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従業員を守る「非接触型オフィス」。感染リスクを軽減するための対策とは

[February 02, 2021] BY Wataru Ito

高まる“職場クラスター”への危機感

新型コロナウイルスが猛威を振るい続け、職場クラスターの発生も報じられる中、自社での集団感染を危惧する声は少なくない。実際に、日本コンピュータビジョン株式会社が2020年8月、355名のビジネスパーソンを対象に行った調査によると、感染拡大に伴い勤め先の経営に重大な影響が出ると思われる状況として、「職場クラスターの発生」をあげた企業が40.6%に及んだことが報告されている。

従業員の身の安全・事業の継続性を確保する上で、いかにしてオフィスでの感染リスクを軽減するかは、あらゆる企業における喫緊の課題と言える。そして、その重要な対策の一つとされるのが、「接触感染」リスクへの取り組みだ。

前述の調査には職場で行っているクラスター対策を問う項目もあり、「三密を避ける行動促進(54.4%)」に続いて、「ドアノブなど複数人が触れるところを定期的にアルコールで消毒(42.3%)」が上位にあがった。接触感染対策の重要性を認識し、行動に移している様子がうかがえるが、アルコール消毒一つとっても運用方法は各企業で異なり、実効性にバラツキが生じることが推察される。

本記事では、新型コロナウイルスの主な感染経路とされる「飛沫感染」と「接触感染」のうち後者に注目し、職場に潜む感染リスクを概観するとともに、オフィス内でのリスク低減につながる4つの具体策を紹介する。

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オフィスのあらゆる場所に接触感染のリスクあり

厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」では、接触感染を次のように説明している。

感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で周りの物に触れるとウイルスがつきます。他の方がそれを触るとウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触ることにより粘膜から感染することを言います。WHOは、新型コロナウイルスは、プラスチックの表面では最大72時間、ボール紙では最大24時間生存するなどとしています

エレベーターのボタン、ドアのハンドル、照明のスイッチ、共有パソコン、複合機、ロッカー、ミーティング用デスク。ウイルスは、人の手を介してあらゆる物に付着する可能性があり、広範囲にわたって対策を講じる必要がある。また、新型コロナウイルスが人の皮膚に付着した場合、9時間程度は感染力を維持するという研究報告もある。そうした接触感染リスクに対し、どのような対策を行えばいいのだろうか。

そのヒントとなるのが、厚生労働省が公表した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る職場における集団感染事例(別添2-2)」だ。資料では、物品・機器の共用、消毒の未実施などがオフィスにおける集団感染の要因としてあげられている。また、同資料内の「新型コロナウイルス 職場における『4つ』の対策ポイント(別添3)」では、「換気」「密」「休(体調不良時は軽い症状でも休む、休ませる)」に加えて、「共用」も対策のポイントとして列挙されている。

オフィス内での具体的な取り組みについて、さらに掘り下げて見ていこう。

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感染予防

接触感染リスクを軽減するための4つの具体策

オフィス内での接触感染リスクを軽減するために考えたいのは、「物に極力触れない」、「独占利⽤する」、「共⽤物は直接触らない」、「消毒・除菌する」という4つの対策だ。どれか一つではなく、複数の対策を組み合わせて予防効果を高めることが望ましい。

1. 「物に極力触れない」:接触型からタッチレス型ツールへ

コロナ禍におけるニーズの高まりもあり、各メーカーで非接触型ツールの商品化・リニューアルが急ピッチで進められている。最先端のIoT機器からアイデア商品まで、代表的なものを以下に紹介する。

①オフィスビル全体

パナソニック株式会社ライフソリューションズ社は、統合型セキュリティシステム「eX-SG」とセンサーを軸に、オフィスビル全体で接触の機会を減らすソリューションを提供。ハンズフリーな入退出、照明や空調のスイッチレス制御などの機能により、オフィス内での感染リスク低減を目指している。

