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テレワーク時の疲れ目対策 ― オフィスを参考にした照明環境のつくり方

[September 22, 2021] BY Wataru Ito

テレワーカーを悩ませる目の疲れ

テレワークの定着とともに、目の疲れに悩む人が増えているという。ライオン株式会社が2020年5月に実施した調査によると、外出を自粛し、パソコンを使ってテレワークを実施している20~60代の男女150人の72.0%が「目の疲れを感じている」と回答している。

また、株式会社ツムラが2020年11月、20〜40代の男女1800人を対象に実施した調査でも、コロナ禍以降に不調を感じた症状の1位は「目の疲れ」(63.7%)であった。さらに同調査では、2021年に予想される不調症状についても尋ねており、その1位も「目の疲れ」(59.8%)となっている。

これらの調査結果から見えてくるのは、多くのテレワーカーが1年ほど前から目の疲れを感じながらも、いまだに有効な対策が打てずにいる状況だ。その背景には、VDT(Visual Display Terminals:パソコンなどの画像表示端末)作業が増加するなか、どんな対策をとればよいかわからないという問題がある。そこで考えたいのが、「照明環境の改善」だ。

オフィスには通常、「働く」という行為に最適化された照明が整備されている。個々のデスクに必要な明るさを確保し、パソコンモニターに光源(照明)が映り込まないようにするなど、様々な工夫が見られる。一方、リビングや寝室などの住空間は、「団らん」や「休息」を想定して照明がプランニングされている。そのままワークスペースに転用すると、暗すぎたり眩しすぎたりして疲れ目の原因になりやすい。

そこで本記事では、オフィスの照明計画をもとに、自宅でのテレワーク作業に適した照明環境について考察する。

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照明に関する基本知識

空間を明るくすることが照明の役割だが、どんな色の光を、どの方向に向けて、どのくらいの明るさで届けるかによって、空間の印象や作業のしやすさは変わってくる。ここでは、まず基礎知識として、ワークスペースに使用される照明を3つの観点から分類し、以下に整理する。

1.電球の種類

・白熱球
一般的に温かみのあるオレンジ色の光を発し、リラックス効果をもたらす。オフィスでは休憩室などのくつろぎ空間に向いている一方、寿命が短く、発熱によるエネルギーロスも大きいためコストがかかる。

・蛍光灯
爽やかな白色が特徴。発熱が少なく低コストだが、点灯してから明るくなるまでに時間を要する。

・LED
長寿命と消費電力の低さが特徴。市場に登場した当初は白色のみだったが、現在は様々な色表現が可能になった。狭かった照射角度も改善されてきており、最近では白熱球や蛍光灯をLEDに交換したときの違和感はほとんどないとされている。

2.光の強さ、広がり方(配光)

・直接照明
発散する光のほぼ全てが作業面を照らす照明のこと。シーリングライトやデスクライトなどが該当する。

・間接照明
発散する光のほぼ全てが作業面を直接照らさない照明のこと。壁面に向けられたスポットライトや、天井に向けられたフロアライトなどが該当する。

・全般拡散照明
直接照明と間接照明の中間、つまり、発散する光の半分ほどが作業面を照らす照明のこと。ほぼ全方向に光を放つ裸電球などが該当する。

3.照明方式

・全体照明
空間全体を照らす照明のこと。天井に埋め込まれたシーリングライトなどが該当する。

・局部照明
主に作業面のみを照らす照明のこと。個々のデスクに置かれたデスクライトなどが該当する。

・タスクアンビエント照明
全体照明と局部照明を組み合わせたもの。全体照明のみで作業面の明るさを確保するより、消費電力量が少ない。省エネルギー効果の高さから、さらなる普及が期待されている。

自宅でのテレワークに最適な照明環境は?

