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オフィスにおける最大の課題「他人の体臭・口臭問題」に取り組むKunkun body

記事作成日:[May 21, 2019]
/ 記事更新日:[May 20, 2019]
BY Kazumasa Ikoma

ワークプレイスにおけるにおい対策が進んでいる。今回紹介する製品は、オフィス環境における「においの見える化」を実現するKunkun body。働く人のにおいを可視化することで、彼らの身だしなみに対する意識を高めることが目的だ。これまで職場で一番の問題とされていた体臭・口臭問題のソリューションとして期待されている。

製品を開発したのは、コニカミノルタの新規ビジネス開発部門を担う『Business Innovation Center (BIC)』のチーム。BICは東京・品川以外にもシリコンバレー、ロンドン、上海、シンガポールを含めた世界5拠点に設置され、グローバル規模でイノベーション創出を行っている。持っている技術の活用よりも今ある課題の解決を重視する、というモットーを持つこの開発施設で生まれたKunkun bodyは、どのように働く人のニーズに応えていくのか。開発メンバーの方に話を伺った。

職場における体臭・口臭問題にソリューションを提供したかった

彼らが解決すべき課題を探るにあたり注目したのが、株式会社マンダムが2014年に行った調査結果だ。それによると、職場において同僚など周囲の人の身だしなみで「対処してほしい」と思う問題点の1位に挙がったのが、体臭や口臭を含めたにおいだった。また同調査で、他人の身だしなみで最も指摘しにくいこととしても、同じく体臭・口臭といったにおいが全回答の76.5%を占めるほど深刻な問題であることがわかった。

さらに別のアンケートでは、自分のにおいが気になる、または知りたいと回答した人が7割、そしてにおい対策をした後でも、その対策が完璧に出来たか確認したいと回答した人が5割、と多くの人が自身のにおいに対する不安や悩みを抱えていることがわかった。スメルハラスメントという言葉も多く耳にするようになった今、その効果的な解決策となる製品がまだないことが開発のきっかけになったという。

コニカミノルタが2015年に行った、働く人のにおいに対する意識調査

こういった背景でBICの開発チームは、大学の研究・開発の見本市である「イノベーション・ジャパン2015」に小型におい識別器を出展していた大阪工業大学の大松繁教授と出会い、持ち運びやすい大きさのデバイスを通じたにおいの可視化・データ化の共同研究と開発を進めた。こうして2017年にKunkun bodyは生まれた。

一般的なにおいチェッカーとは一線を画すKunkun body

Kunkun bodyは数あるにおいの中でも人の3大体臭と呼ばれる加齢臭、ミドル脂臭、汗臭に特化して測定を行う。さらに昨年の10月のアップデートで、3大体臭に加え口のにおいも測定可能になった。

使い方はいたって簡単で、あたまや耳のうしろ、わき、あし、口に製品を数秒近づけるだけで測定を行う。測定された体臭のデータはBluetoothで送られ、20秒ほどでスマートフォンのアプリケーション上に表示。結果は10段階で表示され、レベルによってにおい対策が必要かを客観的に判断できるほか、具体的にどのような対策が必要かも表示してくれる。

「働く人 × におい対策」に特化した製品として、Kunkun bodyが持つ大きな特徴は次の3つ。

においを嗅ぎ分けられるセンサー

これまで技術的ににおいの強さを測れるものはすでにエアコンや口臭チェッカーで導入されていたが、においを嗅ぎ分けるものは存在しなかった。しかし、働く人の悪臭をゼロナイズする(なくす)という意味で、良いにおい、悪いにおいの嗅ぎ分けは必須。Kunkun bodyは実際ににおいの種類の嗅ぎ分けまで可能にしている。

例えば昨年10月のアップデートで可能になった口臭チェック機能では、「人に迷惑をかけていないか」という指標をもとににおいの嗅ぎ分けを行う。ミントのにおいがした場合は測定結果の数値が低く出るようになっており、他人への迷惑度は低い、と表示される仕組みだ。逆にコーヒーやねぎ系のにおいは悪いにおいとして認識されるという。

また香水の基本的な香りも学習しているため、におい測定の際には学習している香水の香りを除いた上で結果表示が可能だ。

「個人のエチケットツール」として使いやすいデザイン

2つ目の特徴はそのデザインだ。日常的に使ってもらいやすい、また使いやすいデザインを考慮し、ポケットサイズで清潔感のある形や見た目となっている。

「自分のにおいを測る」という行為は人によっては少し恥ずかしいことかもしれない。しかし、Kunkun bodyはそれを働く人の「当たり前」にしたいという思いから、デザインにも特別な注意が払われたようだ。『「においケアをする」という行為が「歯を磨く」「髪を整える」に並ぶ、一流のビジネスパーソンに近づける身だしなみの新習慣として根付いてほしい』というのが開発チームの思いだ。

