このまま入社して良いのか悩む学生へ 不安との向き合い方と持つべきマインドセット
[February 26, 2020] BY Hiroto Matsuno
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昨今の人材売り手市場の影響か、企業による選考や内定出しなど早期の人材囲い込みが進められ、入社先を決めたものの十分に考える時間がなかったと感じる学生が内定後に不安を覚えるケースが増えている。2019年7月にマイナビが実施した調査では、入社予定先を決めた後に「本当にこの会社でいいのか」と不安になったことのある学生は半数を超えており、不安が解消されていない学生は6割以上と報告されている。ちなみに、不安を感じる理由は「この会社で勤まるかどうか」が最多であり、社会人として働くことに対して不安を感じている学生が多いことが分かる。
そこで、今回は若手社会人3名に入社後の不安を解消するために4月の入社までどのような準備を行ったのかインタビューを実施した。興味深かったのは話を聞いた全員がそれぞれ準備を行ったことで「入社後にギャップはなかった」と感じており、前向きな気持ちで社会人生活をスタートしていた。彼らは入社前の不安とどのように向き合い、社会人生活をスタートしたのだろうか。
話しを聞いた人:
Aさん:人材・2年目(女性)
Bさん:商社・1年目(男性)
Cさん:メーカー・2年目(男性)
学生時代から始まる不安に向き合うには?
その1:全員が抱えていた不安、大事なのは「1人で抱え込まないこと」
社会人生活をまだ描くことができない学生が抱える不安は共通して漠然としたものになりがちだ。「学部卒でもやっていけるのか?」(Cさん)、「勤務地がどこになるのか?」(Bさん)などの不安を今の社会人も当時は抱えていた。しかし、「不安と向き合うことで自分を納得させていった」(Aさん)のように、不安と向き合うことで悩みが小さくなったという声は全員から挙がった。
その方法として「SNSで情報を収集することから始めた」とAさんは語る。Aさんは周りの友人たちより早い時期に内定先が決まっており、友人たちに遠慮して内定先に関する不安を相談できなかったという。そこで、SNSで自分と同じような状況の人がいないか情報を収集したところ、思っていた以上に内定先にそのまま就職して良いのか悩む学生は多く、そのことに安堵したようだ。さらにAさんは兄が4人にいるため、入社先には言えない本音ベースな相談を身近な大人たちにすることができたのも大きく働いたようである。
一方、Cさんは入社する会社を決めた後、改めて先輩社員や人事の担当者と面談する時間を作ってもらったという。Cさんの同期は全員大学院卒だったらしく、そのことに不安を感じていたCさんは「どんな能力が必要か?」「何をした方が良いのか?」と尋ねたようだ。同じくBさんも先輩社員との面談の時間は重要だったと振り返る。Bさんの場合、重視していたのは上司・先輩になる社員の人となり。入社で気になるポイントを明確にしていたからこそ、不安となる元に自ら話を聞きに行くことができた。
入社後の不安は誰もが感じること。その不安が「社会人生活がまだよく見えていない」ところからから来るのであれば先輩社員に相談するのが一番であり、「同期の状況が掴めないから」なのであればSNSを使って自分と似たような状況にある同い年がどのような気持ちを抱いているのか広く探ってみるのもいいだろう。入社先には聞きにくいことがあれば、身近な大人として兄妹以外にもサークルやアルバイト先の先輩に相談することもできる。1人で抱え込まないことがポイントだ。
その2:社会人に必要なスキルや能力は入社してから身に付けるものと割り切る
同期が自分以外全員大学院卒という不安を持っていたCさんが先輩社員や人事担当者に入社までに何をすべきか相談したところ、今は学生生活をしっかりと楽しむことが大事、具体的なスキルや能力を身に着けるのは入社してからで大丈夫とのことだった。
実際、入社してからを振り返るとその通りだったとCさんは語る。その背景にあるのは、せっかく学んだ知識やスキルもそれを活用したりアウトプットしたりする場所がないと身に付けにくいからだという。さらに、CさんにはCさんに期待されている役割があり、それを知ることで自信に繋がったと振り返る。不安の完全な解決はできなかったが、入社後に学ぶと割り切ることで徐々に不安は小さくなったようだ。
またBさんも自らの上司・先輩となる方に相談したことで悩みを払拭したほか、顔を覚えてもらったことで入社後も気にかけてもらえるようになったという。「入社してからやってけるのか?」という疑問には「やってみなくてはわからない」と開き直ることも間違っていないのだ。
その3:自らの就活を振り返る
入社予定先の企業から内定承諾書を提出してから自身の就活を改めて振り返ってみた、という学生はそれほど多くないだろう。しかし、振り返ることで入社先への納得感も増していったとBさんは話す。
とはいえ、Bさんも自らの就活についてそのまま振り返ることはしなかった。起点となったのは後輩に就活のアドバイスをしたとき。Bさんは相談に乗ってあげるという立場だったが、自分の考えを後輩に理解してもらえるよう自身の就活を1から説明するために要点をまとめていく中で自分の気持ちを再確認でき、気付けば自然と自身の就活を振り返っていたという。「教える側は3倍の理解が必要」という言葉があるが、その通りだとBさんは言う。
自分が就職する前に後輩の相談に乗るケースは今後増えてくるだろう。2018年に経団連が就活時期におけるルールの廃止を発表。政府が急激なルール変更を懸念しこれまでの就活スケジュールを当面維持することを決めたものの、通年採用への移行は近い将来起こると見られている。学年関係なく就活を行う時代を上手に活用し、後輩のアドバイスを通じて自らの就活を振り返ることで不安を解消することは手段の1つとして十分考えられる。
その4:再度の企業研究は、入社後のイメージギャップを少なくする
一方、Aさんは内定承諾後に生まれた不安を解消するために改めて入社先の企業研究を行った。「入社後の働き方はどんな感じなのか」「会社や業界の将来性はどうか?」など不安に感じたことを紙に書きだし、徹底的に調べたという。自分なりに納得できる答えを出していくことで、入社先への納得感が増していったとAさんは振り返る。
同時に得られた情報をもとに、入社後楽しく働いている自分の姿をイメージしたというAさん。不安な気持ちをポジティブな気持ちに変換したようだ。その甲斐あってか、入社後にギャップはなくモチベーション高く働けたという。就活が落ち着いた後でも入社先企業とその業界について情報を収集しておくと、入社後のイメージ作りに役立つことが窺える。情報のアンテナは高くしておいた方が良さそうだ。
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この記事を書いた人
Hiroto Matsuno オフィス業界に飛び込んだばかりの20卒の新入社員です。オフィスデザインや働き方において素直に感じたことについて調査を行い、楽しく働いている人たちのあり方を発信していきたいと思います。
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