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経営者がこだわるオフィス ー 小売系IT企業FABRIC TOKYOが「オープンなカルチャー作り」を徹底した東京・代々木本社

[January 30, 2020] BY Kazumasa Ikoma

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全社集会などで使われるスタジアムシーティングのスペースとその裏にあるリラックススペース

それではさらにオープンさと社員の移動を実現するいくつもの細かいポイントを大きく2つに分けて見ていこう。

人を動かす仕掛け①:本社内の社員を5階⇄6階で移動促す

5階の執務スペースは比較的集中作業を行う空間として機能している。しかし、社員間の距離はほどよく近く、多少のコミュニケーションは取りやすい。そして会話量の多い打ち合わせを行う際にすぐ6階の会議室も利用できるようになっている。コミュニケーションの量でフロアを分けることによって、打ち合わせ重視の空間と集中空間が設計側だけでなく社員の視点でもわかりやすく分類されており、結果的に社員が働き方のスタイルに合わせて空間を「選ぶ」という姿勢を自然に取れるつくりになっている。

6階の会議室はどれもガラス壁になっていて見通しがよく、企業のオープンさを表現している。どの会議室も利用率は高いが、森さん曰く最も使われる会議室の1つは「Build」という名の会議室。この部屋は他の会議室と違い、壁がなく、ちょっとした打ち合わせが必要な時にすぐ集まれるスタンディングテーブルが導入されている。実はこの空間も当初他の会議室と同様にガラス壁で覆われる予定だったが、建物の排煙設計の関係上、部屋として独立させることが難しく、オープン空間からすぐ打ち合わせに飛び込める部屋に変更した結果だったという。

さらにMDルームと呼ばれる部屋は、企画開発をしやすいデモスペースや2人や3人でのグループワークがしやすいデスクが用意されている。このようにいくつもの打ち合わせ・会議スタイルに合わせて適応させた数種類の会議室をミックスさせることで、本社で働く他部署の協働を妨げず、支援する空間を構築している。問題を見事に強みに変えたBuildの部屋を含め、6階空間の使いやすさと社員に移動を促す設計から学ぶべきポイントが多い。

MDルーム(左)と会議室Build(右)

また6階に設置されているオフィスおかんも「社員の交流を図るため」と森さんがはっきりその導入目的を話す通り、社員を5階から呼び込む施策の1つだ。ランチやお菓子、コーヒーマシーンなど「飲食」を使って社員をオフィス内の各ポイントに動かす仕組みはシリコンバレーのスタートアップオフィスでよく見られる手法だが、まさにそれを実践している。FABRIC TOKYOのオフィスにはランチ専用のカフェスペースなどはないが、ちょっとした仕掛けでランチ時間もオープンな空間が機能するように工夫を凝らしている。

6階に設置されているオフィスおかん

人を動かす仕掛け②:店舗と本社をつなぐ

6階のオープンスペースは本社で勤務する従業員だけではなく、他の拠点や店舗で勤務する社員も利用できることを目的の1つとして作られている。特に小売企業は店舗と本社で分かれることが多いが、D2C企業にとって2つの連携が取れるよう区別することはなるべく避け、オーバーラップのある空間を作る必要がある。しかし、以前のオフィスでは執務スペースと会議室しかなく、店舗スタッフや拠点メンバーの居場所をしっかりと確保できていなかった課題があり、その解決策が新オフィスで求められた。

バースペースなどを含んだオープンエリア

本社で勤務するメンバー以外の社員もいつでもウェルカムで、彼らに居心地良く過ごしてもらえるように広くスペースを取ったオープンエリアでは、どの空間も彼らの居場所になる。

例えばバースペースは、店舗スタッフがお店を閉めた後に簡単に飲みに来れたり、本社にいる社員と打ち合わせや交流も行ったりしやすい空間として機能する。壁にある『DOT 5(ドット ファイブ)』は渋谷に実在するカフェ&バーで、渋谷オフィス時代に社員たちがよく通っていた場所からいただいたもの。会社の歴史や風土を感じ取れる仕掛けとしてさりげなく存在感を示している。

また長机のあるスペースでは、店舗での作業後本社にいる社員と軽く打ち合わせすることができる。仕事のみならずリラックス目的含め、様々な利用用途を想定して空間が設計されている。

バーエリア

次ページ:ビジネス戦略に合わせたオフィスの使い方で機能性を高める

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この記事を書いた人

Kazumasa Ikomaフロンティアコンサルティングにてリサーチャーを務める。アメリカ・サンフランシスコでオフィスマネージャーを務めた経験をもとに、西海岸のオフィスデザインや企業文化、働き方について調査を行い、人が中心となるオフィスのあり方を発信していく。

    
    
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