やりたい仕事や理想の働き方は、どうしたら見つかるのだろうか?
記事作成日:[June 11, 2019]
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記事更新日:[June 10, 2019]
BY Hiroto Matsuno
Worker's Resortで公開した就活に関する記事はこの数ヶ月にわたり反響を呼んだ。そのうちの1つである『現役大学生に聞く!就活において会社のオフィスって気にしてる?』という記事では、「良い働き方の実現のためには快適なオフィスが手段・方法の1つかもしれない」という結論に至った。
しかし、学生によってはオフィスを見る以前の段階で、仕事・企業選びの際に自分がどんな仕事や働き方をしたいのかが分からない、という人も数多く存在するのではないだろうか?インターンなどを通じて働くイメージを理解する機会のなかった学生はやりたい仕事や理想の働く環境をどのように探せば良いのだろうか。
ちなみにマイナビが実施している大学生就活意識調査において、今年の学生が企業選択する際のポイントは「自分のやりたいこと(職種)ができる会社」を抜いて「安定している会社」がトップになっている。実際に筆者が今回の調査の1つとして周りにいる学生にやりたい仕事はどのようなものか聞いてみた際も、やりたい仕事があると答えた学生が見据える先には、安定したいという考えが見受けられた。先の読めない時代だからこそ、安定した仕事がやりたい仕事として置き換わってしまっている可能性もある。
そこで今回の記事では、社会人の方に自身の学生時代を振り返って頂いて、どのようにしてやりたい仕事に辿り着けたのか取材を行った。
まずは取材をした3人の事例を紹介する。
Aさん:入社2年目 生産技術・開発
1人目は入社2年目から生産技術のプロセス開発・新プラントの工場立ち上げ、現行の生産ラインの改善など、幅広い仕事を行っている男性。若手ながら先輩社員から意見を求められたり、現場との信頼関係を築いたり、意欲的に仕事に取り組んでいる。
しかし、実力以上の業務を任されている重圧や、慣れない業務の連続で疲労が溜まるという。まだまだ実力不足を感じているが、自分や身近の人たちが置かれている環境をより良くしたいという想いで頑張っている、とAさんは語る。
Aさんがこの想いを抱き始めたのは高校時代の部活動での経験からだという。Aさんはチーム内にあった不満や課題を解決するためにチームメイトや監督に自分なりの考えを提案した内容が受け入れられず、悔しい思いをしたという。しかし、そのときの行動は間違っていなかったとAさんは振り返る。さらにそれは、現在のモチベーションの動機にもなっているという。
また、そのような想いを抱えながら進学した大学では、所属していたサークルやバイトの仲間たちの面倒を良く見ていたというAさん。友人からの相談を受けることが多かったAさんは、身近な人が抱える問題を一緒に考えることにやりがいを感じるようになったという。
そんなAさんだが、就活で自分の想いを言語化することに苦労したという。そこで、自己分析を繰り返す中で「自身の経験を活かして社会に与えられる影響は何だろうか?」と考え、現在の答えに辿り着いた。そしてAさんは、職場の人たちが楽しくお互いに高め合えるような環境を作ることや業務の効率化を図る現在の仕事を選んだ。
Aさんは、自身が社会に与えられる影響について印象的な出来事を起点として考えることで、自然とやりたい仕事に出会うことができると自身の経験から教えてくれた。
Bさん:入社1年目 営業
2人目は化学系の大学院に進学してから、商社の営業マンとして働く男性。大学院へ進学した学生はそのまま専門分野を極めるというイメージが根強くあるが、Bさんはそうではないキャリアを築いており、そのことに迷いはないという。
大学時代から「なんとなくガラスに魅力を感じていた」と語るBさんは、その分野の勉強ができる研究室を選んだ。幸運なことにその分野に適性があったというBさんは、さらなる研究に取り組むために大学院へ進学することを決めた。しかし、大学院に進学してから自身の研究職に対する適性に疑問を感じ始めたというBさん。それは、研究することより後輩指導や学会などで自身の考えを伝えることにやりがいを感じていたからだという。
そんなBさんは、大学2年生の時に参加した海外ボランティアの経験から、海外の文化に触れることが好きになっていたという。大学院に進学してからも一人で海外に行ったりもしていた。その経験から発展途上国の現状に問題意識を抱くようになり、海外の問題も解決できるような仕事に興味を持ち始めたという。
そんなBさんは自身の就活を、好きだという理由や問題意識だけで仕事や企業を選ぶことはできなかったと振り返る。それは、好きなことや問題意識を起点に仕事を考えても、働くイメージが湧かなかったからだという。そこで考えたのが、自分にできることは何か?ということだった。Bさんは専門分野の知識と、自身の考えを人に伝えてきた経験を活かそうと考えた。そこで研究内容にもあった化学製品を扱いつつ、海外拠点を有している今の会社で、営業として働く道を選んだ。