においケアのアクションまで考えた設計

Kunkun bodyで行うにおいの見える化はあくまでにおいケアのきっかけ作りにすぎない。開発チームはこのにおいケアの習慣化を促すため、Kunkun body LIFEページを通じてにおいを防ぐあらゆる対策方法の情報発信を行っている。ミドル脂臭と疲労の関係性の説明や朝食を取ることで行うにおい対策、また親知らずによる口臭の対策まで、幅広くカバーしている。

また、においの測定結果の表示後は、ユーザーの年齢や性別も考慮した上で、各ユーザーにそれぞれ必要とされるにおい対策記事が紹介される仕組みになっている。

においケアに敏感な人とそうでない人

Kunkun bodyは現時点でにおいに不安を持つ30〜40代を中心に売れているという。「営業をやっているが、顧客と話をしている時に相手が口を押さえる仕草を見ると、においを気にされているように感じる」「女性が多い職場で女性社員が自分のにおいで噂しているような気がする」といった実際のユーザーの不安を払拭するように、製品は役立っているようだ。

また昨年10月のアップデートで口臭チェックが追加されたあと、女性ユーザーの割合が増えたという。更年期に入る女性の多くも口のにおいを気にするようになるとKunkun boy LIFEの記事で指摘されているが、ここでもKunkun bodyは活躍している。

ここに挙げた方々は自らのにおいに敏感なため、外部からの注意喚起がなくとも必要なにおいケアを素早く行う、何の問題もないユーザーたちである。しかし大変なのは、においにそこまで敏感でない人たちだ。

先ほどにおいに関するアンケート結果について触れたが、他人が気になるにおいを発している人の多くは、自身がそこまでにおいやそれに対するケアに高い意識を持っていない。そのような人たちがKunkun bodyといったにおいチェッカーを自ら買うことはあまりないだろう。職場におけるにおい対策は、この層の人たちにどのようににおいケアの意識づけを行っていけるかがポイントとなる。

Kunkun bodyのにおい測定時と結果表示の画面

そういうときこそ、企業側により快適な職場環境を提供する姿勢を持ってもらい、社員全員にKunkun bodyを提供してほしいと開発メンバーの方は語る。身だしなみを整える基本的な行動の1つとして、におい測定を行うことを職場で定着させる。「自分のにおいは気にならない」と言う人にこそ、自ら結果を知ってもらい自ら対策を取っててもらうことが、オフィスにおけるにおい問題を解決する一番の近道であると考えているようだ。

実際に、会社が社員に提供するという事例として、タクシー会社や派遣会社での実証実験が進んでいるという。接客業や客先に出向くことを主とする業界では、におい問題の対策に積極的なようだ。今回のタクシー会社を筆頭に、Kunkun bodyを検討している企業にとっては清潔感のある人材を持っているというPR効果にもある。

また福利厚生プログラムの一環として提供したいという企業から声も最近増えているという。におい測定は、身体の状態を知る1つの方法。実際に疲労度の高い社員ほど体臭・口臭も強くなると言われている。近年社員の健康管理を目的にヘルストラッキングのウェアラブル製品を導入する企業が増えているが、Kunkun bodyが同じ目的で導入されることも考えられる。

においを測定するという行為が働く人の新たな常識になる日がさらに近づきそうだ。

終わりに

今回の取材の中で、開発チームの方の言葉で特に印象的だったのは、Kunkun bodyを使って働く人に自信を持ってほしい、というものだった。「働くシーンにおいて積極的な行動を取れないということをなくしたい」「自信をなくした人に自信を持ってもらえるように」におい対策の先に働く人が得られるものは、この「自信」であることを知った。

におい対策の行き届いた働く環境こそ、業種にかかわらず万人に求められるものだろう。よりストレスの少ない、快適な働く環境が増えることを期待して、Kunkun bodyの今後を応援したい。

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この記事の執筆者

Kazumasa Ikoma オフィス業界における最新情報をリサーチ。アメリカ・サンフランシスコでオフィスマネージャーを務めた経験をもとに、西海岸のオフィスデザインや企業文化、働き方について調査を行い、人が中心となるオフィスのあり方を発信していく。

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