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「日本でアントレプレナーシップの文化を根付かせたい」小豆澤祐はどうやってアクセラレータになったのか【小豆澤祐インタビュー#1】

[October 24, 2017] BY Shinji Ineda

ここ数年の 500 startups や Plug and Play などの進出により、日本でもアクセラレータという言葉を日常的に聞くようになった。そこで今回はサンフランシスコでアクセラレータプログラムのマネジメントを行っている小豆澤祐(アズキザワ ユウ)氏にお話を伺った。

アクセラレータってなに? インキュベーターとの違いとは

ここでアクセラレータという言葉を聞きなれない方に、簡単に仕事の内容をご紹介しよう。「accelerator=加速者・加速装置・アクセル」という意味で、スタートアップの支援を行う組織や人のことを指す。支援の具体的な内容は主に4つだ。

①資金調達の機会創出

②プログラムによる企業成長の支援

③優れたメンターによるメンタリング制度

④卒業企業とのネットワーク提供

よくインキュベーターという言葉も聞くが、違いのひとつはプログラムの期間にある。毎年発表されるSeed Accelerator Rankings Projectにはアクセラレータの条件(2ページ目)として ” a fixed term “とある。つまりは一定期間でのプログラム実施を指しており、特にスケジュールを決めない(または長期)で活動するインキュベーターとの違いを明確にしている。またインキュベーターは、新しいビジネスやそれを行うための企業やチームを創出する(=incubate)ことを目的としているのに対し、アクセラレータは、既に存在するビジネスや企業の成長を加速させる(=accelerate)のを目的としている。わかりやすくいうと0から1を目指すのがインキュベーター、1から10を目指すのがアクセラレータである。

現在、小豆澤氏は来年日本へ進出を予定しているAlchemist Acceleratorに所属している。しかしここまでの道のりは紆余曲折あり、とてもドラマチックなものだった。

Alchemist Acceleratorは2017年のアクセラレータランキングでもGOLDより上位のPLATINUMに格付けされている。画像はSeed Accelerator Rankings Projectより引用。

大学3年の秋にアクセラレータのことを知る

「当時僕は貿易関係の勉強をしていたのですが、大学3年生の秋にアクセラレータのことを知り興味を持ちました。」と小豆澤氏はいう。大学3年の秋と言えば就職活動を控え、自身の人生の進路を決める重要な時期だ。そんな時、製品やサービスは国をまたいで取引されるのに対し、なぜアイデアは国境を行き来しないのだろう?と疑問を持ったことがきっかけだったという。海外のアクセラレータやスタートアップのことをもっと知りたいという思いが、そこから小豆澤氏を突き動かした。

オックスフォードで感じた意識の差

在学中で自身の授業を抱えていたものの、将来のために語学を学ぼうと考えイギリスへと渡った小豆澤氏。一ヶ月を期限として昼間は語学学校へ通い、夜は更に自らの英語力をあげるべく、積極的に外出をして交流をはかっていた。そんなとき偶然の出会いがある。「バーでたまたま隣に座っていたのが、オックスフォード大学の学生だったんです。そして色々と会話を交わしていく中で、授業に誘ってもらえることになりました。正確には潜り込ませてくれたという感じですが(笑)」と小豆澤氏は当時を振り返る。皆さんご存知の通り、オックスフォード大学は英語圏で世界最古の大学であり、世界の中でも常にトップレベルの大学として高い評価を得ている名門校である。貴族の大学としても有名で、世界を牽引する著名人も多く輩出している。イギリスの現首相であるテリーザ・メイ氏もその一人だ。

オックスフォード大学。Photo by delfi de la Rua on Unsplash

偶然の出会いから話は弾み、オックスフォードの授業に潜入した小豆澤氏は、そこで衝撃を受けた。「教授は席に座るなり、その日の授業の概要を簡単に説明しました。すると、ある学生が自身の予習の内容と意見を述べ始めました。そこから次から次へと他の学生も続いていって、あっという間に授業は議論の場に変わっていったんです。」まさにカルチャーショックだった。教授はファシリテーションを行うのみで、勝手に議論は進んでいく。欧米には「Show and Tell」という教育科目がある。一般的に小学校低学年で実施されることが多く、自宅から持参したものを見せて、それについてみんなの前で話をするという内容だ。この公述を学ぶための授業により、スピーチ力が身につき、また自分の意見を主張し議論をするスタイルが小さな頃より根付くのだ。

Show and Tell の授業の様子

その様子に日本の学生との意識の差を大きく感じ、小豆澤氏は日本の大学を卒業後に、海外へ学びの場を移すことを決意する。

日本では得られなかったドバイでの経験

小豆澤氏はハルト・インターナショナル・ビジネススクール(以下 Hult IBS)に進学する。Hult IBSは1964年に世界最初の経営戦略コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルによって設立されたビジネススクールだ。現在はボストン・サンフランシスコ・ニューヨーク・ロンドン・ドバイ・上海でスクールを運営している。5学期制の同校ではキャンパスを選択できるようになっており、小豆澤氏はホームキャンパスであるボストンの次に、サンフランシスコで生活を送っていたという。そんな折にある団体から声がかかる。きっかけはLinkedinだった。Linkedinにはプロフィール欄に肩書を記載する項目があるが、当時小豆澤氏は「将来なりたい姿」をそこに記載していたという。そして「アクセラレータ」という肩書に興味をもったのが、ドバイの政府機関であるDubai Silicon Oasis AuthorityDubai Technology Entrepreneur Centreだった。キャンパスがあったこともあり、小豆澤氏はビジネススクール最後のキャンパスをドバイに決めた。半分笑い話のようだが、将来への確固たるビジョンが思いもよらない機会を生んだのだ。

ビジネススクールに通いながら得たドバイでの経験は、その後のキャリアに向けて大きな意味があったという。「実はドバイにはドバイ出身の人は20%しかいません。だからドバイのスタートアップは海外に展開することを前提としてビジネスを考えます。」2015年のUnited Nations Population Division による移民数の動向調査(Trends in International Migrant Stock: The 2015 Revisionより引用)によると、米国が46,627,102人とトップで、次いでドイツ、サウジアラビアとなっている。ドバイが首長国の一つを務めるアラブ首長国連邦は8,095,126人と、数でいえば米国の1/5~1/6であるが、そもそも人口が約910万人であることを考えると、移民がどれほど多くの割合を占めているか分かるだろう。

「現在の日本のマーケットは大きいですし、日本のスタートアップは国内向けのサービス構築がまだまだベースとなっている印象です。そのため海外展開を見据えたビジネス構築をベースとする考え方は、日本にいたらおそらく触れることができなかったと思います。」ドバイだったからこそ得られた経験だった。

その後、米国に戻った小豆澤氏。アルケミストアクセラレータとの出会いと、現在の働き方や考えについて次号でお届けする。

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この記事を書いた人

Shinji Inedaフロンティアコンサルティングにて設計デザイン部門の執行役員を務める。一方、アメリカ支社より西海岸を中心としたオフィス環境やワークスタイルなどの情報を、地域に合わせてローカライズ・ポピュラーライズして発信していく。

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