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フリーアドレスの弱点を補う「グループアドレス」のメリットと導入事例

[March 30, 2021] BY Wataru Ito

コロナ禍の今、グループアドレスが注目される理由

新型コロナウイルスの影響が長期化し、各社でオフィスレイアウトの見直しが模索されている。テレワークの浸透が追い風となり、固定席を設けない「フリーアドレス」の導入を検討する企業も少なくない。

株式会社ザイマックス不動産総合研究所が2020年6月に行った調査(有効回答数1,795社)によると、フリーアドレスを導入している企業の数は年々増加傾向にあるという。感染リスク低減を目的に出社率を抑制し、その結果生まれたオフィスの空きスペースを柔軟に活用するため、導入した企業もあるだろう。

ただ、「完全フリーアドレス化」はなかなかハードルが高い。なぜなら、職場内におけるコミュニケーションのあり方が根本から変わってしまうからだ。場合によっては、生産性に影響する可能性もあり、感染者が発生した際に濃厚接触者を特定しにくいという懸念点もある。

こうしたジレンマを解決する方法として一部の企業で採用されつつあるのが、「グループアドレス」だ。チームアドレス、デザインアドレスと呼ばれることもある。グループ単位でゾーンを割り当て、所属メンバーはそのゾーン内で自由に席を選べるというスタイルで、完全フリーアドレスと固定席の“いいとこどり”とも言えるだろう。

グループアドレスがチーム内・チーム間のコミュニケーションを促進

完全フリーアドレスには、スペース効率の向上や社内コラボレーションの促進、ペーパーレス化による経費削減など様々な効果が期待される。だが、「チーム間」のコミュニケーションが促進される反面、「チーム内」のコミュニケーションが希薄になるなど、デメリットがあるのも事実だ。

チームメンバー全員が、広いフロアの四方八方に分散している状況を想像してみてほしい。それにより、確かに普段関わりのない他部署のメンバーと接点を持つことはできるだろう。これを起点に新しいアイデアが創出されるなど、固定席にはない偶発性がもたらされるかもしれない。

ただ、チームワークの観点から見ると、必ずしもプラスには働かない。上司にとっては、部下の居場所が把握しにくく、ちょっとした声掛けもままならなくなる。十分に目が行き届かなくなり、マネジメントにも不便が生じる。一方、部下にとっては、相談したいときに上司がそばにおらず、報告・連絡・相談が疎かになりやすい。

こうしてチーム内のコミュニケーションが少なくなることで、クレームの増加や生産性の低下が確認された事例も見られる。

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では、グループアドレスではどうだろうか。チーム内に限られたフリーアドレスとなり、お互いの居場所や状況がわからないといった状況は起こりにくく、固定席のときとほぼ変わらないチーム内コミュニケーションが可能になる。

また、定期的に部署単位で島をローテーションすれば、隣接する部署が都度変化する。それにより、完全フリーアドレスとはまた別の形で、チーム間のコミュニケーションやコラボレーションを生み出すこともできるだろう。

チーム内コミュニケーション

部署ごとのワークスタイルに合わせた運用も可能

グループアドレスの大きなメリットとして、ワークスタイルに合わせて運用できる点があげられる。固定席寄りにするか、フリーアドレス寄りにするか、部署単位でさじ加減をコントロールできるのだ。

例えば、企画・営業部門は社内の打ち合わせや外出が多く、在席時間は比較的短い。ちょっとした雑談をヒントにアイデアが浮かんだり、プロジェクト誕生のきっかけが生まれたりもする。そのため、フリーアドレスに類似した自由度の高い運用がフィットする。

一方、総務や経理などの管理部門では集中力が必要な作業が中心になり、在席時間は長い。雑談に巻き込まれることで生産性が低下する懸念もあり、機密書類を持って席を頻繁に変えるのも望ましくない。こうした特性から、従来の固定席に近い緩やかな運用が求められる。

大企業に見るグループアドレスの導入事例

次に、グループアドレスの導入事例を紹介する。どちらの企業も新たな働き方について検討を重ねた末、本社移転のタイミングで導入に踏み切っている。チーム内コミュニケーションを重視し、かつ部署間のコラボレーションも引き出そうとしている点でも共通している。

