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空気改善でプレゼンティーイズムを削減する。IOTセンサーAwairが企業に提供する価値とは

記事作成日:[April 17, 2018]
/ 記事更新日:[February 21, 2019]
BY Shinji Ineda

乾燥する冬から暖かい春を迎え心地良さを満喫したいけど今度は花粉が・・・と、なにかと空気に悩まされるこの時期。不快な気持ちになったり、それが原因で仕事に集中できない人も多いのではないだろうか?

空気がオフィスにもたらす多くの不満

空気が仕事に与える影響は多岐にわたる。よくオフィスユーザーから聞かれるのは室温への不満だ。個人により温度の感じ方は異なるため、全員が心地よいと感じられる室温へバランスよく調整することは難しい。そのため寒さや暑さによって集中を阻害された経験は誰しもが持っているだろう。

関連記事:「寒すぎるオフィス」は解決されるのか?ワークスペースで配慮すべき男女差とは

また冬場に流行する風邪やインフルエンザの感染に空気の乾燥が影響している。日頃から美容や健康に気を使っている人も、その時期には乾燥肌が気になるところだろう。そして、まさにいまの時期(2月〜4月)に多くの人を悩ますのがスギやヒノキの花粉。米国で行われた調査では、従業員の55%がアレルギー性鼻炎の経験があり、アレルギー性鼻炎による職場生産性の損失額は年間平均で593USD/人であると報告している。

Lamb CE et al .Curr Med Res Opin., 2006
Economic impact of workplace productivity losses due to allergic rhinitis compared with select medical conditions in the United States from an employer perspective. より引用

そのようななか、具体的に花粉対策を実施しているオフィスも存在する。本メディアでも以前紹介したJINS Think Labでは、期間限定(2018年2月1日〜3月31日予定)で花粉対策サービスを提供。エントランスに設置された「エアーシャワー」で室外からの花粉の侵入を防ぎ、一部エリアに設置された花粉対策に特化した専用ルームには、空気清浄機能付き扇風機が備わっている。花粉に悩むオフィスユーザーにとってはとても快適な環境だろう。

Think Labが花粉対策サービスを期間限定で提供開始

関連記事:現代の高野山が「集中」の先に見出す可能性 ~JINS「Think Lab」プロジェクト~

集塵効率99.99%以上のHEPAフィルター内蔵の「エアーシャワー」

花粉対策として専用ルームに設置されている「Dyson Pure Cool Link™ (ダイソン ピュアクール リンク)空気清浄機能付タワーファン」

プレゼンティーイズムをいかに減らしていくか

しかし今日において花粉や体調不良による生産性低下にここまでフォーカスする企業はまだまだ少ない。もちろん病欠(欠勤)が目立つようにあると対策を練るに至るが、それはあくまで労働時間の損失であり、業務中のパフォーマンスについては見過ごされがちだ。プレゼンティーイズム(Presenteeism)とは、日本語では疾病就業と訳され、仕事に従事しているにも関わらず体調不良が原因で本来のパフォーマンスが発揮できていない状態を指す。花粉症や片頭痛などの症状を抱えている人に比較的多くみられるが、もし職場の空気を見直すことでプレゼンティーイズムを減らすことができれば、企業の生産性向上につながるのは間違いない。

24の知識労働者が示したパフォーマンスへの影響

ハーバード大学とシラキュース大学、ニューヨーク州立大学(SUNY)アップステート医科大学の共同研究では、関心を引くデータが発表されている。24の知識労働者(マネージャー・建築士・デザイナーなど)を対象とした実験で、換気率・揮発性有機化合物・二酸化炭素の3つの要素について、作業スペースの空気の質を最低限許容される状態から最適な数値へ変化させた。あわせて認知機能の標準テストを行い研究参加者たちの意思決定パフォーマンスを検証したところ、より良い空気を吸うことで研究対象者のパフォーマンスが改善することが明らかになったという。同研究ではテスト結果を労働統計局から入手したデータと組み合わせてみたところ、換気率を2倍に高めることで一人あたり年間6,500USD(約70万円)の生産性効果があることも推定されたという。これらの研究からも、生産性の向上を図るために空気の質に注意を払う必要があることは、理解できるだろう。

