就活生が気になる〇〇はオフィスのココを見ればわかる
記事作成日:[April 30, 2019]
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記事更新日:[May 01, 2019]
BY Yuna Park
以前就活シーズン特別企画として『若手社員が入社後感じた「こんなはずでは…」な働き方』という記事をお伝えしたが、そんな「想定外」をなるべく小さくするために就活時に注目してほしいのがオフィスだ。そもそもオフィスとはその会社の価値観や文化、働き方を反映してデザインされるもの。そのためオフィスを見ればある程度の実態が見えてくるというわけである。
今回の記事では就活シーズン特別企画第2弾として、就職先を選ぶうえで学生が気になる点と、それ知るために見るべきポイントについて、インターンと会社のマッチングプラットフォームを運営するTRUNK株式会社代表取締役CEOの西元涼氏と、フロンティアコンサルティング設計デザイン部執行役員の稲田晋司に話を聞いた。会社説明会や面接、OB/OG訪問などでオフィスを訪れる際にぜひ参考にしてほしい。
TRUNK株式会社代表取締役CEOの西元涼氏(右)と、フロンティアコンサルティング設計デザイン部執行役員の稲田晋司(左)
ビジョンやバリューが見えないオフィスは要注意
多くの会社のウェブサイトの会社概要ページには、ビジョンやそれを実現するために行うミッション、そしてその実現のために社員が共有すべき価値観であるバリューが掲載されている。西元氏によると多くの学生がそれらを重視し、「自分の仕事がビジョンの実現にどう役立つのか気にする」という。この傾向は職種を問わず見られ、「志望動機でビジョンに触れない学生はいないのではないか」と西元氏は指摘する。
しかしそれらウェブサイト上のビジョンやバリューを鵜呑みにする前にオフィスを見て欲しいと稲田は言う。ビジョンやバリューをオフィスで体現しようとしている会社では、社員にそれらを伝えようと積極的であり、結果的に社員間でそれらがしっかり共有されていることが多いからである。
たとえば以前Worker's Resortでもご紹介したエイベックスのオフィスでは、まさに彼らが掲げるビジョンのタグライン『Really! Mad+Pure』を至るところで目にするし、オフィスのデザインからはそのビジョンを体現するためにコラボレーションを重視していることが伝わってくる。
エイベックスのオフィスの至るところで目にする『Really! Mad+Pure』のタグライン
社員同士のコラボレーション創出を狙って設計されたエイベックスのオフィス
逆に「パッと見て何の会社かわからないようなオフィスではビジョンやバリューの浸透度が低い可能性が高い」と稲田は指摘する。そのため、会社訪問時にはウェブサイトに書かれているビジョンやバリューを思い出しながらオフィスを見てみるとよいだろう。
場所の自由度はデスクワゴンとペーパーレス度に表れる
先日フロンティアコンサルティングが学生を対象に行ったヒアリングアンケートでは、学生は事業内容よりも働き方のほうを重視しているというショッキングな結果が出た。では学生の気にする働き方とは何か。西元氏によると一番大きいのは「場所の自由」だという。
場所の自由と聞いて頭に浮かぶのはフリーアドレス制であり、実際それを採用する会社は増えている。しかし「フリーアドレス制=働く場所が自由」と考えるのは早計だと稲田は指摘する。たとえばフリーアドレス制なのに個人にデスクワゴンが与えられている場合は結局社員が席を固定している可能性が極めて高い。わざわざワゴンを動かすのが面倒だからである。
また、オフィスの中でのペーパーレス度、つまり書類の量も見るべきポイントの1つである。たとえば会議資料が紙だと当然リモートでの参加は難しく、オフィスに行かなくてはならない。そのため、紙の資料が膨大にある会社や、それらを収納するためにスペースを割いている会社ではテレワークはあまり浸透していないと思ったほうがよいだろう。
共有スペースでコミュニケーションの活発度をチェック
共有スペースの充実度も働く場所の自由度を測るうえで注目ポイントだ。デスク以外での執務スペースを提供している会社は「働く場所」に対する寛容度は高いと言えるだろう。
