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経営者がこだわるオフィス ー 小売系IT企業FABRIC TOKYOが「オープンなカルチャー作り」を徹底した東京・代々木本社

[January 30, 2020] BY Kazumasa Ikoma

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近年、会社経営におけるオフィスの重要度は高まり、経営者が自らオフィス構築の中核を担うことが増えている。そこで今回は「経営者がこだわるオフィス」に注目し、経営者としての思いや考えをどのようにオフィスで体現したかについて、3社のオフィスをシリーズ化してお伝えする。

今回訪問したのは、ビジネスウェアのカスタムオーダーサービスを提供するFABRIC TOKYO。2014年にサービスをリリースした同社は、リアル店舗で採寸したデータをクラウド上に登録し、その後顧客がネットやスマホで購入したオーダーメイドのスーツやシャツを直接顧客のもとに届けるというD2C (Direct to Consumer) ビジネスを展開している。一見アパレル企業と思われがちだが、エンジニアの積極的採用やデータドリブンでリアル店舗やデジタルマーケティングなどの最適化を行いビジネスを展開していることから、むしろテクノロジー企業としての側面が強い。

1つのスタートアップ内で製造から小売、ITまでカバーするという複雑な組織づくりが求められるD2Cビジネスにおいて、すべての機能を自社で揃える「自前主義」の形を取るFABRIC TOKYOでは他部署間の連携が必須となる。そのため、2019年6月から入居を開始した新オフィスで重視しているのは、個よりもチームとしての力が発揮できる「オープンなカルチャー」の醸成だと同社代表を務める森雄一郎さんは語る。

2016年には組織崩壊を1度経験し、離職率が高い時期もあったというFABRIC TOKYO。しかし、その後の2017年から売上は2期連続で昨年対比200%超、体型サイズや趣味趣向などのパーソナルデータ保有数は10万件以上、そのデータを活用した顧客満足度の向上で年間リピート率は44.5%/年を超えて業界水準の1.5倍を記録するなど、驚くべき急成長を遂げている。その背景で経営を支えるオフィスはどのようなつくりになっているのか?

「オープンで協働できる空間」に対するこだわり

FABRIC TOKYOは、他部署間の連携・協働をオフィスで促していく上で「オープン」というキーワードに強いこだわりを持つ。その理由は先述した「複雑な組織づくり」を含め、次の2つだ。

1. D2Cモデルを手がける企業として

まず1つ目は、先述した通り大きく異なる部署が協働するというD2Cビジネスの特徴をFABRIC TOKYOが持つ背景にある。数多くの機能をすべて自前でカバーする同社では、バリューチェーンが長い分、機能・部署の連携度合いが競争優位性に大きな影響を及ぼす。特に店舗の運営やITサービスの構築、サプライチェーンの管理など、普段は一緒に働くことの少ない人たちの集合体が、最良な顧客体験を作るという1つの目標の下にまとまることは同社の鍵となる部分だ。

それをもとに、同社は会社の文化として「創造性と革新性」「オープンコミニュケーション」「IQよりEQ」の3つを掲げ、社員の集団力を重視している。森さんがオフィスで体現したいと切望していた「オープンさ」は、まさに企業経営やカルチャーとの一貫性を出す上で、必要不可欠な要素だったのである。

2. 先進的IT企業として

またオープンさへのこだわりは、森さんの経営者としての生い立ちも影響している。森さんはもともとスタートアップの聖地であるシリコンバレーに夢を抱いて会社を自ら立ち上げた起業家の1人であり、現地の起業家がカルチャーづくりを重要視する姿勢を自社の経営にも反映している。実際にサンフランシスコ・ベイエリアのビジネスカンファレンスでは、世界的なIT企業のCEOや投資家らが社内のオープンさやカルチャーの重要性について語る場面が多く、その光景はファイナンスや戦略などの具体的な経営論が多い日本のものと大きく異なる。

このカルチャー・ドリブンな組織づくりを重視する考え方は、経営者として自ら会社を成長させていく上でさらに強まったと森さんは語る。FABRIC TOKYOは森さんにとって初めての企業経営の機会。「創業当初は明日食べていけることが大事で、売上などファイナンスが常に頭の中を占めており、組織やカルチャーの重要性はあまり認識していませんでした。」と当時を振り返る。しかしそれから近年の成長ぶりを見返すと、事業が成長した時はいつも「良い社員がいて、チームがうまく機能した時」であり、それから組織とカルチャーの優先度は圧倒的に高くなったと話す。

チームがうまく機能するときは、自主的に行動する社員が多いという。その自主性を刺激するために、FABRIC TOKYOでは積極的に事業計画などの経営情報や課題を公開し、社員が自ら動いて部署をまたいで取り組む機会を設けているようだ。「良い会社をつくり上げる」という当事者意識を代表である森さん以外の社員にも持ってもらうように促すことで、良い組織づくりを行うというビジョンだ。一般的に小売業界は部署ごとのサイロ化が起きやすく、閉鎖的な組織も多いとされる中で、新しい企業のあり方を打ち出そうとする森さんの力強い姿勢が窺える。

このような背景で誕生したFABRIC TOKYOの代々木本社オフィスには、新たなスペースや施策が多く導入された。

フロアが分かれても「人の交流」が起き続ける

JR代々木駅から徒歩2分、南新宿星野ビルの2フロアを貸し切ったオフィスの中身は、5階が執務フロア、6階が会議室など共用スペースの広がるフロアとなっている。オフィスの端から端まで見渡せる壁などの仕切りが一切ない空間はどちらのフロアでも共通して実践されている。

広々とした1フロアに全従業員の作業空間を用意する近年のオフィストレンドとは対照的に2フロアに分けた構図であるが、その課題感をまったく感じさせないほど社員が5階と6階両方を積極的に使用する光景が目に入る。

5階の執務スペースと奥にある社長室

社長室に書かれたMARUEIとその下にあるレンガは、代々木オフィス移転前に入居していた渋谷・丸栄ビルの象徴的な赤い外壁から取っている。企業の歴史を感じるポイントの1つ。

6階のオープンスペース

森さんによると、オフィス構築の過程で森さん含めた経営陣の参加は「オープンさ」「コミュニケーションの促進」など方向性の策定程度で、実際にプロジェクトを進めたのは有志のメンバーだという。卓球テーブルやスタジアムシーティングなどいくつものエンタメ要素を加え、なおかつ電源やホワイトボードを数多く配置して、移動する楽しさと作業しやすさを両立させたことで、「利用率の高いオープンスペース」を実現している。その工夫は、オープンな社風を実現しようと当事者意識を持つ社員の自主性が感じられるポイントだ。

次ページ:異なるフロア間で人を動かすいくつもの仕掛け

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この記事を書いた人

Kazumasa Ikomaオフィス業界における最新情報をリサーチ。アメリカ・サンフランシスコでオフィスマネージャーを務めた経験をもとに、西海岸のオフィスデザインや企業文化、働き方について調査を行い、人が中心となるオフィスのあり方を発信していく。

    
    
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