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【Seth Hanleyインタビュー#2】blitzデザインの裏にある「リサーチ力」を紐解く

[August 08, 2017] BY Kazumasa Ikoma

Design BlitzのPrincipal兼Creative DesignerのSeth Hanley氏へのインタビュー2作目。第1編では彼の手がけたオフィスデザインを紹介したが、続編となる本記事では、そのデザインを支える彼らの「リサーチ力」に焦点を絞っていく。人々に本当に使われるようなオフィスをデザインするためには何を知る必要があるのか。社員に認められるデザインの秘訣を紐解いていく。

なぜデザインにデータを求めるのか

オフィスデザインは文化がベースとなって作られるものなので、私たちはまず企業の文化を知るところから始めます。そしてその「文化を知る」という行為はデータ収集を基に行います。デザインはそのデータに付随するもの、という解釈でいいでしょう。私たちにとってオフィスデザインとはそのような情報を元に、顧客にスマートソリューションを提供するという行為なのです。

そのため、リサーチは私たちのデザインプロセスの中でも一番の核となっています。顧客は、私たちに依頼してくる段階で、必ず何か問題を抱えています。その問題を明確にし、突き詰めていけるデザインソリューションこそ、彼らが必要としているものです。「ただかっこいい」で終わってしまうデザインとの違いはここにあります。

Blitzが行う、段階ごとのリサーチプロセス

リサーチには異なるレベルがありますが、一番基本的なものはオフィス全体で10個程度の質問を入れたアンケートを取ることです。その結果から、会社全体を通して抱えている問題や共通点みたいなものが見えてきます。もちろん大企業ほど膨大なデータ量となりますが、それでも社員一人ひとりが抱えている問題を一つずつ見ていくことが大切です。

今様々な企業で見られる3-5人用のミーティングスペース。写真はSoundcloundのニューヨークオフィス。このような小規模のミーティングスペースの需要は多くの社員から聞かれた。
ロンドンにあるZendeskのオフィス。かつてオフィスの近くにあり、現在は焼失してしまったバーを復刻。社員に親しまれた当時の雰囲気を惜しむ気持ちと敬意を表すために、焼杉板を用いている。社員に話を聞いてみると、このようなことまで共有してくれる。

それから部長等の管理職を集め、もう少し具体的な質問を投げかけていきます。自分の部署の社員がどのように働いているか、また彼らがどのように働きたがっているか、部長としてどのようにチームに動いてほしいか、他にどの部署とどのようにして共働することが多いのか。こういった機能的な面での質問を行なっていき、現場にいる社員の働きやすさを追求していきます。彼らは自分の部署にいる社員一人ひとりの声を比較的聞きやすい立場にいながら、部長としての責任とチームとしての働き方の理想を持っているので、社員の個人的な意見と会社としての観点両方を効率よく聞くことができます。

また会社の上層部とも話をし、会社のビジョンについて聞いていきます。会社についてどのようなイメージを持っているか、今、5年後、10年後のビジョンは何か、他の都市にもオフィスがある中でこれからデザインを行うオフィスにはどのようなことを期待しているのか、社員には職場でどのように感じてほしいのか。彼らにはフィーリングを重視した質問が多いですが、これもまたデザインを形作るには非常に重要な要素の一つなのです。ふんわりとしたイメージを持つ企業にいかに具体的なイメージを持ってもらうか、そしてそれをどのようにデザインを通して形あるものに落とし込むか、ここがオフィスデザイナーとしての腕の見せ所です。

これからも世界のテクノロジー企業を牽引していくというビジョンで作られたMicrosoftサンフランシスコオフィス。顧客重視の最新テクノロジーを展開していくというイメージのもと、ショールームのような作りが心がけられたほか、外からも中の空間が見れる「透明性」を意識してデザインされた。

