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加速する行政のデジタル改革と、企業のDX推進に役立つ電子申請サービス例

[December 07, 2021] BY Naoto Tonsho

デジタル庁創設で本格化する行政のDX化

企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むなか、政府のDXも歩みを進めている。とりわけ、民間の経済活力向上を所管する経済産業省や、中小企業の育成・発展を目指す中小企業庁におけるDX推進には注目すべき点がある。さらに、2021年9月1日に新たに誕生した「デジタル庁」が、この流れの先頭に立ち、力強く牽引していくことが期待されている。

今回は、デジタル庁が目指すデジタル社会について確認しながら、経済産業省や中小企業庁が整備する「GビズID」「Jグランツ」「ミラサポplus」といった、企業の活力を後押しし、バックオフィス改革の推進力となる具体的なDX政策について詳しく見ていきたい。

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デジタル庁が掲げる改革の気になる中身

新型コロナウイルスのパンデミックで迎えた2020年の春、全国民に一律10万円が支給される「特別定額給付金」が発表された。ところが、実際の給付については、行政から送られてくる申請書が届かなかったり、電子申請したにもかかわらず、それを処理する自治体が入力内容と住民基本台帳ネットワークの世帯情報とを照合するのに膨大な人手と時間を費やしたりと、政府のデジタル化の遅れによる様々な混乱が生じた。

企業活動においても、紙で届く請求書や発注書などの書類を処理するために、街から人がいなくなった1回目の緊急事態宣言のなか出勤する、バックオフィス部門の従業員の姿があった。こうした経験を踏まえ、企業では「紙からデジタルへ」という意識が強まり、DXの推進を後押しすることとなった。

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そうしたなか、2020年9月に発足した菅義偉内閣は、行政のデジタル化を政策の柱に据え、デジタル庁の創設を発表した。2021年9月1日には「デジタル庁」が発足。初代デジタル大臣にはデジタル改革担当大臣だった平井卓也氏が就任し、岸田文雄新内閣の発足に伴って牧島かれん氏へと引き継がれた。

ここで改めて、デジタル庁がどのような省庁かを確認したい。デジタル庁のWebサイトにある「デジタル庁の概要」には、その目指すところが書かれている。

デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指します。
(デジタル庁「デジタル庁の概要」より引用)

デジタル庁の骨格を示す概要にも「未来志向のDX」が謳われ、今後5年というスピード感をもってデジタル時代の官民インフラを作り上げるという大胆な方向性が示された。発足から間もない2021年9月10日には、「第1回デジタル社会推進会議幹事会」が開かれ、そこでは企業活動のDXをサポートする政策についても触れられている。

会議で使用された資料「今後のデジタル改革の進め方について」の「当面のデジタル改革における主な項目」では、「産業全体のデジタル化とそれを支えるインフラ整備」(P.5)について、いくつかのメニューを並べている。そのなかで今回取り上げたいのが、「認証・申請基盤の確立による法人向け行政サービスの質の向上」である。

掲げられた目標は下記の通り。

・法人向けオンライン認証の普及を推進する。
・商業登記電子証明書についてクラウド化、無償化の可否の検討を進め、事業者の利便性を向上する。
・オンライン申請を通じて中小企業に関する様々な情報を蓄積し、官民で連携して中小企業を支援する基盤を整備する。

行政手続きにおける事業者の利便性向上、中小企業の支援などを目指していることがわかる。これに関連する具体的な企業向け行政サービスについては、後半で詳しく見ていくこととする。その前に、経済産業省のDX推進に対する姿勢がとても興味深いので紹介したい。

経済産業省DX担当職員の本気度

経済産業省ではデジタル庁に先駆けてDXを推進しており、公式Webサイトの「政策について」のなかでも、「経済産業省のデジタル・トランスフォーメーション(DX)」を大きく掲げ、「METI DX」という個別のページを設けて積極的に情報を発信している。

まずは、このページ内の「トピックス」にあげられた、一つの記事に注目したい。ちなみに、「トピックス」では「note」というプラットフォームを利用し、同省のDX担当職員がDXに関する記事を書いたり、関連する記事をピックアップしたりしている。どことなく硬いイメージのある官庁の情報発信とは一線を画す、かなり自由度の高いもので、読み応えのある記事が並んでいる。興味のある方は、そのタイトルだけでも一読されることをおすすめしたい。気になる記事に出合えるかもしれないし、何より行政のDX担当職員がどのようなことを考えているかが見えてくる。