自分が好きなこととできることをしっかり整理しながら就活に取り組んだというBさん。そんなBさんは、好きなことが人生の中で必ずあったはずだから、それを整理して社会でどう当てはまるか考えればやりたいことも見つけられると教えてくれた。
Cさん:入社1年目 研究開発
3人目は大学受験に失敗したものの、憧れであった研究職に勤めることができたという男性。高校の化学の先生に影響を受け、研究職を志していたCさんは希望通りの大学に進学できなかったことから、無気力に学生生活を過ごしてしまったという。しかし、学年が上がるタイミングで渡される成績表を見て危機感を抱いたとCさんは語る。
そんなCさんはまず、学年の成績優秀者になるために授業態度から改めたという。さらに、自身の武器になるものを身に着けたいと思ったCさんは、自身の通う大学で何を学べるのか調べ直した。受験生の時にはわからなかったが、入学後に初めて知ったことが多くあったという。そんな中である教授の講議に魅力を感じ、その人のもとで学びたいと思い、その教授がいる研究室に進んだ。
希望通りの研究室に配属されたCさんは、十分な設備や指導してくれる多くの先輩たちの存在があり、最高の研究環境だったと自身の研究生活を振り返る。一度は諦めかけた研究職に手が届く位置に辿り着けたCさんは、研究職への熱意を再び燃やしたという。
そんなCさんが大切にしていたのは、信頼される人物になるということだった。研究職に就くためには自身の研究成果を出すことはもちろんだが、一緒に研究する人たちに信頼されることも重要であると考えたCさん。教えてもらう立場だったCさんは、積極的に雑用や共同研究を行う企業との連絡係を引き受けたという。その結果、共同研究を行っていた企業から内定を頂けたという。
最終的には自分が開発した商品が使われている様子を見たいというCさん。自分の興味がある分野を突き詰めていくことで開けてくる道があることを教えてくれた。また、自信を失ってしまったとしても、腐らずにできることから積み重ねてほしいというメッセージを感じた。
3人の就活の事例から考察できること
今回の取材を通して現在モチベーション高く仕事に取り組めている人がどのように就活に取り組んでいたか聞くことができた。回答者はそれぞれ自身がやりたいことについて真剣に考えていることがわかる。
冒頭でマイナビの学生意識調査について「先の読めない時代に、安定した仕事がやりたい仕事として置き換わってしまっているのでは」という自論を述べた。その上で、そのような時代だからこそ、就活を通じてやりたい仕事や理想の働き方を今一度考えることは価値あることではないだろうか、と考える。今回の取材から、以下の3つのポイントに絞ってやりたい仕事の見つけ方について考察したい。
- 自分の好きなこととできることは何か
- 人生において仕事をどのように位置付けるか
- 具体的にやりたい仕事を見つけるためにできる実践方法
自分の好きなこととできることは何か
やりたい仕事を考えるとき、好きなことを仕事にすることについて一度は考えるのではないだろうか。マイナビでは2014年に会員の男女約500名を対象にして、現在、好きなことを仕事にできている人の割合を調査している。そこでは、約4割の人が好きなことを仕事にしているという。その記事の内容をまとめると以下のことが見えてくる。
まず、子供のころの夢を叶えた人や娯楽の延長のように働く人たちは好きな仕事ができていると感じているようだ。これはある意味理想的な状態だと思われるが、簡単にできることではないだろう。そこで注目したいのは、仕事をしているうちに好きになったという人たちだ。彼らは自分にできることが増えた結果、今の仕事を好きになれたらしい。
逆に、今の仕事が好きな仕事ではないという人たちの多くは仕事以外の趣味の時間や家族と過ごす時間などを優先したいというように、仕事は仕事と割り切った考え方をしているようだ。また、好きなことを基準に仕事を決めたが、仕事の忙しさや求められるノルマのきつさから嫌になってしまった人もいるようだ
これらのことを踏まえた上で仕事に夢や生きがいを求めたいと思ったとき、どのように考えれば良いだろうか。その答えの一つに、できることからやりたい仕事を考える方法があるのではないかと今回の取材を通して筆者は感じた。
例えば今回取材したBさんは、できることを活かして好きなことに関わっている。海外の文化に触れるのが好きだというBさんは、その専門知識と研究生活で身に着けた人に自分の考えを伝えるというスキルを使って、化学製品を扱い海外拠点を有する商社で営業マンとしてやりがいを感じている。
また、筆者が就活を通じてお話を聞いたある経営者の方は、目の前の仕事にがむしゃらに取り組んだ結果できることが増え、その仕事が好きになったという。
仕事に夢や生きがいを求めたとき、仕事に対する適性や耐性がないということは不幸な結果を招く可能性が高いだろう。さらに好きなことを仕事にした場合、そのショックはなおさら大きいと感じる。自分のできることを把握しつつ、好きなことや興味のある分野の仕事を調べていくことで、やりたい仕事を見つけることができるかもしれない。
