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アフターコロナで本格化する「オフィス × テレワーク」 5年のノウハウを蓄積する株式会社ニットの事例

[June 09, 2020] BY Kazumasa Ikoma

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「サボる」を前提としない組織に必要な社員の自主性

新型コロナウイルスの影響によるテレワークの導入で、多くの人が働き方を自由に選べることに少しずつ興味を持ち始める一方で、会社側にとって無視できないのは社員の生産性だ。

11名の社員を管理しつつHELP YOUにいる400人のテレワーカーを見てきた秋沢さん曰く、テレワークのある環境下で生産性やパフォーマンスを左右するのは、オンライン上で仕事ができる環境の整備や社員のスキルよりも前に、彼らが自律的・主体的に仕事していけるかという意識の部分だという。その自主性を軸に仕事に対する当事者意識や自由な働き方に対する責任を社員に持ってもらうというマネジメントスタイルを会社として取っているようだ。

この考え方は日本ではまだ多く見られないかもしれない。日本の働く環境はときに「監視社会」と揶揄されるほど、社員がサボっていないかを会社や社員同士が見張る傾向が残る。しかし、実際にオフィスにいてもパソコンの画面を覗いて社員が何をしているか常に見れるわけでもなく、在宅勤務でもそれは同じ。監視ログを入れて厳密に測ったとしても社員のパフォーマンスが上がるわけではない。性悪説に基づいた管理では組織として発揮するパフォーマンスのボトムラインを一定レベルに維持することはできるかもしれないが、向上させることは難しい。

それに対し、ニットでは「何に対して成果を求めるか」という目標設定において社員個人と合意を取るプロセスを取り、「納得したからには達成に向けて動く」という性善説に基づいたマネジメントを行っている。テレワーク実施を決めた時点で「サボらず真面目に取り組んでいる」「夜遅くまで頑張っている」という漠然とした努力の姿を評価することは難しく、必然的に成果そのものやそれに直結する取り組みが行われていたかを重視することになる。自由な働き方を認める中で社員をフェアに評価するという意味でも、このように合意を取るマネジメントスタイルは鍵となるようだ。

メンバーが自主性を持つためには、自分で選択することが大切だと秋沢さんは考えている。

ニットの企業ビジョン「未来を自分で選択できる社会をつくる」

ニットの企業ミッション「『あなたがいてよかった』をすべての人に」

秋沢さんがニットを立ち上げた経緯は先述したが、ここに挙げたビジョンやミッションはどちらも自主性にも関連している。ビジョンである「未来を自分で選択できる社会をつくる」にあるように社員も自分自身の「やりたい」という気持ちに向き合って、自分の未来を選択し意思決定をする。自分で選んだことだからこそ、誰かのせいにせず責任をもって自主的に取り組むことができる。そしてその行動を通してミッションにある「あなたがいてよかった」を実感できる。このサイクルができることで、メンバーは自主性をもって働くことができると秋沢さんは考える。

自主的に動く社員に、管理しすぎない組織。お互いの状況は社員自ら発信する

社員が主体的に動く姿勢を促すことはテレワークで生まれるデメリットを解決するのにも鍵となる要素だ。例えばテレワークでは、社員同士が遠隔で作業する場面が増えるため「お互いの状況がわからない」という問題が起きる。オフィスでは気づけていた社員が体調が優れず仕事しづらい状況や働きすぎといったサインはテレワーク環境下だと見つけ出すことが難しく、管理者側としては心配になるところだ。その対策として、ニットでは社員1人1人が自身の状況をできる限り自ら発信できるようにし、そのためのマネジメントを会社側が行うという考え方で進めている。

その取り組みとして実施されているのが、月に1回の1on1ミーティングだ。一般的な個人面談と異なる特徴として、業務連絡や成果報告のみで終わるものではなく、仕事やミッションに対する進捗度合いのほかに本人のコンディションやモチベーションといった気持ちや体調、そして所属する部署やチームの状態まで本人の視点から共有してもらうという。仕事と私生活の境界線がなくなりつつある今日の働き方の中で、仕事以外の部分も管理者側がケアしていく事が必要とされているのだ。

今後のビジョン

今は少数精鋭のメンバーでオフィスワークとテレワークを併用するニットだが、今後社員数が増える上でこのカルチャーをどのようにしていけるかは経営課題の1つだと秋沢さんは語る。人数が増えるほど、会社としての一体感や企業の文化を共有する上でお互いに顔を合わす合宿のような取り組みや、オフィスの存在はさらに高まるだろう。

新型コロナウイルスの影響で、テレワークでできること、在宅勤務でできること、そして個人でできることは何かを見直す人は読者の中でも増えたはず。さらにSTAY HOMEの取り組みで通勤を見直したり、自分の生活にもっと見向きしたりする時間ができたことで、働くことに対する考え方を見直したという人もいるはずだ。そうした時に、HELP YOUで400人以上のテレワーカーの管理を行いながら社内でテレワークのノウハウ蓄積し実践するニットの取り組みはきっと参考になるだろう。さらに今後どのような取り組みを進めていくのか引き続き注目必至だ。

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この記事を書いた人

Kazumasa Ikomaオフィス業界における最新情報をリサーチ。アメリカ・サンフランシスコでオフィスマネージャーを務めた経験をもとに、西海岸のオフィスデザインや企業文化、働き方について調査を行い、人が中心となるオフィスのあり方を発信していく。

    
    
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