オンライン飲み会でどこまで交流が深まる?自宅待機中&ほぼ初対面の新入社員たちが実践してみた
[May 01, 2020] BY Hiroto Matsuno
政府による緊急事態宣言が発令され、多くの企業が社員のオフィス出社を抑えるためにテレワークを実施している。しかし、同僚と離れて自宅で作業する環境にいくつかの課題も見え始めている。過去3ヶ月にテレワーク勤務の経験がある男女計500名を対象としたアドビシステムズ株式会社の調査(2020年3月発表)によると、テレワークの心理的・身体的な課題として「同僚とのコミュケーション量が減ること」が最も多い回答として報告された。オフィスで行えていた仕事以外の何気ない会話がテレワークでは実現しにくい上、社内イベントや飲み会への参加機会も同時に失われることが要因の1つだろう。
今後も一定数の企業がテレワークを継続すると予測される中で、従業員同士の交流や社内連携の度合いを左右するコミュニケーションの課題をどう解決するかは組織づくりにおける議論の焦点になる。そこで筆者自ら、自宅待機中でも気軽に行えるとして話題の「オンライン飲み会」を実践。今回は筆者自身が入社後すぐに自宅待機を命じられた新入社員ということもあり、「人間関係がまだ構築できていない新入社員がオンライン飲み会を通じてどこまで親しくなれるのか」に焦点を置いた。実践してみて効果的だと感じた点、一方でやはり難しさがあると感じた点を正直にまとめる。
※参加人数:6名(新入社員5名と人事1名)
実践して発見した4つのこと
1. 顔を合わせる機会を増やすだけで、同僚への「好感」「安心感」は確実に増す(ザイオンス効果)
オンライン飲み会の一番のメリットは、社内の人との接触回数を増やせること。入社後すぐに自宅待機が始まった筆者たち新入社員は、同じ時間を共有する機会に恵まれていなかった。在宅でのオンライン研修では人事と定期的に連絡を取り合っていたが同期との繋がりを感じられず、ストレスと不安を感じていた。そんな中、オンライン上でお互いの顔を見ながら話せる時間は自分と同じ立場にある仲間の存在を強く感じることができ、安心感を覚えた。
また当然ではあるが、回数を重ねることでお互いにリラックスして話せるようになった。人は接触の機会が多いほど他人に好感を抱きやすくなることは、心理学では「ザイオンス効果」と呼ばれるが、オンライン飲み会は各社員が自己隔離を行う現状において、より多くの人とのコミュニケーション機会を創出するのに効果的だった。実際にオンライン飲み会をきっかけに、新人研修として与えられた課題にもより積極的に議論したり共有したりする機会をより自発的に設けることが増えた。さらにお互いのキャラクターをなんとなく把握できたことで「同期とうまくやれるのか?」という不安を直接一緒に仕事する前から払拭できた。
新入社員だけでなく、一般の社員にとっても現在のテレワークでは、仕事上で本当に必要とされる人としかコミュニケーションを取らない問題が起きている。オフィスで行われてきた偶発的な会話を生むきっかけづくりとして、オンライン飲み会を企画してみることはおもしろいかもしれない。
2, 一方で難しいのは、表情や仕草、ジェスチャーなど視覚的情報は捉えにくいこと
一方でオンライン飲み会は、居酒屋などリアルな場での飲み会と比較すると表情や仕草を通じて伝えられる情報量が格段に減少する。特にカメラ越しでは目を合わせてのコミュニケーションが成り立たず、かなりのストレスを感じた。他にも身振り手振り話しているつもりでも、実際にはカメラに入っておらず伝わっていないという場面も見受けられた。
先日の「ウェブ会議で得られない、リアル会議の“熱量”の正体とは?」記事で田中教授が話していたことと同じく、口から発せられる言葉以外の手段で伝える「非言語コミュニケーション」がオンライン飲み会では取りにくいことを強く実感した。オンライン会議でリアルな場での会議と同じほどの”場の雰囲気”を掴むことが難しいように、オンライン飲み会もまた”リアル飲み会”に取って代わるのはまだ難しい。
3. 「気づかい」をしたい人にとってはもどかしい。特に気にしない人にとっては楽
また筆者にとっては、話す相手とお互いのグラスやお皿が空いていないか確認できない点も気になった。オンライン飲み会では飲み物や食べ物を自分で用意できて気楽で良いという面もあるが、人間関係の構築が不十分な間柄ではドリンクの追加の確認など、気づかいが関係性の構築に一役買ったりする。その気づかいができない点にもどかしさを感じた。
逆にその気づかいを最初から気にすることなく、「楽しく楽に飲もうよ」という間柄で始めるのであればオンライン飲み会はおすすめだろう。人によって他人と仲良くなる方法はそれぞれ異なる。
4. 最も避けたいのは「沈黙」。長く感じ、つらい
