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若手社員が入社後感じた「こんなはずでは…」な働き方

[April 16, 2019] BY Yuna Park

今年もリクルートスーツの学生を多く見かける季節となった。ここ数年の会社説明会などでは事業内容以外にほぼ必ず「働き方」に関する内容が盛り込まれると聞くが、会社側が発信する言葉をそのまま真に受けてよいのか不安に思う学生も多いのではないだろうか。

そこで今回の記事では就活シーズン特別企画として、大手企業に新卒入社後5年目までの若手女性社員3名と男性社員3名に「入社前に思っていたのと違った」ことを取材した。興味深かったのは話を聞いた全員が「今の会社で長く働くことは難しい」と感じていたことで、実際6名中2名は転職先も決まっていた。彼らが感じたギャップとは一体何だったのだろうか。

話を聞いた人:

Aさん:通信・5年目(女性)
Bさん:コンサルティング・1年目(男性)
Cさん:広告制作・4年目(女性)
Dさん:電機メーカー・3年目(男性)
Eさん:コンテンツサービス・4年目(女性)
Fさん:輸送機器メーカー・4年目(男性)

全員が「平日にプライベートなし」と回答

まず労働時間については今回話を聞いた6名中5名が不満を持っていた。「平日の帰宅時間は早くて22時」(Bさん)、「1年目は毎日21時~22時に教育係の先輩とミーティングがあった」(Eさん)など、日常的に帰宅時間は皆遅い。どの会社も残業削減には取り組んでおり、そのための制度やルール自体は存在しているようだが、今回話を聞いた若手社員からは「業務量が制度に追いついていない」という声が複数挙がった。

残業時間を過少申告

たとえばBさんの勤めるコンサルティング会社では、社員は残業時間を三六協定の範囲内で収まるよう過少申告をしており、人事部もそれを黙認しているという。「正直に申告することもできるとは思うが、それをやってしまうと社内から『あいつはめんどくさい』という目で見られて仕事がしづらくなるのでやらない」。

もともと説明会では「労働時間にメリハリがある」という説明を受けており、実際に仕事をしながらトライアスロンに挑戦する社員の事例が紹介された。しかし実際に入ってみると「ほぼ常に忙しい」状態で、「この状況でトライアスロンができるのは尋常じゃないケース」だとBさんは苦笑する。

若手はフレックス勤務禁止

一方、電機メーカーに勤めるDさんは、「勤務時間はフレックスと聞いていたが、いざ入ると『若手は対象外』と上司に言われ、毎日決まった時間に会社に行かなければならなかった」と話す。制度があり、業務量がそれに合っていたとしても、現場がその制度を理解していなければ機能しない例だ。

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有休・福利厚生はあっても活用が難しい

有休消化にも暗黙のルール

コンテンツサービス会社に勤めるEさんは新卒で営業部署に配属された。その部署では土日にイベントを実施することが多く、有休よりも振替休日の消化が優先だったという。有休は年間40日以上溜まると自動的に消滅していくため、手持ちの有休は使わないまま消えていくという状態だったようだ。

現在は企画部署へと異動になり、土日出勤もなくなったことで有休が使いやすくなったかと思いきや、今度は「同じ月に2回申請するのはNG」「業務の状態に関係なく同じ部署の人と同じ日には休まない」という暗黙のルールがあり「実質自由に取れるというわけではない」と話す。また、福利厚生については多忙ゆえに制度を確認する余裕がなく、あまり活用できていないようだ。

休日名目で実際は勤務

Bさんが勤めるコンサルティング会社では、社員の有休消化率が評価に組み込まれている。一見会社が積極的に有休消化促進をしているように見えるが、一旦プロジェクトが始まると休みを取ることはほぼ不可能であるため、まったく現実的ではない制度だと彼は指摘する。年度末に消化しきれない有休が溜まってくると、有休申請だけ行って普通に仕事をする社員はざらにいるそうだ。

また、当然ながら「土日は休み」と聞いていたが、実際のプロジェクトでは土日も工数にカウントされていることがあり、金曜夜に上司のチェックを受けて月曜朝に修正した資料を提出することもある。そのため「土日も常にスケジュール管理が欠かせない」という。

次々削減される福利厚生

通信企業に勤めるAさんが今の会社を選んだ決め手は「安定性」と「休みの取りやすさ」、そして「福利厚生が充実していること」だった。最初に配属された営業部署では自分の裁量で動くことができたため休みは取りやすかったが、今の部署では常に突発的な案件が上から降ってくるため休みが取りづらくなってしまったという。さらに食費補助や家賃補助に使えるポイント、また資格取得に応じて給付される祝い金など、実際に活用していた福利厚生がどんどん削減されており「予想と違った」と話す。

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入ってからのギャップが大きい社風

欧米資本でも業務は日本式

社内の雰囲気は入るまでなかなかわからないものだ。Fさんが勤める輸送機器メーカーは欧米の資本を受け入れていることもあり、コーポレートブランドとして「グローバル」や「ダイバーシティ」を全面に押し出している。しかしFさんによると「現場はまさに日本のメーカー」だという。

たとえば欧米式の仕事のやり方だと「何をどこまでやるのか」を明確に定義してから仕事を始めることが多い。しかしこの会社では日本式に「何でも受ける」のが当たり前で、そのあとは抱え込んで力業で乗り切っていく、という仕事の進め方をするという。グローバルなのは一部だけであって、あとは気合と根性と忖度が業務のベースにあるようだ。

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業務はクリエイティブでも社風は体育会

広告制作会社に勤めるCさんも、「広告ということでクリエイティブで自由な雰囲気を期待していたが、実際は下請けで『やることが下りてくる』という感じで、上下関係も厳しかった」という。また、予想していたよりも若い社員が少なかったとも言い、「面接時に業務内容のことだけでなく、社内の雰囲気や社員の様子をもっと聞いておけばよかった」と話す。