このように社員との会話を一通り終えた後に、実際のオフィスの観察を行っていきます。会議室予約システムのデータを提供してもらい、ミーティングルームの使用量の確認をするほか、オフィスの備品の使用具合やオフィスに置いてあるスナック菓子の消費量のデータまで時には集めます。こうして実際の使用データと社員の話から聞いた自己申告の情報を比較してみると、どこかでズレが生じている部分が見つかるのです。社員は特定の種類の部屋が複数欲しいと要望を送ってきますが、使用方法やこのようなデータのズレをみてみると、本当に必要なのは実は違うタイプの部屋だったりして、結果的に他の解決策が見えてきます。データを駆使し、様々な角度から問題を見ていくことで新たなソリューションを提供できることもあるのです。

解決すべき、一番大切な問題を見つけていくには特定の問題を深く掘り下げていくことが重要になりますが、そこに至るまで試行錯誤し、様々なデータに目を付け、社員のリアルな声に耳を傾けよく考える必要があるのです。

クラウド上でのコミュニケーションツールを展開し、企業によりイノベーティブな環境を提供することを掲げるTwillioのサンフランシスコオフィス。「最大の難問を解決するには、常識にとらわれず憶測でものを語らないこと、そして正直で直接的で透明性のあるソリューションを追求すること」という企業信念を掲げている。それに合わせ、オフィスには通常の部屋とは異なる、ドアも天井も持たない、開放的で透明性を表現できるミーティングルーム「Un-room」を配置(画像2枚目)。綺麗に整えられた線、素材むき出しの作りやオーダーメイドの材料で作られたオフィスは、Twillioが求める、シンプルで効果的なソリューションの理想だと高く評価された。

忘れてはいけない、業界で異なる働き方トレンド

これまで社内リサーチの説明をしてきましたが、実は業界によって変わる、働き方やオフィスのトレンドも同時に熟知していなければなりません。この業界ではどういったオフィスが一般的なのか、どのような顧客と何人規模でミーティングすることが多いのか、等の調査が含まれてきます。それに合わせて、今注目を集めているテクノロジー業界のオフィスデザインをどの程度取り入れたら良いのか、という目安がわかるのです。社内調査で会社のことを学んでいくと同時に、企業のまわりで今どういったことが起きているのかを把握することも重要なのです。

オフィスデザインにおいてサプライズは厳禁

このように社員や管理職、上層部を含めた会社全体とのインタラクションを通じて得たヒントをデザインに落とし込みます。それが結果として、企業のマネージメント方法を改善する鍵になります。社員と話し合いながら良いと思ったものを積極的に取り入れる姿勢を私たちが見せていき、そのデザインを積極的に使うような姿勢が社員に見られれば最高の関係と言えるでしょう。

オフィスデザインにおいてサプライズは禁物です。誰のためにもならず、誰も好みません。何がどこにあるのか、どのように使うのか、これはデザイン段階から常に共有できていないといけません。デザインの施工が終わって社員が入れる準備ができたその日から、論理的プロセスに基づいて作られた新しいオフィスが持つ、そのポテンシャルをすべて引き出してもらうことが理想です。

Blitzでは顧客とデザイン案のすれ違いが起きないよう、VRを使って完成予想図を見て回れるようになっている。

オフィスがどのように見えるかはすべて、オフィスがどのように機能するかを表現していなければなりません。そしてその機能が企業文化に貢献していることを顧客と一緒に確認することで、オフィスデザインが企業の成長と密接に関わっていることを実感するのです。

オフィスの完成後、顧客が中を歩いた時に、この部分はなぜこのようにデザインされたのか、その意図をしっかりと理解してもらいたい。データに基づいて入念に構成されたオフィスデザインは、顧客に喜びと実感を与えるものなのです。

第3部に続く)

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この記事を書いた人

Kazumasa Ikomaサンフランシスコのエクスペリエンスデザイン会社btraxでオフィスマネージャーを務める傍ら、西海岸のオフィスデザインや企業文化・働き方についての記事を多数執筆。企業や従業員にとって居心地がよいオフィスとは何か、日々リサーチし自社で実践している。

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