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ウェブ会議で得られない、リアル会議の”熱量”の正体とは?―東海大学 現代教養センター 教授 田中彰吾 博士(学術)インタビュー 前編

[March 17, 2020] BY Yuichi ITO

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複数人のコミュニケーションを活性化させるために〈文化の共有〉が必要となる

身体に関わる情報を多く伝えられ 〈場の雰囲気〉 を共有しやすいリアルなコミュニケーションを行える場所として、また会話の目的に合わせて電話やメールとは異なるコミュニケーション方法を選択できる場所として、オフィスの存在価値は高いようだ。さらに田中氏によると、複数人での会話が生まれやすいオフィスといった環境でコミュニケーションを活性化させるためには、昨今のオフィス作りで重要視される 〈文化の共有〉 が必要になるという。その背景には「システムとしてのコミュニケーション」という概念が存在する。

「人が複数集まるとコミュニケーションがシステムとして機能し始め、ひとりだけの意図ではその場が動かなくなる特徴を帯びだす。上手くシステムを機能させるには、システム間の繋がりを向上させることだ」と、田中氏は説く。昨今の働き方改革を背景に、コワーキングやテレワークなど、働き方がパーソナル化している中、オフィスの存在自体その是非は問われるが、システムを円滑に機能させるための文脈、換言すると「共同体の文化を理解・実践」する〈場〉としてもオフィスは不可欠だと捉えられる。

作業効率=生産性のみを追求するのはオフィスの一部分に過ぎず、論点がズレている。〈文化〉を共有することで、その先にある新しい仕事を生み出す伏線になるだろう。ひとりだけで作業を進めていたら気が付かないような、逆に言えば、複数人で集まり一見無駄な時間を共有することで、新しいアイディアの萌芽に繋がる。システムの面白さは、ひとりでは生み出せないものを、人が集まることで自然と生み出せるようになることだ。強い会社を、定量的に捉える個を足し算した〈加算〉の生産性ではなく、チームで新しい仕事を創出する〈乗算〉で捉えることで共同体の生産性を高められるだろう。技術的なスキルだけで見るのではなく、〈場の雰囲気〉を作る上での補遺を担う文化を共有したメンバーが大切だろう。

文化や価値観を反映できていないオフィスは、企業成長を大きく妨げる

ただ、何を生み出したいかによって望ましいオフィスのあり方も変わる点は留意すべきという。話が盛り上がったとしても脱線ばかりで核心に辿り着かなければ意味がない。上手くいっている組織は高次元で各自の分業がかみ合った状態を土台に止揚できていると考えられる。異なる考え方を持った人間が集まっていることは組織の強みのひとつだが、生産性と創造性という対峙する考え方の両方が成り立つには、異なった考え方を各自が持ち寄りつつ、そこから生まれる文化を共有することが大切だ。文化の共通理解と様々な考え方が相乗効果を起こすことで、生産性と創造性を両立できるだろう。

そのために文化や価値観を共有するオフィスの存在意義は、働き方のパーソナル化が進んだとしても変わらないが、この土台を作ることに腐心する組織は多い。人材開発系の企業が理念浸透を目的としたプログラムを手掛け、クライアント企業にインストールするビジネスが成立しているのはその裏返しだろう。理念を浸透しやすい、社員間のコラボレーションを促し、相互理解や文化共有の一端をオフィスは担いやすいし、同じ組織の人々が唯一集うオフィスだからこそ、それぞれに企業文化や目的のフェーズに合わせたオフィスを作ることに寄与するだろう。

企業が異なるのに、前の企業が使っていたオフィスを別の企業がそのまま運用するのでは目的は達成できない。田中氏は、「ただの作業場に成り下がっており、企業としては自殺行為と言っても差し支えない。中身(=企業)が変わっても、以前のままのオフィスで業務が進んでいくのは、パーツを入れ替えても同じシステムが作れるという意味では機能的かもしれないが、自らの企業カルチャーを生み出せず、本来各企業が生み出すべき特有のものがない」と釘を刺す。

コミュニケーションが活性化するオフィスをつくるには、企業のフェーズに合わせてオフィスを選び、自社仕様につくり変えることが必須のようだ。それはまるで成長する子供が自分の好みに合わせながら、大きくなる身体のサイズに合う服に衣替えしていくかのようである。後編では具体的なオフィスづくりに焦点を置き、認知科学からオフィス環境が人間に与える影響について見ていく。

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この記事を書いた人

Yuichi ITO食品メーカーからPR会社を経て、フロンティアコンサルティングの広報へ。社会人スタート以来、マーケティングや広報といったコミュニケーション活動に一貫して従事。ライフワークにワークプレイスや働き方に関する情報発信が加わり、広く興味津々。

    
    
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