1. 三菱地所株式会社

三菱地所は、2018年に本社を移転したタイミングでグループアドレスを導入し、事業役員担当個室を廃止した。部署単位でゾーン分けされており、それぞれの配置は社内アンケートをもとに決定され、トライアルを経て運用が開始されている。同時にペーパーストックレスも図り、紙の資料を移転前より7割以上削減できたという。

2. 三井物産株式会社

2020年5月に本社を大手町へ移転した三井物産は、本社で働く約4,500人を対象にグループアドレスを導入した。移転前の本社での着席率が平均で5割程度であったことも、導入のきっかけとなっている。部署を配置する際には、エネルギー部門とインフラ・プロジェクト部門のようにコラボレーションが期待される部署を意識的に隣接させるなど、協業につながる工夫も取り入れている

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ホテリング機能で、フレキシブルな働き方をサポート

フリーアドレスやグループアドレスの利便性を高める、「ホテリング機能」についても触れておきたい。ホテリングとは、座席を事前予約して利用するシステムのこと。会議室の予約機能は大企業を中心に広く普及しつつあるが、個々の座席を対象にしている点が目新しい。従業員の在席状況を可視化することで、コロナ禍の新たなニーズであるソーシャルディスタンスの確保や、出社率のコントロールが容易になり、トレーサビリティ(追跡可能性)も担保できる。

また、「誰がどこにいるかわからない」というフリーアドレスならではの悩みを解決する手段としても期待が寄せられる。完全フリーアドレス寄りのグループアドレス、例えば数十人単位の大きな括りでのグループアドレスでは特に有用だろう。チームメンバーがその日、リモートワークなのか出社するのか、出社するならどの席に座る予定なのか、ひと目で把握できるようになる。

ホテリング機能については様々なサービスがリリースされているが、その中から以下の3つを紹介する。

1. WorkstyleOS

ACALL株式会社の「WorkstyleOS」は、受付・会議室・入退館などを管理するシステム。2020年11月にホテリング機能が追加され、モバイルアプリやPC、フロアに設置したiPadからの座席の予約・利用が可能になった。

2. Mamoru Biz

株式会社Colorkrewは、2020年10月、ビジネスコンシェルジュツール「Mamoru Biz」に座席予約機能を追加した。誰がどこにいるかを探す手間など、フリーアドレス・グループアドレスの普及による「名もなき仕事」を減らすことを目指している。

3. Suwary(スワリー)

Suwary(スワリー)」は、プラス株式会社がボクシーズ株式会社と共同で開発した簡易座席予約アプリだ。一部の人しかフリーアドレスや共有スペースを利用していない、利用状況がわからないといった意見が開発のきっかけとなったという。アプリでデスクの状況確認や予約ができ、予約時間を過ぎると自動で予約が解除されるため、デスクを効率的に活用できるのもメリットだ。

グループアドレスは「手の届く」ワークスタイルへ

コロナ禍以前、フリーアドレスやグループアドレスは、一部の先進的な企業に限られたワークスタイルというイメージだった。しかし、テレワークの定着によってペーパーレス化やノートPC・スマートフォンの貸与が進み、ハード面の制約は取り払われつつある。ホテリング機能など便利なツールも登場し、多くの企業にとって手の届くワークスタイルへと変わってきている。

前出のザイマックス不動産総合研究所は、2020年8月の調査(有効回答数586社、複数回答)で「コロナ危機収束後の働き方とワークプレイスの方向性」について尋ねている。その結果を見ると、テレワークの推進に関連する取り組みが上位にあがった中で、4番目に多かったのが「オフィスをフレキシブルなレイアウト(フリーアドレス等)に変える」(29.0%)であった。

オフィスレイアウトのトレンドが今後どのような方向に進んだとしても、ワークスペースの柔軟性を高めるフリーアドレスが選択肢から外れることはないだろう。そして、フリーアドレスの中でも、チーム内のコミュニケーションを強化し、部署ごとのワークスタイルに合わせた運用を可能とするグループアドレスを導入するメリットは、やはり大きいと言えるのではないだろうか。

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この記事を書いた人

Wataru Itoフリーランスのコピーライター。中小企業やBtoB企業を中心に、ライティングを通してブランディング、採用広報、販売促進をサポート。建築学科卒、建材メーカー勤務経験あり。

    
    
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