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福岡発のスタートアップ、Nulabのニューヨークオフィスに訪問してきた

[July 07, 2017] BY Shinji Ineda

2004年に福岡で創設されたヌーラボは、プロジェクト管理・コラボレーションツールのBacklog、チャットツールであるTypetalk、そしてWeb上でサイトマップやワイヤーフレーム、UML、ネットワーク図など構成図を作成できるツール、Cacooを3本柱とし、世界に向けたサービス展開を行っている。

アプリやサービスを開発する際に、「まずは国内ユーザーを取り込もう」と考えているケースが多い中、ヌーラボは海外ユーザー数を着々と増やしている。

今回はヌーラボのニューヨークオフィスに訪問した。ここは海外市場を開拓するための重要な拠点である。これまでのオフィスの遍歴や社内のエピソードなどを通して、現地で働く山本氏と合嶋氏の考え方やワークスタイルについて伺った。

進出時にWeWorkへの入居を決めた理由

WeWorkとはニューヨーク発のコワーキングスペースで、欧米各国をはじめ最近は韓国や中国にも進出している。2017年で世界15ヶ国44都市に140ヶ所を運営しており、洗練されたオフィスデザインに加え、世界中のWeWorkの入居者コミュニティーに参加できることが魅力のひとつとなっている。

ファウンダーの3名はニューヨークに来た際にビジネスの可能性を見出し、この都市に拠点を持つことにした。WeWorkの家賃は少し割高だが、デザインもこっているし、アメニティも充実している。また一般的な事務所のレントは3年リースなので、1か月単位で契約を調整できる点は魅力的と考え、進出当初からWeWorkへの入居を決めた。

ニューヨーク進出した際にヌーラボが入居したWeWork City Hall(写真はWeWorkより引用)

その後は一度、別のコワーキングスペースに移り、あらためてWeWorkに戻るか、それとも自分たちでオフィスを借りるかという選択肢から、長期的なメリットを考えて現在のオフィスを選んだ。

渡米して2年になるエンジニアの山本氏は「最初はやれることも少なかったが、自分たちでオフィスを借り、人数が増えてきて、色々なことが完結してできるようになってきた。ようやくこれからだなという感じです」と、新たな場所でゼロからチームを作る楽しさを語った。

現在のヌーラボのオフィス。14名のスタッフがここで働いている。

作り手が売る場に身を置かないと、売れるものはつくれない

ニューヨークの拠点では、主に海外のマーケティングと海外向けアプリの開発を行っている。グローバルマーケットを狙ったマーケティング施策をアメリカで行う一方で、開発は日本というスタイルが日系企業でよくみられるが、ヌーラボは開発も現地で行うことにこだわりがある。

ユーザーがこっちにいるのであればこっちで作らないと売れるものはつくれない。アメリカは誰もが認めるテックの最高峰の市場。生半可の気持ちでは通用しない

確かに現在日本とアメリカではエンジニアの人件費には大きな開きがある。しかし開発コストのみで比較するのではなく、人件費が高いのはその分優秀な人が多く、そのような人たちをしっかりまとめていく統率力がないと戦えないという考えからだ。

ニューヨークからサンフランシスコやシリコンバレーのある西海岸は、どのようにみえるかも聞いてみると、「テックのメッカであると思うし、今でもエンジニアとして挑戦したいという気持ちは変わらず持っています」と山本氏は西海岸への憧れも素直に述べた。

GoogleやFacebookのような大手テック企業がニューヨークに進出したことで、ニューヨークのテック業界が盛り上がったという見方もある。西海岸から来た優秀な人材がニューヨークのスタートアップへ転職することも多いとのこと。

インタビュー中の合嶋氏(左)と山本氏(右)

またサンフランシスコやシリコンバレーとは異なる魅力があるとも話す。「ニューヨークは飲み場やエンターテイメントがたくさんあるので、その生活を楽しんでいるエンジニアもいます。」アメリカ国内でみればスタートアップ2番目の市場。シリコンバレーの魅力もたくさんあるが、投資家のなかにはニューヨークと西海岸のVCを両方掛け持ち、徐々にニューヨークをメインにしていくというケースも増えてきているとのことだ。

また最近ではテキサスも賑わってきているらしい。「人件費のメリットもあるが、人口規模があり、ハブとして利用できる空港もある。日本でいえば福岡みたいな感じではないでしょうか」テキサスはアメリカ中央南部に位置するが、面積は日本の国土の約2倍、人口もカリフォルニア州に次ぐ規模を誇っている。物価も安く、近年多くの企業がテキサスへの進出を検討している。