②エレベーター

フジテック株式会社は、手をかざすだけでエレベーターを操作できる「非接触ボタン」を開発。また、三菱電機株式会社は、スマートフォンの専用アプリでエレベーターの呼び出しや行き先を指定できる「スマートフォンサービス」を提供しており、コロナ禍で問い合わせが増えているという。

アプリでエレベーターを操作できる機能では、株式会社日立製作所も、LINE株式会社との連携で「LINE連携タッチレスエレベーター呼びサービス」を開発している。株式会社日立ビルシステムと保全契約を結び、遠隔監視を行っているエレベーターが対象となり、同サービスは保全契約に含まれる。

③受付システム

株式会社QRinが提供する「QRin for office」は、非接触・タッチレス型のクラウド受付システム。受付に設置されたQRコードを来訪者がスマートフォンで読み込むと、担当者に自動で通知が届く仕組みになっている。

④後付け自動ドア

株式会社フォトシンスの「Akerun入退室管理システム」に新たに追加された「Akerunタッチレスエントリー・ソリューション」は、オフィスの扉を自動ドア化し、非接触で解錠・開閉できる機能。既設の扉に後付けできるため、新規で自動ドアを導入するより費用がかかりにくいという。

⑤発熱者検知・消毒機

シーテック株式会社の「ピッとシュ!」は、手をかざすだけで温度測定・手指消毒を行える2in1のディスペンサー。発熱者を検知した際は、表示色と音声で通知する。2021年1月には、温度測定結果をアプリ上で確認でき、クラウド上での一元管理を可能にするネットワークモデルの提供も開始している。

このほか、紙の資料配布をデータ共有に切り替える、名刺は直接手渡しせず名刺交換アプリを利用するといったペーパーレス化に向けた取り組みも、接触機会の軽減を後押しする。

2. 「独占利⽤する」:共有から専有へ

パソコンや固定電話などは可能な限り一人ひとりに割り当て、独占利⽤とする。コピー機など独占利⽤が難しいものは、グループごとに使⽤する機会をアサインするか、担当者を決めて利⽤者を限定するのもよい方法だ。

3. 「共⽤物は直接触らない」:共用から使い捨てへ

手洗い時に共有の布製タオルではなくペーパータオルを使用する、共有デスクに紙製デスクマットを敷くなど、使い捨てに切り替える方法もある。実際に、株式会社KADOKAWAの新オフィスでは、使い捨ての紙製デスクマットが活用されている。従業員がデスクを共有するフリーアドレスでは、特に有効な対策となるだろう。

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4. 「消毒・除菌する」:触りっぱなしから即消毒・除菌へ

非接触や共用の回避が難しい場合は、手洗い・手指消毒に加え、共用物の消毒・除菌を入念に行うことが大切だ。手洗いの際は、指先を軽く洗って終わらせるのではなく、石鹸などを使って10秒間もみ洗いし、流水で15秒かけてすすぐよう心がける(厚生労働省「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」より)。

消毒

見落としやすいのが、各自が所有するカバンの底⾯だ。床に直置きするなどでウイルスが付着する可能性もあるため、除菌した上で個⼈ロッカーなど指定の位置に収納しておく。

また、物に触れた⼿で目や⿐、⼝を触らないようにすることも、個人で行う対策として重要であり、オフィス内外を問わず常に意識したい。

接触感染対策の実効性を高めるために

入居条件によっては非接触ツールの導入が難しい場合もあり、専有への切り替えにもコストがかかるため、オフィスの特性に合わせて現実的な対策を選ぶ必要がある。また、実効性を担保するためには、導入後の運用ルールの設定・周知も不可欠だ。

なにより、オフィス内での接触感染は、社内の一部が取り組んで防げるものではない。従業員一人ひとりが接触感染予防の重要性を理解し、できることから実行に移すことが、組織全体の感染リスク抑制には欠かせないだろう。

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この記事を書いた人

Wataru Itoフリーランスのコピーライター。中小企業やBtoB企業を中心に、ライティングを通してブランディング、採用広報、販売促進をサポート。建築学科卒、建材メーカー勤務経験あり。

    
    
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