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ONE ON ONEやミーティングを可視化し定量的評価につなげる。 Hylable DASをご紹介

[October 02, 2018] BY Shinji Ineda

会議やミーティングの質をあげるために、各企業は様々な取り組みを行なっている。よく言われるのが「事前のアジェンダ設定」や「参加メンバーの精査」などではないだろうか。

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しかし実際にその効果を皆さんはどのような方法で評価しているだろうか?人の記憶や感覚だけではなく、定量的に発話量や会話の変化を測る。そのような今まで見えなかったものを可視化するテクノロジーを今回は紹介したい。

会話を自動的に見える化

Hylable DAS (Discussion Assessment Service)は、会話の様子を自動的に定量化し、見える化することができる。開発者でハイラブル株式会社代表取締役の水本武志さんに、開発に至る経緯についてお話を伺った。

Hylable DAS (Discussion Assessment Service)の開発者で、ハイラブル株式会社代表取締役の水本武志さん

元々は高専でロボコンに取り組んでいた水本さん。その後ロボットに耳の機能をつけるロボット聴覚の研究室に入ったのをきっかけに、音に関わる研究を始めた。研究の中では、ロボットが人の演奏を予測しながら人と一緒に合奏する共演者ロボットや、ニホンアマガエルが相手の鳴く瞬間を予測しながら、タイミングをずらして合唱するメカニズム(群れのコミュニケーション)をテーマに研究していたという。

ハイラブルという企業名もこのカエルの研究から由来している。社名の由来について公式WEBサイトでは「叫ばないと何を言っているかわからない高雑音環境でも、彼ら(カエル)は繁殖のために鳴きながら周りの音も聞いています。 このような聴覚能力の高さをさまざまなシステムで実現したいという願いをこめて、Hyla japonica (ニホンアマガエルの学名) と、可能を意味する -able を組み合わせて、 Hyla + able = Hylable と名付けました。」と紹介している。

その後、企業の研究所に入り音声認識や音声操作の研究を行なっていたところ、この活用方法を発案し自身で会社を立ち上げたそうだ。

どうやって定量的に測るのか??

使用されるハードウェアは、株式会社システムインフロンティア社のたまご型マイクアレイ。難しそうにも聞こえるが、簡単に言うと「遠隔操作できるマイク」と考えてよいだろう。これを利用して取得した音声をHylable DASで分析することで、会話を定量的に見える化するという仕組みだ。

初期設定は、マイクアレイ下部の角度表示に沿って人物の位置を入力するのみだ。そして録音を開始する。現在のバージョンでは個人の特定は方向を使って行っている。

実際の測定結果はいかに

録音された音声の分析結果はすぐに閲覧ができる。下記画像を合わせてご覧頂きたい。色の違いがそれぞれの個人を表しているが、上段のグラフ(RELATIVE ACTIVITY)では横が時間軸となっており、約6分間での会話の変化を確認することが出来る。また右下のグラフ(UTTERANCE DURATION)からは個人ごとの発言量がわかる。左下のCOMMUNICATION GRAPHでは会話の流れが可視化されており、誰の後に誰が発言する傾向があるかを見て取れる。

今回は3名の参加者を仮の名前で測定したが、これにバイネームを設定することにより、複数の異なった会議やミーティングを通しての、個人ごとの発話量や会話の傾向を観察することができる。

「会話の見える化」はどのようなシーンで価値を提供するか

現在は教育分野からの興味が多いHylable DAS。実際に小学校におけるアクティブラーニングでの導入も増えているという。アクティブラーニングとは、従来の生徒が受け身になってしまう授業の方式ではなく能動的に学ぶ学習法の総称で、主体的に学ぶ姿勢を引き出す目的で行われる。具体的には、グループディスカッションやプレゼンテーション、他者への指導が代表的な例だ。

写真:埼玉県戸田市への導入実績(Hylable公式WEBサイトより転載

水本さんとお話をする中で、オフィスやワークプレイスにおける次のような活用シーンについてディスカッションすることができた。

その1:研修や会議の質向上へ

まずはじめは企業内の研修や会議への活用だ。昨今、ビジネスの中ではワークショップや議論の機会が多くなっている。その中で個々が自身の意見を適切に発言できるかどうかは、会議の質を上げる上でとても大切だ。またアイデア発散型のMTGか、決定を行う収束型のMTGかで、発話量や会話の流れは異なる。それらを可視化し適切に見直すことで、次回の改善に活かすことができるだろう。

