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北欧が先導する、屋外オフィスの未来とは?

屋外で働くスタイルは、大半の人にとって目新しいことだと考えられている。北欧の調査によると、屋外で働くことを当たり前にするためには、一層の努力が必要であるという。

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屋外で過ごすことは、一種のトレンドでもある。新型コロナウイルスとの闘いやロックダウンをきっかけに、多くの人が屋外で過ごす時間の大切さを実感するようになった。現在では、屋外で過ごす時間がワークプレイスにメリットをもたらす可能性について、いくつかの調査が進められている。

屋外オフィスを定期的に利用することで、働く人はより健康的に感じ、注意力が高まるのみならず、積極的になり、ストレスが軽減されることが調査で分かっており、働く場所の考え方を見直すことは、大きな意義がある。

メンタルをケアし、休ませる

屋外で過ごすプラスの効果は、長年にわたる学術研究でも明らかになっている。2000年代初頭、日本のある研究チームは、疲れ切った人が森林を散歩したときに体内でどのような変化が起きるかについて調査を始めた。散歩の前後の変化を比較すると、長期的な効用は驚くべきものだった。森林を散歩した後では、免疫システムが強化され、ストレスホルモンが減少し、認知能力が向上することが分かった。つまり、自然は脳を休ませる場所だと言えるのだ。

注目のワークスペース

北欧では現在、屋外で過ごすプラスの効果や楽しさをワークプレイスに取り入れる可能性について、いくつかの調査・研究が進められている。メーラダーレン大学社会学部教授でストックホルム大学准教授のSusanna Toivanen氏は、「調査によると、自然のなかで過ごすと人は気分がよくなり、共感力や協調性、幸福感が高まります」と話す。

自然にはこうした効用があるにもかかわらず、北欧の人々は1日平均80~90%の時間を屋内で過ごしている。オフィスワークは屋内で行うことが一般的なため、そうした統計結果となっているのだ。とはいえ、働く場所が屋内である必要はない。実際、屋外の自然のなかでできる業務はたくさんある。「屋外で働くと、創造性が高まる、新鮮な空気を吸える、貴重な日光を浴びられるといったメリットがあり、働く人は、仕事の質が向上すると感じるかもしれない」とToivanen氏は説明する。

睡眠の調節

屋外で働くことが推奨されるのは、暖かい季節に限らない。むしろその逆だ。Toivanen氏は「特に1年のうちでも暗い時期は、日光をできるだけ多く浴びる必要があります。その量が少なすぎると、よく眠れなくなり、日中に疲れやすくなってしまうからです」と話す。屋外で働くことは、ストレスレベルを下げ、心身の回復力を高める効果があり、多くの人が病気休暇を取らざるを得ないような昨今の目まぐるしい就業環境下ではプラスに働く。

屋外オフィスの始め方

「屋外就業を導入したい企業にとって重要なのは、マネージャーや他のリーダー層が、社内で情報を提供して推奨し、自ら実践することです」とToivanen氏は述べる。「テラスやその他の屋外環境など、利用可能なスペースを事前に決めることも大切です。自然のなかで電話や仕事、会議をすることが当たり前の企業文化を醸成することは、従業員の健康に多くのよい影響をもたらします」

スウェーデンでファシリティマネジメント事業を展開するCoor社のKajsa Högdahl事業開発部長も同意見だ。「ワークプレイスサービスを提供する企業にとって、屋外オフィスを広げていくことは重要です。日常生活で心身を回復する機会が今、ますます減っているからです。体を動かしたり、環境を変えたり、もっと言えば、1日のうちで屋外で働く時間を持てたりすれば、多くのことを得られるはずです」

もう一歩先へ

企業は、対処を避けられない世界的な不安定要素を多く抱えている。そのうえ、北欧で働く人の3人に1人は、自らのニーズが満たされなければ転職を検討するという調査結果もある。企業は、よりよい経験や多くのサポートを従業員に提供することが求められている。従業員が屋外で働けるように門戸を開くことがその第一歩になり得るが、ワークプレイスのあり方についてさらに掘り下げて考えることも必要だろう。


※本記事は、Worker’s Resortが提携しているWORKTECH Academyの記事「Are outdoor offices the future? The Nordics lead the way」を翻訳したものです。

この記事を書いた人:WORKTECH Academy Reporting

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