企業における従業員のオフィス出社は、多かれ少なかれまだ部分的に求められるが、出社メイン型よりは減るという印象だ。

タスク線引き型の強みは、例えば「個人作業は自宅」「リアルな場を必要とするコラボ作業はオフィス」といったように、従業員個人がオフィスとオフィス以外の働くスペースを使い分けながら両方駆使し、作業効率を高められる働き方を実践しやすい点だ。また企業側からすれば、従業員に働く場所の自由や裁量を与えるという点では後述する完全自主性タイプと被るが、一方でオフィスを「組織としてまとまる重要拠点」と認識している点は、出社メイン型の名残が見える部分でもある。つまり、企業として重要な場面で皆が集まれる「オフィス」という空間を残しておくのは「会社の家」という意味で会社と従業員両者に安心感を残すのである。

また「働き方」に積極的に取り組む企業の姿勢は、従業員や外部の人材に効果的なアピールにもなる。オフィスの外でも働ける柔軟性を持ちながら、オフィス空間にもこだわる姿勢は先述した働き方を重視する人材に魅力的に映るポイントになるだろう。

ここで読者の方は気付かれたかと思うが、このタイプの企業は得手して「自由な働き方のジレンマ」を抱えやすい。つまり、企業としては従業員にオフィスに縛られずに働ける自由を与えるためテレワークを含めた様々な制度を用意するも、本心では従業員にできる限りオフィスに集まってもらいたいのである。言い換えるなら、彼らの理想は、従業員にオフィス出社を義務付けるのではなく、従業員に自ら「オフィスが一番働きやすい場所だ」「オフィスに来たい」と思ってもらうことである。だからこそ、タスク線引き型の企業では、従業員のテレワークを促す一方で、オフィスにこれまで以上にお金をかけるという1つの矛盾が生じるのだ。

このタスク線引き型に分類される企業は、自社に最適化した高度な働く環境と、柔軟な働き方制度を兼ね備えるという点で、4つのタイプの中でオフィス業界的に最も先進的な分野である。その点で今後も注目必至な企業が多く集まるだろうと筆者は見ている。

タスク線引き型のオフィスのつくり

タスク線引き型のオフィスは、「オフィスにどのような意義・目的を持たせるか」によってつくりが異なる。例えば、先ほどの例のように「個人作業は自宅」「リアルな場を必要とするコラボ作業はオフィス」とするのであれば、オフィスにはコラボレーション促進の空間が必要で、限られたオフィススペースには会議室やオープンスペースといった打ち合わせやアイデア出しを行いやすい部屋が中心に並ぶことになり、個人の集中ブースの数は限られる。先述のNEW STANDARD株式会社では、皆で自炊ができるように水回りが整ったオフィスビルを探した結果、池尻大橋のオフィスに落ち着いたという経緯がある。

また別の見方では、働き方を重視する従業員に刺さるようなオフィスをつくる、という考え方も可能だ。例えば、従業員が自然とオフィスに集まるオフィスにしたければ「自宅では用意できない環境を会社が整える」という視点で充実したオフィス環境を用意することも1つの手である。従業員が個人では簡単に購入できない人間工学に基づいたオフィス家具を用意したり、集中力を向上させるバイオフィリックデザインが充実した内装をデザインしたりすることで、従業員に「この作業はこの場所で」とタスク線引きの自由を与えつつ、結果的に作業する場所にオフィスが選ばれる機会が増えるようにする、といった戦略を取ることが可能だ。

NEW STANDARD株式会社のキッチンスペース

3. 完全自主性

・テレワークへの前向き度:◎
・オフィス出社義務:×

完全自主性の企業は、働く場所の選択を従業員個人に完全に任せるタイプである。会社側が義務付けるオフィス出社は一切なし。企業側は小さめの賃貸オフィスかコワーキングスペースに入居し、従業員個人やプロジェクトチームが必要な時に集まれるスペースを用意しておく。一部のエンジニアのようなフリーランス的な働き方を得意とする社員が集まる企業や、柔軟な小回りが利ける企業を目指すアーリーステージのスタートアップ(社員数〜50人)に比較的多い。例で言えば、先日取り上げた株式会社ニットがその例だ。

このような企業で色濃く見られるのは、性善説を基本としたマネジメント、そして勤務態度よりも成果物を重視した評価制度である。ベストな成果を出すために従業員は働く場所を自由に選べる一方で、成果物に対する責任もその分問われるため、ある程度自身のマネジメントができるプロ集団的な意味合いが強くなる。後述するフルリモート型と比べ、このタイプでは企業がオフィスを用意してくれているため、「家に子供がいて仕事に集中しづらい」といった悩みを持つペアレントワーカーや「単純に家に仕事を持ち込みたくない」といった人にも優しいのが特徴だ。タスク線引き型よりもさらに企業からの束縛が減る点で、ワーク・ライフ・バランス(インテグレーション)を最も実現しやすいタイプと言えるだろう。家族と時間を一緒に過ごしたり、はたまた世界中を旅しながら仕事をしたりと従業員の生き方が働き方から見れる点も興味深い。

完全自主性のオフィスのつくり

完全自主性のオフィスのつくりは出社メイン型と同じく、従来の基本的なオフィス空間が揃っているという印象が強い。個人デスクがあれば、立って作業できるスツールも用意され、さらには会議室もしっかりとある、といった形だ。オフィスをつくる際に事前に従業員に使い方を聞ければ良いが、とはいえ個人によって使い方があまりにも異なる上に、タスク線引き型のように企業側がオフィスの目的を定義するようなこともないため、結果的にどの作業もカバーできる普遍的なつくりに落ち着くのである。

一方で先の2タイプと異なるのは、オフィスの大きさだ。後述のフルリモート型を除いた3タイプの中では最もオフィス出社率が低い(というよりも読めない)ことが傾向としてあり、必要とするオフィススペースも限られる。株式会社ニットでは、東京にある本社以外の拠点では基本的にコワーキングスペースに入居しており、オフィスの使用率に合わせて契約を変更しやすい形を取っている。

株式会社ニットのオフィス

4. フルリモート型

・テレワークへの前向き度:◎
・オフィス出社義務:×

すべての仕事をオンラインに移行し、一切のオフィススペースを持たずに会社を運営する一部のテック企業やスタートアップに見られるタイプ。ごく少数のメンバーで構成された企業でしか実践できないと思いきや、2017年にサンフランシスコの社員専用ラウンジを閉め、全従業員がフルリモートで働くアメリカのAutomattic社には1000人以上の社員が勤務している。近年では日本でもフルリモートの企業が少しずつ見受けられるようになったが、オフィスを完全に持たない働き方はまだ一部の人や企業にのみ受け入れられている形だ。他の従業員と顔を合わせる空間を持たない一方で、年に1回から四半期に1回の頻度で合宿を行うところが多い。

まとめ

今回取り上げた4つのタイプはあくまで大まかな分類であり、細かく区分することが難しい企業もあるだろう。加えて、現在では自社独自の戦略をもとにワークプレイス・働き方戦略を進める企業が増えていく中で、このタイプ分けは今後見直しが必要になると思われる。業界のリサーチャーとして、どのような新しい取り組みが今後見られるのか、引き続き注視していく。

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この記事を書いた人

Kazumasa Ikomaオフィス業界における最新情報をリサーチ。アメリカ・サンフランシスコでオフィスマネージャーを務めた経験をもとに、西海岸のオフィスデザインや企業文化、働き方について調査を行い、人が中心となるオフィスのあり方を発信していく。

    
    
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