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コロナ禍で注目増す居抜きオフィス 貸主・借主への影響は?

[July 14, 2020] BY Hiroto Matsuno

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業界の変化③:原状回復の”テンプレート”がなくなる分、テナント入退居時の確認手続きが増える

借主側への影響:入居時には貸主側だけでなく退去テナントとのやりとりも必要になる場合がある
貸主側への影響:テナントと揉めるリスクを避けるため、原状回復のレベル感を取り決めておく必要がある

ここで1つ注意すべきは、貸主側の懸念点として先述したように、退去テナントから貸主、そして貸主から次の入居テナントへの居抜き物件の譲渡をどのように行うかだ。具体的に「原状回復を行わないオフィスの状態をどう判断するか」「原状回復を行う場合はどの程度まで行うべきか」が焦点となるが、2020年4月の民法改正で原状回復の契約を厳密に取り決める動きはすでに始まっている。

実際に野田さんも契約時に原状回復の責任の所在を明確にすることで退去時にどこまで原状回復するべきか、借主と貸主の双方で確認しあえるようにしてサポートを進めているという。具体的には、契約書ではあいまいな表現を避け、どこまで元通りにするかを「原状回復基準」や「工事区分表」などの資料や、きれいな状態の室内写真を添付することで対応しているようだ。

また借主側にとっても退去テナントと入居テナントの間で詳細なやりとりが必要になる場合もあるという。長谷さんは企業経営者同士がFacebookなどSNS上でオフィス移転のやりとりを行うケースが増えていることに触れた上で、入居するテナントは事前に退去テナント側にどのような設備を残していくかなどしっかり確認することが重要と語る。

借主が実際に居抜き物件を探す・契約する上で大切な3つの注意点

需要増に伴い、居抜きオフィスの物件紹介サービスやウェブサイトの数もここ数年でかなり増えている一方、実際にそのようなサービスを活用する際にはいくつか注意すべき点があると長谷さんは話す。

居抜きオフィスのマッチングサービスの中には、借主側や仲介業者が貸主の許可を取らずに情報を掲載している場合もあり、退去テナントと入居テナントだけで話を進めた後に話を聞いたビルオーナーが不快に思って居抜きでの貸出を許さないというケースもある。また、新たなテナントが居抜きオフィス物件への入居を決めた大きな理由の1つがその物件で引き継げる内装や設備であったにもかかわらず、退去テナントに契約を反故にされ、受け渡されるはずだった機材がないまま物件の引継ぎだけが進むという問題ケースも稀にだがあるようだ。

このように居抜きオフィスには貸主のみならず借主にもリスクがあることを踏まえた上で、借主側が居抜きオフィスの物件探しや契約の際に確認すべきことは以下の3つだ。

注意点①:紹介サイトの掲載物件の情報についてビルオーナーから許可をもらっているか

気になる居抜きオフィスの物件情報を見つけたときは、その物件情報がビルオーナーの許可を取っているか確認したほうが良い。掲載しているサイトのモラルに依存する部分はあるが、探す側もトラブルに巻き込まれないために高いリテラシーが必要だ。見分けるポイントとしては、賃貸条件と入居時期が曖昧な場合はビルオーナーから許可をもらっていないかコンタクトがしっかり取れていない兆候のため注意が必要だという。

注意点②:退去テナントが何を残して持っていくかをしっかり調整できている物件か

物件情報と併せて退去テナントが何を待って行き、何を残すかという情報がしっかり記載されているかどうかは注意深く見たほうが良い。居抜きオフィスの調整が長引くときは退去テナントが次の移転先に持ち込むものを決められないために契約ができないでいるケースが多いという。居抜きオフィスで揉める原因は、退去テナントがその条件を定められないことにある。

対処法としては、居抜きオフィスに入居したいテナント企業が賃貸借契約を取り決めるタイミングで居抜きの譲渡契約を締結することだという。居抜きの調整が宙に浮いた状態のまま先に賃貸借契約のみを締結してしまうと、足下を見た退去テナントに有利な形で居抜きの譲渡契約が押し切られることがあるからだ。退去テナントに手のひら返しされないためにも、賃貸借契約と居抜きの譲渡契約は同時に結ぶべき。しかし、退去テナントの次のオフィスの契約が定まらないうちは契約が進まないという問題に突き当たるため、居抜きで入居する際は2~3ヶ月の期間を見ておくと良いだろう。

注意点③:居抜きの譲渡物に破損等の問題がないか

見落としがちなのが、居抜きの譲渡物に破損等がないかしっかり確認を取れているかどうかだ。そのためには物件の内覧をしっかり行うことはもちろん、仲介会社の選定も重要になる。野田さんがいるヒトカラメディアでは、譲渡物のリストを作り2~3回、多い時には4回は入居テナント立会いのもと、譲渡物の内容を確認するという。入居後に什器や設備に破損が見つかっても修理や買い替えの負担は新しく入居したテナント側についてしまうので、内覧を怠らないことや信頼できる仲介会社を見つけることが重要だ。

最後に:居抜きオフィスを活用したいと思ったら居抜きオフィスの仲介会社に相談を

居抜きによるオフィス移転の事例は増えてきたとはいえまだまだ一般的ではない。そんな居抜きでオフィス移転を考える際は、居抜きオフィスを専門に扱う仲介会社に相談してほしいという。特に、ビルオーナーが判断しにくいであろう物件を居抜きで出すか原状回復をしたほうが良いかという判断も、率直にアドバイスすると野田さんは言う。

また、この記事で紹介したように借主である退去テナントと入居テナントだけで居抜きの話を進めることは業界的なタブーだったりする。このような時期だからこそ経費削減につながる居抜きオフィスでの移転は魅力的だが注意するべきことは多い。大きな変化を迎えているからこそ、企業の重要な経営戦略であるオフィス運営を慎重に考えることは重要なことなのである。

※今回取材した野田賀一さんが勤める株式会社ヒトカラメディアと長谷麻奈美さんが勤める株式会社フロンティアコンサルティングの居抜きオフィス専門サイトはそれぞれ下記になります。

株式会社ヒトカラメディア運営「スイッチオフィス

株式会社フロンティアコンサルティング運営「つながるオフィス

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この記事を書いた人

Hiroto Matsunoオフィス業界に飛び込んだばかりの20卒の新入社員です。オフィスデザインや働き方において素直に感じたことについて調査を行い、楽しく働いている人たちのあり方を発信していきたいと思います。

    
    
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