【インターンシップ】Shopify、Spotify、Grabに学ぶ、実務志向の制度思想
日本のインターンシップ制度は2022年の制度改正を経て、再定義のフェーズに入った。本記事では、日本の制度改革を起点に海外事例を参照し、インターンシップを「学習と実務の接点」として捉える設計思想を読み解く。海外の制度をそのまま導入するのではなく、日本の文脈に合うようにどう“翻訳”するか──。これからのインターンシップのあり方を展望する。
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尾尻知奈美/おじりちなみ
ニューヨーク在住10年以上。空間デザインの仕事に携わりながら、「Worker’s Resort」では海外視点で働き方やワークプレイスに関する記事を執筆。かつてはフロンティアコンサルティングのデザイン部で、オフィスづくりの現場も経験。
「インターンシップ」を再定義。日本の今

日本のインターンシップ制度は大きな節目を迎えている。政府は2022年6月、「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」を改正。関連施策を目的や内容に応じて「タイプ1~4」に整理し、実務性と教育性を備えた「タイプ3(汎用的能力・専門活用型)」と「タイプ4(高度専門型)」を「インターンシップ」として明確に位置づけた。
日本のインターンシップはこれまで、職業経験の提供というより、企業や業界を知る機会、あるいは採用選考前の早期接点と位置づけられることが多かった。期間も1日~数日と短期プログラムが一般的で、「実際の業務内容や働き方が十分に伝わりにくい」「学生の適性や志向を見極めづらい」といった課題が指摘されてきた。その結果、インターンシップは「選考へのステップ」と広く認知される傾向が強まった。
こうした背景から2022年の制度改正に至り、先の4つのタイプのうち、タイプ3では、一定期間以上の就業体験や社員による指導・フィードバックの実施が要件に。実務への理解を重視した設計が求められるようになった。
「インターンシップ」の再定義が進む日本。その現在地を捉えるために、実務型・育成志向のインターンシップを運用してきた海外事例を参照していきたい。
実務重視で採用と連動する、海外のインターンシップ制度

海外のインターンシップは、どんな設計思想のもと運用されているのか。事例を見ていくと、一定の役割と責任を伴う「学習と実務の接点」という共通項が浮き上がる。
「実務に近い業務」「正社員に近い働き方」「有給が前提」。海外のインターンシップはこうした設計が主流だ。プロジェクトの一部を担わせるなど、インターンシップ生だからといって必ずしも特別扱いするわけではない。
筆者自身も北米での留学後にインターン生として働いた経験がある。実際の業務では、正社員と完全に同じ役割ではないものの、プロジェクトの一員として作業を進め、ミーティングやプレゼンテーションにも参加。一定期間をかけて企業とインターン生が相互に見極める「実務を伴う選考プロセス」に近い位置づけだった。
応募プロセスも本採用とほぼ同じ。レジュメ(履歴書や職務経歴書)やポートフォリオの提出に加え、場合によってはカバーレター(応募書類に添付する、志望動機や自己PRなどを記載した添え状)や推薦書まで求められた。
これらの背景には、高評価だったインターン生に本採用の内定を出す「リターンオファー」の仕組みがある。企業によっては、インターン期間を相互理解や適性確認の場と位置づけ、本採用を前提に評価したり、選考の一部に組み込んだりして設計しているのだ。
【Shopify】主体性を問う、“任せる”インターン

カナダの多国籍eコマース企業・Shopifyのインターンシップ制度は、インターン生が実際のプロジェクトに関わることを前提に設計されている。エンジニアリングやデータサイエンスといった職種別に募集が行われ、コード設計や実装、分析、大規模なデータパイプラインの運用など、正社員と連続した実務を想定。インターン生が開発した機能や改善案がプロダクトに反映された事例もある。
採用プロセスは、書類選考に加え、技術的な課題への取り組みや面談など、段階的に行われる。ここでは、技術的な正答や完成度より、課題へのアプローチや考え方が重視される。一定のスキルと同時に、自律的に学び、判断する力が求められていることがわかる。
Shopifyのインターンシップ制度は、学生を細かく管理するのではなく、「任せたうえで支える」ことを重視している 。裁量と支援のよいバランスで、学生自身が主体的に考えて動ける余地を広げる仕組みと言えるだろう。
【Spotify】関係構築の入り口。10週間にわたる独自プログラム