さて、今回注目したのは、吉田泰己氏による「行政デジタル化の本質は何か」と題された記事だ。吉田氏は、行政サービスのDX化に従事する経済産業省の職員である。冷静に従来の行政サービスの課題を見つめ、その課題をどう変えていけばよいか、鋭く、自らを含む行政官への戒めのように「本質」を説いている。少し長くなるが、同省のDX、そしてデジタル庁が目指す世界が見える部分を紹介したい。

サービスプロバイダーとしての政府

中央官庁は特に「お上」と呼ばれるように、自分たちが作った制度を実施すれば皆使ってくれるという、「上から目線」でしか国民と向き合ってこなかった。だからこそどんなに手間がかかっても紙や押印が残存し、ユーザー視点でオペレーションを見直すことをしてこなかった。しかし、今回の給付金でも明らかになったようにデジタルサービスになれば、ユーザーの視点に立ち使いやすさを考えなければ、誰も手続きができないといった状況に陥りかねない。行政官自体がサービスプロバイダーとしてユーザーと向き合い、どうしたら利用しやすいサービスになるのか、マインドセット自体をユーザー視点に変えなければいけないのだ。
(吉田泰己氏「行政デジタル化の本質は何か」より引用)

記事ではこの後、行政組織の縦割構造の打破や、人事の仕組みの見直し、そして行政サービスが民間サービスのように使いやすくなるための考え方にも踏み込んでおり、行政のデジタル化に向けた本気度がうかがえる。こうした気概を持った人材が現状を憂い、発展的にDXを追求するのであれば、今後の展開に期待が持てるのではないだろうか。

企業のDXを後押しする未来志向の行政サービス

ここからは、法人向け行政サービスのデジタル改革について、具体的なサービスを紹介しながら見ていきたい。

1. 行政サービスへのログインをラクにする「gBizID(GビズID)」

GビズID」は、複数の行政サービスを一つのID・パスワードで利用できる認証システムだ。補助金申請や社会保険の手続き、各種認定申請などを本人確認書類なしで利用できる。

これまでの法人向けオンライン行政サービスでは、手続きのシステムごとにID・パスワードを作成する必要があった。その管理の煩雑さが申請の障壁とさえなっていたことから誕生したサービスだ。GビズIDで利用できる行政サービス一覧には、すでに多くの行政サービスが並んでおり、順次増えていく予定である。GビズIDの取得には、申請から2〜3週間ほどかかるとされる。

なお、GビズIDは経済産業省のDX推進の柱として進められてきたが、デジタル庁の発足とともに同庁に移管されている。

2. ネットでいつでも補助金申請ができる「jGrants(Jグランツ)」

Jグランツ」も経済産業省からデジタル庁へ移管したサービスで、24時間365日利用できる補助金の電子申請システムだ。Jグランツの利用には、GビズIDの取得が必要となる。

まず、申請したい補助金をJグランツ公式Webサイト内の「補助金を探す」から検索し、GビズIDでログインした後、必要事項を入力して申請、それから審査へ進むといった流れだ。ちなみに、補助金を探す際には、「ものづくり」「持続化」といったフリーワードで検索できる。

利用のメリットとしては、申請にかかる交通費や郵送費などのコスト削減のほか、過去に申請した情報が自動転記されるため手間が軽減されること、書類への押印が不要になりペーパーレス化できることなどがあげられる。

関連記事:今さら聞けない電子署名の基礎知識 ー 概要とサービス事例紹介

3. 中小企業向けの補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」

中小企業庁が運営する「ミラサポplus」は、中小企業向けの補助金をはじめとする支援制度を検索できるサービスだ。主な補助金として、持続化補助金やIT導入補助金、ものづくり補助金があげられている。様々な電子申請サイトへとつなぐポータルサイトとしての役割も担っており、各電子申請システム側がミラサポplusと連携している場合、登録情報が自動転記される(GビズIDによるログインが必要)。

ミラサポplusの主な機能には、「支援制度を探す」「支援者・支援機関を探す」「事例を探す」があり、単に支援制度を検索するだけではなく、「支援者・支援機関を探す」を活用して経営相談ができる専門家や支援機関を探すことも可能だ。

ここで紹介したもののほかにも、GビズIDを軸とした数々の行政サービスが展開されている。着実に進む、行政のデジタル改革。その法人向けサービスを活用し、企業のDXにつなげてほしい。

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この記事を書いた人

Naoto Tonsho 週刊誌の記者としてキャリアをスタート。政治、経済、社会問題まで幅広く取材。2016年頃より企業の広告・PRなど、BtoB関連にも業容を拡大。最近では、企業経営者へのインタビューや統合報告書制作などにも携わる。



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