その2 :ファシリテーターの育成

前述したように企業内では議論の機会が増えているが、それに伴い優秀なファシリテーターの存在もまたこれまで以上に必要とされている。特にイノベーションや新規事業を目的として活動している組織では、いかにユーザー視点に立ってプロダクト開発を行なっていけるかが大切で、ユーザーからどのくらい多くの生の声を拾えるか、潜在的なニーズを顕在化できるかがその後の開発を左右することになる。そういった傾向からも、多くの人が効率よくファシリテーションスキルを身に付けるためのプログラムが今後重要になる。

ファシリテーターはアジェンダに沿って、事前にどのような発話量や発言の変化が理想かをイメージしておく。その上でHylable DASを利用することで、ミーティングやワークショップが終わった後に、自分の進行がどうだったかを見返すことができる。

以前、プロファシリテーターが参加したディスカッションを測定したことがあるそうだ。その際は全員に満遍なく発話の矢印が向いており、ファシリテーターが話を全体に投げかけている様子がはっきり確認できたとのことだ。

その3:採用試験での企業と個人のマッチング

人は複数のタイプに分類できるとされる研究が世の中では多くある。企業の中にはそのような研究やこれまでの採用経験における独自のノウハウを、選考時の参考にしているケースもあるのではないだろうか。

もし採用試験時にグループディスカッションなどを設けている場合、発話量や会話のやりとりを把握することで、その個人が自社にマッチする人物かどうかを見極めることができるかもしれない。また複数のディスカッションを同じテーブルに並べることで、個々の相性や組み合わせによる発言力の強弱を、比較することが可能になるだろう。

その4:ONE ON ONEの振り返り

最初の「研修や会議の振り返り」と近いが、ONE ON ONEの振り返りにも有効だ。ONE ON ONEとは一般的に、メンターである上司や管理者が自身の部門内の人間であるメンティーとコミュニケーションを図り、気づきや内省の機会提供を行うことで成長を支援する制度である(最近では組織の垣根を越えて実施するケースもよく聞く)。この「気づきや内省の機会提供」という考え方が非常に大事で、気づきを与える質問や雰囲気づくりが欠かせない。管理者や上司側にはそのための傾聴(アクティブリスニング)の姿勢が不可欠とされている。会話が可視化されることで互いの会話量を確認できることは先にお伝えしたが、実はHylable DASでは会話のオーバーラップも読み取ることができる。

会話のオーバーラップとは、人の発言中に別の人の発言が始まることだ。オーバーラップには、本当の割り込みと、ただ単純な頷きの両方が含まれるが、発言量と実際の音声データによってその傾向が確認できる。

「発言量が逆転している」や「会話を遮るオーバーラップが多発している」といった点は、ONE ON ONEのクオリティを上げていくためにも、是非把握したいところだ。

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量から意味が見えてくる

水本さんはこう言う。

一般的に音の技術と聞くと、音声認識やテキスト化を一番に思い浮かべる方が多いと思います。でも私の場合はそこが入口ではなかったし、それもあって量から意味が見えてくるのではないかと考えています。

ミーティングやONE ON ONEでの利用は元より、採用や能力開発での可能性も感じさせるHylable DAS。よくある研修や会議後に実施されるアンケートは、事後の振り返りであるため感情による誤認識やバイアスに影響されるケースも少なくはない。一方、Hylable DASによるレポートは、その場の音声を直接分析しているため、偏りのない振り返りや改善に向けた取り組みを行うことができる。

当事者がどう感じていたかという「実感値」と、可視化された定量的な「データ」、両方を組み合わせることで会議の質は飛躍的に高まっていくことだろう。

 

本記事にて紹介した製品・サービスに御興味を持たれた方は、こちらより気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

Shinji Inedaフロンティアコンサルティングにて設計デザイン部門の執行役員を務める。一方、アメリカ支社より西海岸を中心としたオフィス環境やワークスタイルなどの情報を、地域に合わせてローカライズ・ポピュラーライズして発信していく。



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