現在、ヌーラボがオフィスを構えるのはNOLITA地区である。SOHO地区と隣あっており、セレクトショップや雑貨屋が立ち並ぶ地元ニューヨーカーにも人気のおしゃれな場所だ。実際周辺を歩いてみるとカフェやレストラン、個性的なお店もあり、若いエンジニアにとっても働きやすい環境と言える。「オフィスを作る際は色々大変なこともありました」と当時を振り返る。「内装工事をするのに法律的な手続きの手間が日本より大きくかかる。上手に計画と手続きをしないと、工事代より申請許可をとるための費用がかかってしまう」アメリカのオフィスでは原状回復がおこなわれず、現状引き渡しが好まれるのも、その手続きの大変さが理由のひとつにあるという。規模感によって状況も異なるが、小中規模のオフィスでは、申請・設計・工事の3つをしっかり行える会社を探すことが、まず一つ目の課題になるという。(左写真:NOLITA地区のBowery Streetに面するオフィスの外観)

トイレのサインを巡って起きた議論

また運用を始める段階でこんな事もあったという。入居を控え、1つしかなかったトイレを男女で使えるように、もう1つ増設したそうだ。その後、それぞれに男女のサインをつけようとすると、「男女別々ではなくユニセックスでいいじゃないか」という意見があったという。別々を望む人もいたので社内でよく話し合い、現在は男女区別なく利用しているとのことだ。「せっかく2つにしたのに、結果的に1つでよかったですね」とにこやかに話されていた。(右イメージ:話し合いの中ではユニセックス用のサイン設置も検討したという。)

仕事は8時間でおこない、その中で評価されるもの

やはり気になるのはアメリカでのワークスタイル。働く時間や生産性の意識などはどうだろうか?

「そもそも働かないです」と両名は顔を見合わせながら会話が始まる。「8時間で帰宅するアメリカ人は生産性が良い、と考えるのは日本視点です。国ごとで文化や社会のルールに違いはあるが、仕事は8時間で出来るもので、それに10時間をかけているのが日本という見方も一方である」当然成果が伴わなければクビにされるし、辞めていくというのが当たり前にあるとのことだ。転職自体も日常的なので、面接では解雇や退職の理由もあまり聞くことはないという。

採用時には逆に気にすることもあるという。「キャラクターフィットですね。うちの会社はカルチャーが強いので、そこを一番気にしています」いくらレジェメで確認しても辞める人は辞める。「本当に辞めるんだなっていうのが、ファウンダーの一番のカルチャーショックだったんじゃないかと思います」常に人の流動を想定しておく事、キャラクターとカルチャーのフィットが有意義な時間生み出すという事。この2点が採用において、とても重要な視点であると言える。

社内のミーティングルーム。透明感があり開放的な空間。

ビジョンは必ずというほど聞かれる

マネジメントに求められる部分の違いもあるという。「ビジョンを示してほしいと思っている人は日本より多いと思う」実際に面接時も、ビジョンについての質問が一番多くあるとのことだ。入社時からビジョンを共有し、組織と自身の方向性を常に照らし合わせていく事が、自身の転機を見極め、ストレスなく成長していくためのポイントなのであろう。

現在、構成図作成ツールのCacooは、コロンビアなどのサウスアメリカやメキシコのユーザーが多いという。日本も含めてどのような点がユーザーから評価されているかについて、山本氏はこう述べた。「私たちが作っているのは仕事のツールですが、楽しく仕事がしたくて。そういうところは大事にしたい。元はエンジニアとして自分達のために作り始めましたが、エンジニアでない人達にも、チームとして様々な方々に使ってほしいと思っています。またそうゆう思いが評価されている点だとも思っています」日本からニューヨークに活躍の場を移したからこそ、世界共通で必要な価値観を感じ取っている。

社内に設置されているビールサーバー。楽しいオフィスにしたいという気持ちを象徴しているように感じた。

Cacooは2015年8月より教育現場に向けてエデュケーションプランを提供しており、それが新たなユーザー発掘のきっかけになっているとも言える。今後どのようにサービスが広がり、新たな展開を見せていくか。またそれを支えるオフィスがどう変化していくのか、とても楽しみだ。

参考:nulabWeWork

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この記事を書いた人

Shinji Inedaフロンティアコンサルティングにて設計デザイン部門の執行役員を務める。一方、アメリカ支社より西海岸を中心としたオフィス環境やワークスタイルなどの情報を、地域に合わせてローカライズ・ポピュラーライズして発信していく。

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