人生において仕事をどのように位置付けるか
やりたい仕事や理想の働き方を考えるうえで仕事を人生の中でどのように位置付けるか、という線引きは非常に曖昧で、人によって大きく異なってくるだろう。まだ就業体験のない学生にとって、人生における仕事の位置付けを行うのは困難なことかもしれない。
そこで、Aさんのように自分が社会にどのような影響を与えたいのか考えてみるのはどうだろうか。デロイト社が毎年実施しているミレニアル世代年次調査では、ミレニアル世代は、企業は環境を保護し、社会をよりよくし、自社の経営陣が現在行っている以上の革新を起こさなければならないと考えている、という報告が上がっている。これは高度経済成長を経験した世代が企業に対し、嫌な仕事でも我慢すれば経済的に豊かになれると考えていることとは大きく異なる。
若い世代で価値観の変化が生じてきている現代では、職業に憧れを抱くというのはイメージしにくくなっているのかもしれない。ならば、自分が社会に与えたい影響から、やりたい仕事や働き方を選択する方がイメージしやすい可能性がある。
また、先日の「副業大国ベトナムから学ぶ、日本での理想的な副業とは」記事では、日本で新しい働き方を志向する人たちを中心に、ワーク・ライフ・バランスが今新しくワーク・ライフ・インテグレーションやワーク・イン・ライフ(Work In Life:仕事は人生の一部)などの考えに発展してきており、「働くということが辛く我慢をすることであり、それをすることが生活を成り立たせる術である」という文脈が時代の変化と共に陳腐化しつつある、という考察がされている。
関連記事:【遊ぶように働く】仕事と私生活を連動させるワーク・ライフ・インテグレーションとは
このことから、仕事は生活するための手段ではなく自分の価値観に基づいた目的・目標を達成するための手段とすると、やりたい仕事も見つかるかもしれない。
具体的にやりたい仕事を見つけるためにできる実践方法
新卒採用が活発な日本における就活の面接ではなぜ?なぜ?なぜ?と深堀されることが良くある。就業経験のない学生がやりたい仕事は○○です!と宣言すればなぜそう思ったのかを問うのは当然の流れでもある。そういった問いに対して自信を持って答えるには、しっかりと自己理解をしていなければならない。
また、取材を通して自己理解を進めることはやりたい仕事を見つけるためにも必要なことであ
ると、筆者は感じている。やりたい仕事を見つけることにおいて自分の好きなこととできることを整理しておくのはとても有効な手段であることは先に述べた。そこで、自分の好きなことの分析方法とできることの分析方法の一例を紹介したい。
まずは自分の好きなことを分析することができる「モチベーション曲線」という方法だ。人生の中でモチベーションが高い時は自分が好きなことに取り組めている可能性が高い。そこで、生まれてから今までの人生を振り返り、どんな時にモチベーションが上がり、下がったかを考えることで自分の好きなことを見つけてみてはどうだろうか。
次に自分ができることを分析する方法だが、一人で考えるのに行き詰まったとき、大手ナビサイトなどにもある性格診断や適職診断などをヒントにする方もいると思う。そこで、ここでは有料ではあるが「ストレングスファインダー」という診断ツールを紹介する。これは人間の生まれ持った才能を定義し、上位5位までの結果を示してくれる。診断結果を基にした自己分析のセミナーなども開催されているため、活用してみるのも良いかもしれない。
さらに最近では、企業が実施するインターンシップの中にも自己分析をワークとして取り入れているところもある。自己分析に煮詰まってしまったとき、経験豊富な社会人の方からアドバイスがあると大きな手助けとなるだろう。
また、自己分析が進みやりたい仕事がイメージでき始めたら是非オフィスを見て頂きたい。近年、企業はオフィスのデザインに力を入れており、そこに会社のビジョンやバリューを投影している。色々な企業にある価値観に触れることで、自分の考えをより洗練することができるだろう。過去の記事には、就活生がオフィス見学する際に見るべきポイントをまとめたものもあるので、参考にして頂きたい。
関連記事:就活生が気になる〇〇はオフィスのココを見ればわかる
最後に
今回入社5年目までの社会人に定性的なインタビューを行ったわけだが、少なくとも今回の取材ではモチベーション高く働けている社会人は自身のやりたいことを深く追及していることが分かった。先の読めない時代だからこそ学生のうちから仕事へと向き合う姿勢を身に着けることが重要だと取材を通して実感した。この記事がやりたい仕事や理想の働き方を見つけるための一助になればと思う。
この記事の執筆者
Hiroto Matsuno オフィス業界に飛び込んだばかりの20卒の新入社員です。オフィスデザインや働き方において素直に感じたことについて調査を行い、楽しく働いている人たちのあり方を発信していきたいと思います。