テレワークでは、これまでのオフライン業務がオンラインに置き換えられ、パソコンの作業時間が増加する傾向にある。そこで、VDT作業を前提として、自宅の照明環境を最適化する方法を考えてみたい。

オフィスの設計にあたっては、日本産業規格(JIS)照明基準に則って明るさを設定するのが一般的だ。JIS照明基準では、空間の用途別に推奨照度が定められており、執務空間では750ルクス以上とされている。しかし近年、750ルクスは明るすぎるとの指摘が多く、この数値を下回る照度を設定する事業者も増えている。

そこで本記事では、厚生労働省が公表している「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を参考にする。このガイドラインに示された基準と同等の作業環境をテレワークでも実現することが、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」でも推奨されている。

疲れ目対策に有効とされる照明環境は、次の3つのステップで実現できるだろう。

Step1.「明るさ」の確認

照明計画では、まず明るさの確保が重要となる。厚生労働省のガイドラインでは、机上面の照度が300ルクス以上、ディスプレイ画面上における照度が500ルクス以下と定められている。なお、後者の照度はディスプレイ画面から発する光の明るさではなく、ディスプレイ画面に入射する光の明るさを指している。

照度については、専用の機材がなくても測定可能だ。例えば、明るさ評価アプリ「QUAPIX Lite」(岩崎電気株式会社)を使えば、スマートフォンで撮影した箇所の照度を測定できる。時間帯や場所を変えて試してみてほしい。

Step2.「まぶしさ」の防止

太陽光や電球光が直接視界に入ったり、ディスプレイに映り込んだりすると、不快感や見づらさが生じる。これは「グレア」と呼ばれる現象で、疲れ目の原因の一つとされている。まぶしさを防ぎたいときは、パソコンモニターと光源の位置関係を工夫するといいだろう。

では、光源とディスプレイのどちらも動かせない場合はどうするか。太陽光の場合は、カーテンやブラインドを閉めることで対応できる。照明器具の場合は、壁面を照らす間接照明に換える、ルーバー(格子状のカバー)がついた照明器具に交換する、などの方法が有効だ。また、全般拡散照明を使用することでもまぶしさは軽減できる。

Step3.「コントラスト」の調整

ディスプレイと周辺の明るさのコントラストが大きすぎると、不快になりやすいため注意したい。日中の窓際ではディスプレイを明るく設定し、夕方以降はディスプレイの明るさを少し抑えるなど、環境に合わせて調整するといいだろう。

これからのワークスペース照明に求められること

照明環境の改善は、従業員のウェルビーイングに直結し、仕事へのモチベーションや生産性の向上にも関係する。疲れ目を防ぐ対策は、多くの企業において軽視できない課題と言える。

最後に、これからのワークスペースを考えるうえで参考になる、照明のトレンドについて触れておきたい。

  1. 省エネルギーを重視した照明へ

省エネルギー意識の高まりを背景にLEDが市場を席巻しており、大手メーカーも次々に蛍光灯照明器具の製造を中止している。また、オフィスにおいてはタスクアンビエント照明や人感センサー対応の照明が導入されるなど、省エネルギー化の取り組みが進んでいる。

  1. サーカディアンリズムの研究

サーカディアンリズムとは、約24時間周期の生体リズムのこと。2017年には、生体リズムを生み出す遺伝子とそのメカニズムを発見した米国人3人が、ノーベル生理学・医学賞を受賞して話題となった。夜間に昼光色や昼白色の照明をつけていると、サーカディアンリズムが崩れ、睡眠障害などの異変をもたらすことがわかっている。

そこで登場したのが、時間帯によって色温度が自動的に調整される、サーカディアンリズム対応の照明だ。ウェルビーイングへの意識の高まりを背景に、この分野は今後、さらに発展していくものと思われる。

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照明は疲れ目のみならず、サーカディアンリズムにも関係し、体の不調の原因となり得ることがわかってきた。今後の研究成果によっては、これまでの照明基準やガイドラインが見直されることになるだろう。さらなる研究の進展に期待したい。

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この記事を書いた人

Wataru Itoフリーランスのコピーライター。中小企業やBtoB企業を中心に、ライティングを通してブランディング、採用広報、販売促進をサポート。建築学科卒、建材メーカー勤務経験あり。