コロナ対策で生まれた新型オフィス「6 Feet Office」 社員の感染リスクを減らすための工夫とは
[May 06, 2020] BY Stefanie Saki Kinjo
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④ 6 Feet Workstation(ウイルス感染リスクを減らすためのデスク環境)
動線と合わせて最も重要なのが、社員が一番多くの時間を使うデスク。シックス・フィート・オフィスでは各自のデスクにも社員が安心して働けるような工夫を凝らしている。C&Wでは社員の個人エリアとなる空間で安全性を保つためは以下の取り組みを行っている。
半径2mの円を描く
デスクの周りに半径2mの円を描き、視覚で2mの距離感を認識できるようにすることで、社員はお互いに一定の距離を保つことができる。
できる限り円の中に入らないようにし、またそのまわりを時計回りに移動することで社員同士の不要な密接を防ぐ
デスクパッドを利用
さらに、社員たちは毎朝出勤時に1枚のデスクパッド用紙を受け取り、自分が利用するデスクにその紙を敷いて仕事をする。退勤時にその紙を捨てるのをルーティンとして繰り返すことで常に清潔なデスクを保つ。
使い捨てのデスクパッド用紙を使うことでデスク表面にウイルスを残すリスクを減らす
透明アクリル板、透明パーテーションを利用
オープンなプラン空間にある仕切りのないデスクの間には透明のパーテーションを取り入れることで、飛沫感染を防止。意図的に広々とつくられた空間を視覚的に区切ることなく、他の社員とのコミュニケーションの取りやすさを維持したまま、感染リスクを下げることができる。
モニター裏に付けられた透明アクリル板
⑤ 6 Feet Facility(シックス・フィート・オフィスを全社的に使いこなすためのロールモデル「推進係」の存在)
ルールやガイドラインや社内環境を整えることはもちろんだが、社員自身の意識を高めることも重要である。そこで、マネージメント層ではなく社員の中から先陣切って社内環境を守るリーダー・インフルエンサー的存在として「推進係」を設置することを推奨する。この推進係の役割としては、社内のルールを理解し、安全で最適な職場環境を維持するとともに、より良い社内環境づくりのために他社員にアドバイスをしたり、健康意識の向上を促したりする役割が含まれる。
また安全係のような中間の立場がいることで、経営陣やマネージメント層では気づかなかった現場ならではの問題点や、拾い切れなかった従業員の声が全社に届きやすくなる。
⑥ 6 Feet Certificate(安心して働ける職場環境の証明と活動の継続)
シックス・フィート・オフィスではいかに従業員が安心して職場に出勤し、快適な空間で再び働くことができるかを重要視している。そのためには、先に挙げたいくつもの取り組みを企業側が実践し、社員の健康や安全に配慮したオフィスを構築していること、またその取り組みを続けることを証明することが重要だ。この証明によって従業員は物理的だけではなく精神的にも安全であることや会社から歓迎されていることを実感するのである。
余談ではあるが、おそらくC&Wは今後自社や他社でのプロトタイプ成功例を重ねた上で、この証明を行うための『シックス・フィート・オフィス認定証』を創設・発行するだろう。認定を受ける企業は、オフィスで働く社員や社外からの来訪者も含めた全員が安心安全と感じる空間づくりを行っているというブランディングを行うことができる。また、会社側が社員を配慮しているという取り組みから社員のロイヤルティ向上、さらには働く社員の満足度向上・離職率減少にもつながると考えられる。
従業員用にまとめた6つのルール
上記の6つの鍵は、シックス・フィート・オフィスを構築する上で企業の経営層や総務といったオフィス担当部署など、企業側に必要とされる取り組みをまとめたもの。C&Wでは、実際のユーザーとなる従業員向けに、6つのルールを整理した上で以下のように社内で発信している。このルールをオフィスにいる誰もがすぐに確認できるようにポスターとして壁等に掲示している。
- オフィスでは責任ある行動をすること
- ガイドラインを重視し、標識やマークに従うこと
- 他社員との距離をお互いに約2mあけること
- 社内ではいつどこでも時計回りで歩くこと
- 会議室は各会議室に掲示されている指示書通りにで入退室すること
- デスクパッドを毎日取り替え、清潔なデスクを保つこと
最後に
冒頭でも触れた「アフターコロナ」や「ウィズコロナ」などの言葉が最近使われ、新型コロナウイルスとどのように歩んでいくか、新型コロナウイルスからからどのような社会的変化が起きるかという方向に多くの人のマインドが動き始めている。現時点ではテレワーク導入や在宅勤務制度の導入をいかにうまく利用できるかということに重点が置かれやすいが、それだけではなく第3の選択肢としてオフィス自体を新型コロナ対策を配慮した環境にすることも考慮できるだろう。
C&Wのロカース氏が「シックス・フィート・オフィスは費用対効果の良い対策だ」と語っているが、この取り組みは大胆な働き方改革や大規模なテクノロジー導入施策ではなく、あくまで従業員が働く場所を安心できる環境にするための無理のない施策である。このシックス・フィート・オフィスが今後どのように展開されていくか、注目していきたい。
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この記事を書いた人
Stefanie Saki Kinjo Walt Disney Worldでインターンシップののち大手外資系ホテルに入社。自らの経験から日本とアメリカの働き方の違いに強く関心を持ち、主に海外ニュースを中心に最新のオフィス環境やワークスタイルを発信する。