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経営者がこだわるオフィス ー 「ABW」「バイオフィリックデザイン」「五感の刺激」「データ分析」で最先端オフィスを構築するOKAN

[February 17, 2020] BY Kazumasa Ikoma

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ABW導入の決断に至った2つの課題

ABWの導入には以前のオフィスで具体的に挙がっていた2つの問題を解決することが背景としてあった、と沢木さんは語る。

1つは、社員が「隣の部署のやっていることがわからない」と感じてしまう組織的な課題。2016年のオフィス移転時には20名程度だった社員数が2020年1月には75人を超えるほど人数が急激に増えたことで、社員同士顔を知っている程度で互いをよく知らないという光景が増えた。その結果社員の間で不安が垣間見えるようになり、議論の中で意見を言い切らないことが増えたと沢木さんは話す。社員の交流機会を促し、互いのことについてより知ってもらえるよう自然に関係性をシャッフルできる環境を求めた結果、ABWにたどり着いたようだ。

もう1つは、社員の健康面だ。腰痛などの身体的な問題の対策やストレスの少ない自由かつ健康的な職場環境の整備には、通常の固定席にプラスしてファミレス席やスタンディングデスクなど必要以上のスペースが必要になる。しかし、ABWにすることで社員個人の固定席は必要とせず、人数以上のスペースを確保することがなくなるため、高いスペース効率を維持することができる。社員・会社両方の要望を叶えやすい形としてABWは解決策になった。

姿勢を変えてリラックスしながら作業できる席も用意

ABWで部署”間”コミュニケーションは向上した

ABWを導入して半年以上が経った企業に聞いてみたいのは「導入効果があったか?」という点。先日公開したABWの記事では、社内コミュニケーションはさらに部署内と部署間の2種類に分けられ、ABWはそのうち部署間コミュニケーションを活性化すると伝えている。

沢木さんに聞いたところ、OKANでも部署間コミュニケーションの向上が見られたという。働く行動に合わせて社員の居場所が変わるため部署”内”のコミュニケーションは幾分大変になったものの、多くの社員がオフィス内を動くようになったことで会社が求める部署”間”のコミュニケーションは活性化されたようだ。「社員数が約50人ほどの企業では部署”内”のコミュニケーションが問題になりやすいが、それ以上人が増えると次は部署”間”のコミュニケーションが課題になる。80人近くいる今の自社のフェーズにABWは合っている」と沢木さんは導入の実感を語る。

社員が増え教育を行う場面を増えているが、そのスペース探しに困るような課題は今のところないと話す沢木さん。入ったばかりの社員と先輩社員は教える環境も一緒に自由に選んで教育を進めているようだ。特にOKANでは、入社したばかりの社員の相談を異なる部署の先輩社員が受ける「先輩さん制度」を導入しているため、ABWとの相性も良いのだ。

五感の刺激

2つ目の特徴である五感もOKANが力を入れたポイント。「建築学会での講演機会があった時に五感に関する情報を学んだことがきっかけになりました。オフィスが人間に影響を与える要素として五感を刺激する環境は重要な投資だと思っています」と沢木さんは語る。事実、神経建築学などの学問分野は近年確立され、建築や内装デザインのあり方が人間の神経や身体反応にどのような影響を与えるかについての研究が進んでいる。その最新情報をもとにした工夫がOKANのオフィスに散りばめられている。

視覚

視覚の分野では、人間の視界に入る緑の割合を示す「緑視率」に着目。先日の記事でも取り上げた、緑視率が10~15%の環境で人のストレスレベルは最も効率的に下がるという研究をもとに、オフィスOKANでは15%の緑視率を維持している。植物がどこにいても目に入るようにオフィスのあらゆるところに置かれており、設置が難しい執務デスク周りやオープンスペースでは天井から吊るして緑視率を確保している。

オフィスにある緑はその植物がもつ意味も考慮しながら1つ1つ丁寧に選定された。エントランス近くにあるドラセナは「幸福の木」という意味を花言葉にもち、ライフスタイルに合うオフィス環境を通じた幸福感を社員に感じてほしいという思いから選ばれている。

植物を置きにくい場所は天井から吊るし、緑視率を確保。吊るされた植物は管理が難しいため、フェイクのものを利用。効率的に緑を取り入れている。

聴覚

聴覚の面では、鳥のさえずりや川のせせらぎなどの自然音が流れるスピーカーを随所に設置。人間の耳では聞き取れない高音域の音も録音したハイレゾ自然音を流しているため、通常の音よりもさらに人間にリラックス効果を与える。より質の高い自然環境を再現することで、バイオフィリックデザインが豊かなに取り入れられたオフィスを実現している。

味覚

ここでは自社サービスのオフィスおかんが登場。栄養素のバランスが整えられた食事がオフィス中央にあるキッチンに備えられているため、社員は味だけでなく健康も楽しむことができる。

嗅覚

嗅覚の部分はまだ検討中と語る沢木さん。室内環境における香りはオフィス業界で近年注目されるようになったまだ新しい分野ではあるため、OKANのオフィスに最適なものを模索している段階にあるようだ。以前紹介したAROMASTICKunkun bodyなどのサービスが誕生している中で、オフィスOKANがどのような製品に注目するのか楽しみだ。

代わりとして現状では空気清浄機を導入し、室内に綺麗な空気が循環するように心がけているという。空気の綺麗さは健康的な室内環境を評価するWELL認証でも審査項目として掲げられるほど世界中でその意識が高まりつつあるが、オフィスOKANではすでに実践されている。

触覚

最後の触覚は、オフィスコンセプトの1つ「おかえり」に紐づいた、OKANオフィスの靴を脱ぐスタイルと関係する。靴を脱ぎ足から刺激を受けるようにすることで脳の活性化や健康につながるとされている。オフィスOKANの玄関は畳だが、エリアによっては絨毯など床面にも異なるものが使われているため、社員やゲストは歩きかながら環境を楽しむことができる。

次ページ:データ収集・分析で「常時改善」を行う運用方法

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この記事を書いた人

Kazumasa Ikomaフロンティアコンサルティングにてリサーチャーを務める。アメリカ・サンフランシスコでオフィスマネージャーを務めた経験をもとに、西海岸のオフィスデザインや企業文化、働き方について調査を行い、人が中心となるオフィスのあり方を発信していく。

    
    
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