序列意識が強く保守的な社風

Aさんの勤める会社は「新しいものを受け入れづらい雰囲気がある」という。その例として話してくれたのがフリーアドレス制の失敗だ。もともとAさんの会社ではどの部署でも役職順に座る席が決まっていたうえ、役職者の椅子は一般社員よりも高級であり、日頃から序列を意識する雰囲気だった。

そこにフリーアドレス制が試験的に導入されたのだが、社員はその序列意識を強く持っていたためもともと役職者が座っていた席を使うことはせず、結局固定席を使用するようになったという。「次はもう少しフラットで自由な社風で働いてみたい」と彼女は言っていた。

会社の不祥事による想定外の影響も

今回話を聞いた6名のうち、4名が勤める会社では誰もが知る不祥事がこの10年以内に起こっている。話を聞くとそれらの不祥事が働き方に与える影響も大きいようだ。

人員不足でいつまでも下っ端

Dさんが勤める電機メーカーでは数年前に大きな不祥事が起こった。彼が入社したのはその後だ。迷いはあったが、配属予定の部署では希望の仕事ができるという期待があったため、入社を決断したという。

しかし実際入ってみたら、不祥事の影響で人が減ったため業務量が予想以上に多く、深夜帰宅も少なくなかった。その場合はタクシーで帰宅するのだが、不祥事で会社の業績が悪いことを知っていたためにタクシー代を請求しづらく、結局自腹で払うことが多かったという。

さらに入社後数年経ってもチームに新人は配属されず、週報や議事録作成など本来新人が担うべき仕事を2年目・3年目も手放すことができなかったという。彼は結局他の会社への転職を決めた。

不祥事が人事に影響

Eさんはインターンを経て現在のコンテンツサービス会社に入社したのだが、内定が決まったあとに不祥事が起こった。もともと企画の仕事を希望しており、インターンからの採用であったためその希望は通るはずだったのだが、不祥事で人事の体制が変わってしまい、まったく希望していなかった営業部署に配属された。

ちなみに配属されたのは「営業企画」という名前だったため、実際に働き出すまでは企画職かと期待していたのだが、蓋を開けてみたら外回りの営業職だったという。自分の適性と職種が明らかに合っていなかったため、成績は奮わなかったうえに労働時間は長く「かなりきつかった」そうだ。

その後彼女は2年で今の部署を離れた。2年目の若手が異動希望に手を挙げるのは異例のことだったが「他に方法がなかった」と彼女は振り返る。

現場にワーキングマザーの居場所なし

ワーママに営業は無理?

「女性活用」と叫ばれて久しいが、第一線の現場ではまだまだ男性中心のケースもあるようだ。Eさんが勤めるコンテンツサービス会社は女性が働きやすい会社として有名で、社員にはワーキングマザーも多い。しかし彼女が最初に配属された営業部署では現場にワーキングマザーはいなかった。営業の仕事は「子育てで時間が残業が制限される社員には無理」だと考えられていたようだ。

多くの場合、子供を持ったあとに働き方を大きく変えるのは女性だ。結果的にワーキングマザーは営業部署に存在せず、彼女たちが育休後復帰しても人事など管理系部署に配属されていたという。

Eさん自身、「あの働き方では育児とは両立できないのもわかる」と言うが、子育て中の女性営業が活躍している会社も存在することを考えると、そもそもこの会社での営業業務が「育児をしない」基準で組み立ててられていることが窺える。

突発案件ばかりの部署

通信会社のAさんも「子育てしながら今の部署で働くのは難しい」と言う。もともと就職の際に「安定性」「休み」「福利厚生」を重視していたのは、子育てしながら働くことを考えてのこと。支店で営業をしていた時代は残業も少なく自分で時間をコントロールしやすかったが、今の部署では難しい。かといって自分から異動希望を出す制度はそもそもないという。彼女も転職活動を始めている。

関連記事:リモートワークで母親たちが働ける社会に – スタートアップ企業PowerToFlyの取り組み

終わりに

今回話を聞いた6名は、業務内容については多かれ少なかれ面白さを感じていたようだ。一方で冒頭でもお伝えしたように、全員が現在の働き方について「まったくサステナブルでない」と口を揃えていた。Eさんは「マネージャーになってもますます大変そうなだけ」だと言うし、Dさんは給料よりもワークライフバランスを優先して転職先を選んだ。唯一「入社時から仕事中心の生活を送りたかった」と話してくれていたCさんでさえ転職先を決め、「若いうちしか無理な仕事だった」だと振り返る。

若いうちは仕事の要領も悪く、長時間労働になりがちだ。それを厭わずがむしゃらに働くことが大事な時期もある。実際彼らの多くは与えられた環境や業務内容で結果を出そうと必死に努力してきた。しかしそうして一人前にしたところで会社はその人材を失いゆくのが今の日本の新卒就職事情のようだ。

就活シーズン特別企画として、次回は志望企業が本当に自分にあった働き方をしているかどうかを知るために会社訪問時に見るべきポイントをお伝えする。社風や働き方、事業内容はオフィスを見ればわかるのだ。今就活中の人はもちろん、これから就活予定の人も数年後「こんなはずでは…」と思わないためにぜひ参考にしてほしい。

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この記事を書いた人

Yuna Park国内企業で編集・企画、サンフランシスコのUXデザイン会社にて社内外のコンテンツマーケティングの統括責任者を務めたのち独立し、現在はライター、エディター、マーケティングコンサルタントとして活動中。専門分野は働き方、ローカライゼーション、経営。

    
    
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