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Salesforceの事例に学ぶ、企業文化が社員の満足度に与える影響

[February 19, 2020] BY Masaki Ohara

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企業文化の根底にある”オハナ(家族)”の精神

Salesforceが社員を惹きつけて離さない、オリジナルかつ確固とした企業文化。実はTrailblazerと別に同社を支えるもう1つの要素として”Ohana(オハナ:(ハワイ語で”家族”の意”)と呼ばれるものがにある。ベニオフ氏はSalesforceを立ち上げる以前、休暇でハワイに行き現地の人々と交流した際に経験したオハナの精神に感動したという。そして、会社がオハナの精神を元に様々なステークホルダーと協力し合うことで、より良い世界を作るという利益を超えた大きな目的を実現できると考え、オハナの精神を根幹に据えたSalesforceの企業文化を作り上げた。

そのためSalesforceでは社員はもちろんのこと各関係者のともオハナと呼び、”Ohana of Trailblazers”として血縁関係を超えた家族として助け合い、協力し合うことを大事にしている。本社タワーの61階は”オハナフロアー”と呼ばれ、社員とその知り合いであれば誰でも入れるフロアとなっており、またNPOのイベント等でも利用される。常にたくさんの社員の家族や観光客で賑わう同フロアは一種の観光地にになっているようで、すでにサンフランシスコの象徴の1つとなりつつあるSalesforce Towerをさらに際立たせている。

最上階の61階にある通称”オハナフロアー”

オフィス環境と通ずるようにSalesforceがオハナの精神を元に作り上げたのが『1%の誓い』とも呼ばれる『1-1-1モデル』だ。これは社員の労働時間の1%・会社の製品の1%・売り上げの1%を地域や社会へ貢献するというものだ。実際に同社のサイトによればSalesforceが設立されてから2018年時点で日本円で約2億6千万円を寄付し、350万時間ものボランティア活動を行い、39000もの非営利団体や教育機関にその製品を寄付してきた。このようにしてSalesforceには他者や地域に対して還元・恩返しをする”Giving back”という考えを長年に渡って実践してきた。

1%の労働時間をボランティア活動へ

この社員の労働時間のうち1%を地域に貢献するという仕組みを支えるのが”ボランティア休暇”と呼ばれる制度である。これは社員に与えられるものであり、年間を通して最大で7日分の労働時間に当たる56時間の有給休暇を取得できる。実際にSalesforceで働いている知人に話を伺ったところ、ほとんどの社員は平日の労働時間の少しをこのボランティア休暇に充てて地域でボランティア活動を行うという。

中にはアメリカ国内の離れた地域や海外にて数日間ボランティアを行うために、数日間分のボランティア休暇をまとめて申請する社員もいるようだ。また積極的にボランティア活動に参加し、社内においてトップ100人と認められた場合には、会社から非営利団体などに贈られる100万円の寄付先を選ぶことができるという権利も与えられる。そのためSalesforceでは社員同士でボランティア活動の時間を競い合っているという光景も珍しくない。

Salesforceに入社した新入社員は勤務初日に社内でオリエンテーションを受けたのちに地域のホームレスシェルター・公立学校・病院などにてボランティア活動を行う。これは他の企業での一般的なオリエンテーションとは大きく異なる。この習慣に関しベニオフ氏はThe New York Timesの記事において、「Salesforceの企業文化の中でも大事な部分である」と語っている。

Ohanaの精神を持つことで、開拓者精神を社内だけに向けることなく、外部にも積極的に向けているのである。

フリーミールを社員に提供しない

こうして地域と共にあり、地域に貢献し続けてきたSalesforceだが、同社はサンフランシスコ市内にある著名スタートアップとは異なり、オフィス内で社員に対して無料の昼食を提供せず、企業カフェテリアを持たないことでも有名である。近年はオフィスをただ仕事のためだけではなく生活の一部の空間として扱い、様々なサービスを提供する企業が増えている。その中でも無料で昼食を提供することはは社員にとって大きな魅力の1つとして映り、ここ数年では当然の権利とさえ認識されつつあった。

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しかし、以前の記事「企業カフェテリアが禁止に?巨大テック企業従業員も困惑の事情とは」でも取り上げたように企業がオフィス内にカフェテリアを持つことによって地域の飲食店の売り上げに影響が出てしまうという問題が起きている。これは多くのテック企業を抱えるサンフランシスコでは特に深刻な問題であり、2019年だけでも400件ものレストランが店を閉じなければいけない状況に陥った。もちろんすべての原因が企業カフェテリアの存在にあるという訳ではないが、少なからず影響を与えていることは間違いないだろう。

ところがこの、無料のカフェテリアを持つというアピールポイントはベニオフ氏の考え方には当てはまらない。氏は会社全体の目的意識と会社としてのミッションを大事にしていくことの方が従業員にとって価値があることを信じ、結果として企業カフェテリアを持たない今のSalesforceを形成するに至る。実際に筆者が訪問した折にも、昼食時にはたくさんの社員がオフィスの外へと繰り出していく姿を見かけた。また建物の足元にある広場には数台のフードトラックがきており、そこで昼食を購入しオフィスに戻って食べる人もたくさんいるようだ。

まとめ:企業の文化と価値観に注目する働き手の増加

今回の記事では冒頭でも述べたように、”最も働きがいのある会社”と言われるSalesforceがいかにして社員を惹きつけてきたのかを、その企業文化に焦点を当ててまとめてきた。多くの企業が、高給与を社員に提示したりオフィス設備を充実させたりといった様々な取り組みを行う中で、Salesforceは「文化」「理念」といったものに価値を置き、それを実践し続けることにより同社の魅力を引き上げてきた。

実際にGlassdoorが行った”働く会社の選択に最も影響する要素はなにか”という興味深い調査の結果、給与の大小に関わらず最も影響力が大きかったのが会社の文化や価値観だった。給与の引き上げという選択のみが、社員に長く働いてもらうために必要な要素ではないというこの結果は衝撃的だろう。もちろん給与は重要であるが、給与の変動が職場での幸福感の上昇に繋がる訳ではないという。

Salesforceは企業文化の実践という面で成功した企業の一例だと言っても過言ではないだろう。事実、Salesforce内で行われた社員アンケートによると社員の96%がSalesforceで働いている事を誇りに感じているという。まさにこれはGlassdoorによって行われた調査の結果にも沿っている。またSalesforceは魅力的な企業文化の実践と同時に、地域コミュニティへの還元も行っている。数百件の地元レストランが閉鎖に追い込まれてしまうといったような、企業が地域へ流入することによって起こる問題にも挑戦しており、これからも地域とともに成長していく企業のあり方をSalesforceが見せてくれる事を期待する。

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この記事を書いた人

Masaki Ohara現在サンフランシスコにある大学に在学しています。心理学の観点からオフィス空間が人々の思考や行動にどのような影響を及ぼすのか関心があり、働く人々にとっての最適な空間のあり方について発信していきたいと思います。

    
    
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