スウェーデン発のデジタル音楽ストリーミングサービス大手・Spotifyのインターンシップは、学生を「一時的な労働力」ではなく、組織に参加する存在として迎え入れる、という思想から設計されている。インターンシップを“career(キャリア)”と“connection(つながり)”の2軸で捉え、将来に向けた関係構築のプロセスと位置づけている。
インターン生は、エンジニアリング、プロダクト、デザイン、マーケティング、データサイエンスなど複数の分野で募集。期間は10週間程度で、プロジェクトに取り組む。ここで重視されているのは、成果物の完成度だけでなく、チームの一員としての関与、学び、対話のプロセスだ。オンボーディングや各ツールへのアクセスなど、インターン生を対等な「参加者」として扱う姿勢も貫かれている。
また、同社はインターンシップ制度を、長期的な人材育成・タレントパイプラインの一部と捉えている。インターンシップ経験は、その後のキャリア形成や採用機会に接続させ、将来の組織を担う人材との継続的な関係づくりの入り口として位置づけられているのだ。
【Grab】リアルな“現場”から学ぶ、実務志向型インターン

シンガポールが拠点で東南アジアを中心にスーパーアプリを展開する、Grab。配車、フードデリバリー、モバイル決済、日用品の配送といった日常サービスを1つのアプリに統合し、数千万人規模のユーザーや多様なサービスパートナーとの接点を持つプラットフォームとして機能させている。そんなGrabのインターンシップ制度は、学生が各事業に入り込み、課題に向き合いながら学ぶ機会として設計されている。
制度の主旨は、“it’s a hands-on adventure(手を動かしながら挑戦する経験)”。インターン生は、日々の業務や実際のプロジェクトに参加する当事者として位置づけられ、業務を通じて学ぶ姿勢そのものが求められる。
また、事業と生活の距離を意識的に近づける「イマージョンプログラム」と呼ばれる体験設計も。このプログラムでは、インターン生がオフィス業務にとどまらず、たとえばデリバリーの現場に立ち、実際の配達プロセスを体験する機会が組み込まれている。こうした取り組みは、サービスが数値や計画上の理想ではなく、実際の運用やユーザーの行動と密接に結びついていることを理解する助けとなる。
Grabのインターンシップ制度は、学生を単に「学ぶ側」と切り分けるのではなく、企業活動の現場に招き入れる設計だと言える。インターン生はプロジェクトへの参加を通じて、自身の成長を実感するとともに、事業と日常生活との結びつきや、事業の判断や運用の積み重ねを内側から理解する機会を得ることができる。
制度を“翻訳”し、日本へ
ここで見てきた海外事例は、日本にそのまま導入できるわけではない。しかし、その背景にある「学生をどのような立場として迎え入れるのか」という制度思想に目を向けてみる価値はある。
日本の雇用慣行や大学教育の構造を踏まえながら、制度を適切に“翻訳”していくこと。そのような観点から、制度改正後のインターンシップをどのような「関係性の場」として育てていけるのか。インターンシップを巡っては、そうした問いを再考する時期に差し掛かっているのではないだろうか。
- 【参考URL】
- 厚生労働省. (n.d.). インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進について. Retrieved December 19, 2025, from https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/content/contents/001265743.pdf
- 日本経済団体連合会. (2022). 産学協働による自律的なキャリア形成の推進(リーフレット). Retrieved December 19, 2025, from https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/039_leaflet.pdf
- Shopify. (n.d.). Shopify internships. Retrieved December 19, 2025, from https://internships.shopify.com/
- Shopify Engineering. (n.d.). Shopify engineering internship guide. Retrieved December 19, 2025, from https://shopify.engineering/shopify-engineering-internship-guide
- Shopify Engineering. (n.d.). Shopify interns share their tips for success. Retrieved December 19, 2025, from https://shopify.engineering/shopify-interns-share-their-tips-for-success
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- Spotify HR Blog. (2025). Spotify’s internship program in a time of transformation and AI. Retrieved December 19, 2025, from https://hrblog.spotify.com/2025/06/27/spotifys-internship-program-in-a-time-of-transformation-and-ai
- Spotify HR Blog. (2024). How Spotify’s internship program is shaping tomorrow’s innovators. Retrieved December 19, 2025, from https://hrblog.spotify.com/2024/09/17/how-spotifys-internship-program-is-shaping-tomorrows-innovators
- Grab. (n.d.). About us. Retrieved December 19, 2025, from https://www.grab.careers/en/about-us/
- Grab. (n.d.). Internships at Grab. Retrieved December 19, 2025, from https://www.grab.careers/en/teams/internships/
- Grab. (n.d.). Beyond work responsibilities: Intern immersion programme. Retrieved December 19, 2025, from https://www.grab.careers/en/blog/culture/beyond-work-responsibilities-intern-immersion-programme/
- Grab. (n.d.). インターン向け没入型プログラムに関する紹介記事. Retrieved December 19, 2025, from https://sg.wantedly.com/companies/grab/post_articles/318781