それ以外にも、共有スペースからは「部署の枠を超えたコミュニケーションを実現しようとしているかどうか」を知ることもできる。お弁当を食べたり軽い打ち合わせができたりするような多目的スペースは部署の垣根を超えた出会いや新しいコラボレーションを生みやすい。これらのスペースがあるということは、会社がそのようなコミュニケーションを重視し積極的に生み出そうとしているということだ。
打ち合わせや休憩に活用されるフロンティアコンサルティングの共有スぺ―ス
西元氏によると、今の学生は色々な人と話せる環境を大事にするという。ベースには「仕事=自分のスキルを伸ばすこと」という考え方がある。今の学生はスマホで色々な情報を手に入れられるようになり、自分とは異なる考えやスキルを知る機会が昔に比べて各段に増えている。自分のスキルを伸ばすために色々な人から学び刺激を受け、また自分の選択肢を広げていきたいと考える傾向にあるようだ。
会社の「綺麗度」と改装履歴から社風は見える
社風を知ることも就職活動には欠かせない。そこで稲田が注目するのが「オフィスが綺麗に保たれているか」である。社員がオフィスのスペースや備品を丁寧に扱っているかどうかで会社に対する当事者意識がわかるのだ。当然ながら、オフィスのスペースや備品に対して「自分たちが稼いで買ったもの」という意識でいる方が「与えられたもの」と捉えるよりもオフィスを綺麗に保つ。
以前Worker's Resortでご紹介したCRAZYのように、この当事者意識を高めるために敢えてオフィスづくりのプロジェクトに社員を巻き込む会社も多い。社員がオフィスや会社に対して当事者意識を高く持ち、積極的に改善に向けて動く会社であれば、そのオフィスは綺麗なはずなのである。
また、オフィスをこまめに変える会社は変化に対して寛容な会社だとも言えるだろう。そもそもオフィスの内装を変えるのにはお金がかかる。稲田によると、変えるということはチャレンジであり、だからこそお金をかけて頻繁にリニューアルしている会社は社員に対してトライアルを許す風土だと考えれられるのだ。志望している会社のオフィスについてネットで検索してみると、これまでそのオフィスがどのように変わっていったのか見ることができるかもしれない。
オフィスを見て事業内容への理解を深める
学生にとって無視できない事業内容もオフィスから知ることができる。たとえばフロンティアコンサルティングではオフィスの壁や床に寸法が書いてある。これはクライアントとの打ち合わせの際、長さや大きさを実際に感じてもらうためだ。
以前の記事でもお伝えしたように、Airbnbのサンフランシスコオフィスでは、会議室を掲載物件の部屋と同じデザインにすることで「ユーザー視点に立ったサービス設計」という事業内容を反映している。またスノーピークビジネスソリューションズのオフィスではスノーピークのキャンプ用品やテントを打ち合わせスペースに利用するなどして、アウトドアのベネフィットを社員が日頃から感じられるようにしている。
これらに共通するのはオフィスを事業のためのツールとして利用している点である。裏を返せば、オフィスを見れば事業内容をより感じることができるというわけである。
Airbnbサンフランシスコオフィスにある会議室。実際に掲載されている物件の部屋を再現している(写真引用元:Airbnb Office - 999 Brannan / Airbnb Environments ©Mariko Reed)
スノーピークビジネスソリューションズではスノーピークのアウトドア用品をオフィスで活用(写真引用元:スノーピークビジネスソリューションズのウェブサイト)
終わりに
今回お伝えしたことからもわかるように、オフィスというのはただの場所ではなく、その会社のビジョンやバリュー、方針や社風、そして事業内容までがわかる情報の宝庫だ。会社訪問はウェブサイトや会社説明資料からは見えない「実際のところ」を自分の目で確かめる絶好の機会である。
今回の視点を参考に自分の目でオフィスを見て、質問があったら面接官やOB/OGに聞いてみよう。これまでさらに深い情報が得られるかもしれない。
この記事の執筆者
Yuna Park 国内企業で編集・企画、サンフランシスコのUXデザイン会社にて社内外のコンテンツマーケティングの統括責任者を務めたのち独立し、現在はライター、エディター、マーケティングコンサルタントとして活動中。専門分野は働き方、ローカライゼーション、経営。