オンライン飲み会で最も気になったのは、沈黙の時間が長く感じられたこと。家の中で行うオンライン飲み会は会話が途切れると周りが無音になる。居酒屋などで行われる飲み会は活気ある周囲の騒音により無音が気になるという事態は起きないが、オンライン飲み会ではふとした瞬間に気まずい空気が流れてしまう。音楽などのBGMを流すことで多少は気にならなくなったが、それでも会話が途切れる場面は気まずいものがあった。
最初こそ戸惑いを感じたように思うが、結果的に開始から30分もすればスムーズに会話を楽しめた。人間関係の構築がまだ進んでいない間柄だったからこそ感じたデメリットかもしれない。
結論:リアルに会える機会が訪れるまでの繋ぎの役割として効果的
オンライン飲み会に懐疑的な目線を持つ人も世の中にはいるが、上記の4つを考慮すると、社員間の交流を向上させることに置いてやはり効果的だと感じる。実際にオンライン飲み会を実践してみて参加者全員が思った率直な感想は「実際に会って飲み会を行いたい」というもの。リアル飲み会に取って代わることまではできないが、外出自粛の今できることとして、オンライン飲み会はおすすめしたい取り組みだった。
実際にオンライン飲み会に参加した人事も「通常時ならばやはりリアルで対面してコミュニケーションを図ったほうが効率的だ」と語りつつも、オンライン飲み会を実施する価値を認めていた。新入社員の同期間の人間関係をどう構築していくか頭を悩ませていたが、オンライン飲み会をリアルに会える機会が訪れるまでの繋ぎとして活用することでその効果は十分に期待できると正直な感想を語ってくれた。
おそらくだが、自粛が解禁された後もオンライン飲み会は使い方次第でその価値を活かすことができるように思う。関係性がないままリアルな場で対面するのは緊張する、またはリアルでの飲み会そのものに慣れがない人にとって、オンライン飲み会を通してお互いをある程度知った後に対面する流れはスムーズな人間関係を築く方法の1つとして必要とされるかもしれない。
おまけ:オンライン飲み会をスムーズに進行するためにできる工夫
1対1のビデオ通話ならともかく、人数が一定数を超えるオンライン飲み会を盛り上げるためには工夫が必要だ。実際、新入社員だけで行った初回のオンライン飲み会は盛り上がりに欠けた感が否めない。そこで、オンライン飲み会を盛り上げるためにできる工夫を2つ紹介する。
進行役を決めて話題の共有を行う
一度に複数人が話し出すと混乱してしまうのがオンライン飲み会の悩みどころ。進行役が不在の場合、誰が話し始めるか探る時間が発生し沈黙が生じる。オンライン飲み会における沈黙の辛さは先に述べた通りだ。しかし、今回の新入社員同士のような飲み会で進行役を決めるのは難しいものがある。そこで、人事や気心の知れた先輩社員に進行役をお願いすることも1つの手だ。今回お願いした人事の方も、飲み会の時間を有効に使えるとして快く引き受けてくれた。
また、話題を共有することもオンライン飲み会を盛り上げることにつながる。事前に話題をいくつか告知しておくと話す内容を事前に把握でき、参加への抵抗を減らせるだろう。お題としては簡単な自己紹介や好きな食べ物など簡単なものから、大喜利やしりとりなどのゲームも盛り上がる。関係性を考えたうえで相応しいテーマを決められると効果的だ。
画面の位置を割り振る
視覚からの情報を得にくいのもオンライン飲み会の難しいところだ。そこで、下記の写真のように開始直後は参加者それぞれの画面でバラバラになっている全員の配置を全員で統一して並び直し、その後話し手が聞き手の方向に顔を向けて話すようにした。誰に話しかけているかの情報を伝えることができるようになるし、ちょっとしたゲームをしているようで面白かった。細かいことだが視覚的な情報が少し加わるだけで画面越しのコミュニケーションのストレスを抑えることができる。
参加者全員でこの配置になるように並び直し、話し手は聞き手に対して顔を向けながら話すようにした。
まとめ
在宅勤務の状況下で、他人とのコミュニケーションが減ることは思った以上に私たちのストレスになっている場合がある。今回、新入社員同士でオンライン飲み会を行ったことで多少なりともその不安は解消することができた。同じように自宅待機を強いられてコミュニケーション問題を抱えるワーカーが多くいる企業ではぜひ試してみて良いかもしれない。
また、急速に広がるテレワークにストレスを覚える人が増えることも今後予想される。直接会って飲み会を開ければそれに越したしたことはないが、難しい場合にはオンライン飲み会を活用することもこれからのオプションの1つになるだろう。
この記事を書いた人
Hiroto Matsuno オフィス業界に飛び込んだばかりの20卒の新入社員です。オフィスデザインや働き方において素直に感じたことについて調査を行い、楽しく働いている人たちのあり方を発信していきたいと思います。
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