サンフランシスコ発Awairで空気の見える化

目に見えないものに気を使うには、まず見える化が必要になる。サンフランシスコに本社を構えるAwair(アウェア)が提供するスマート空気モニターは、まさにそれを実現できる製品だ。一見おしゃれなラジオや置き時計と見間違えるこのデバイスは、空気中の温度・湿度・二酸化炭素・揮発性有機化合物(ホルムアルデヒドなど)・ホコリ(花粉も感知)をリアルタイムに測定することができる。デバイス本体のディスプレイに加え、wifi接続によってその測定結果をスマートフォンの専用アプリにも表示可能だ。また企業のオフィスや施設の利用を想定したAwair Omniは、壁へマウントすることもでき、環境変化へのレスポンスがより高感度なセンサーを備えている。さらにデスクトップアプリを用いて、別のオフィスや1つのオフィスでの複数同時監視、Excelファイルでの測定データのダウンロードも行える。

主に個人用として提供しているAwair

ビジネス用に提供しているAwair Omni。写真はAwairのウェブサイト。

実際にAwairでオフィスの空気をモニタリング

今回は実際にAwairを利用して、オフィスの空気環境の変化を測定してみた。セットアップはとても簡単だ。デバイスを電源につないだら、あらかじめダウンロードしたスマートフォンアプリからBluetoothで機器を探知。そしてWifiの設定を行うだけだ。2017年8月から日本語にも対応しており、設定にはまったくストレスを感じなかった。

今回空気を測定したのは小さなミーティングルーム(約11m2)で、4名が2時間継続して利用している様子をモニタリングした。

まずは利用を開始した15:03。温度が22℃で二酸化炭素濃度が445ppmを表示している。

 

暫く経過した15:24。温度が2℃上がり、二酸化炭素濃度も684ppmに。

 

利用開始から1時間後の16:03。温度はさらに向上し26℃まで上昇。

 

16:29と利用終了時間の16:57。最終的に二酸化炭素濃度は718ppmとなった。実際の利用による空気環境の変化が見て取れる。

 

一日の推移もわかりやすいグラフで表示される。こちらは一般的に執務を行うのワークスペースの測定結果。

外気より汚い屋内の空気。まずは観察してみては

いま注目を集めているWELL Building StandardでもAir(空気)を、特に評価へ影響があるとされる7カテゴリーの1つに位置付けており、良質な空気の維持と大気汚染物質の抑制に努めることを定めている。GoogleやAirbnbにもAwairは導入されており、従業員の良質な業務環境維持のために活用されているとのことだ。

関連記事:健康的なオフィスの新基準、WELL Building Standardとは?【前編】

Awair CEOのRonald Roは公式ブログにてこう述べている。

“私たちの現在の目標は、個人や家族が息をする室内環境を変えることですが、今後は建物自体の環境を変えることも目標として置いています。 “

Awairではビルのオートメーション化に向けたAPIも提供しており、各空調換気設備との連携が進むに連れ、さらにAwairの価値が高まっていくことだろう。一般的に屋内の空気は、おおよそ外気の5倍程度汚いとされている。まずはAwairを利用して身の回りの空気環境を見直してみてはいかがだろうか。

参考文献:Is CO2 an Indoor Pollutant? Direct Effects of Low-to-Moderate CO2 Concentrations on Human Decision-Making Performance

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この記事の執筆者

Shinji Ineda フロンティアコンサルティングにて設計デザイン部門の執行役員を務める。一方、アメリカ支社より西海岸を中心としたオフィス環境やワークスタイルなどの情報を、地域に合わせてローカライズ・ポピュラーライズして発信していく。

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