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改めて考えるSDGs。会社規模別、オフィス運営における3つの成功事例

SDGsの普及が国内外で進む中、導入の必要性を感じつつ着手できていない企業は少なくない。今回はオフィス運営でのSDGsの取り組みに的を絞り、3社の成功事例を紹介する。

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改めて「SDGs」とは何か?

「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称である「SDGs」。2015年9月、ニューヨークの国連本部で開催された「国連持続可能な開発サミット」で、2016年から2030年の15年間での達成が掲げられたグローバル目標だ。2020年は、新型コロナウイルスの影響で世界が大きく揺さぶられる年となったが、SDGsの達成予定まで10年を切ったことになる。そんなタイミングの今、改めてSDGsについておさらいしておきたい。

SDGsの具体的な内容は、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で示されている。17の目標と169のターゲットを盛り込んだこのアジェンダのねらいは、2030年までに貧困に終止符を打ち、より持続可能な世界を構築するための行動に拍車をかけること。「経済成長」、「社会的包摂」、「環境保護」という3つの要素に焦点を絞って目指すべきことを伝えている。

sdgs-goals

SDGsポスター(画像は国際連合広報センターのウェブサイトより)

こうした、経済・社会・環境の3側面を統合する概念と併せてSDGsが画期的なのは、「全ての国に目標が適用されるユニバーサリティ(普遍性)があること」、「分野横断的なアプローチを必要とすること」、「グローバル・パートナーシップが重視されること」であると、環境省の『環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書(平成29年版)』では述べられている。

SDGsには193もの国連加盟国が同意しており、全世界で支持が広がっているが、その背景には数値目標を定期的にモニタリングする「国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF:High Level Political Forum)」の後押しもあるだろう。

SDGsの存在は知りつつ、導入していない企業は約半数

SDGsの普及を受け、企業活動においても「世界のために、人々の暮らしの向上のためにできることをする」という考え方がグローバルスタンダードになりつつある。そのため、CSR(corporate social responsibility:企業の社会的責任)をSDGsに関連付ける企業も目立ってきた。

例えば、スターバックスコーヒージャパン株式会社では、2020年1月に紙製のストローの使用を段階的に開始し、3月には全店約1,500店舗に導入。この素材変更により、年間約2億本分のプラスチックストローの削減につながると発表して話題になった。

その一方で、帝国データバンクが2020年6月、全国2万3,681社(有効回答企業数は1万1,275社)を対象に行った調査によると、自社における SDGs への理解や取り組みについて「意味および重要性を理解し、 取り組んでいる」企業はわずか8.0%であった。また、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」企業は16.4%で、SDGsに積極的な企業は合計24.4%、つまり4社に1社の割合に。残り半数近くの企業は、「存在は認知しつつも取り組んでいない」状況がうかがえる結果となっている。

オフィス運営でSDGsに取り組む企業の成功事例

「企業の社会的責任」として、SDGsに配慮した商品・サービスの開発や、開発途上国の貧困対策などに取り組むのはもちろん重要な姿勢だ。ただ、SDGsがあまりに壮大な目標に感じられて着手できずにいるのであれば、まずは身近なところに目を向け、自社のオフィス運営にSDGsを取り入れるのも一案だろう。

前述の調査で、SDGsの17目標のうちどれに力を入れて取り組んでいるか尋ねたところ、働き方改革ですでに注目されている「目標8:働きがいも経済成長も」(27.1%)に続き、「目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(15.9%)を選ぶ回答が多く見られた。そこで今回は、目標7から派生させ、主に「環境面」においてオフィス運営でSDGsに取り組む企業事例を紹介したい。

1. 大企業の事例:オフィスビルでサステナブルを実践する「大和ハウスグループ」

住宅総合メーカーの大和ハウスグループは、脱炭素社会の実現とエネルギー効率利用を図るため、「エネルギー“ゼロ”の住宅・建築・街づくり」に取り組んでいる。その姿勢は自社オフィスにも反映されており、佐賀県にある「大和ハウス佐賀ビル」では、2018年2月から再生可能エネルギーによる電力自給の実証実験が行われている。

佐賀ビル概略図佐賀ビル概略図(画像は大和ハウスグループのウェブサイトより)

「環境配慮型オフィス」を謳い、自然換気や井水、太陽熱を利用した空調システム、自然光を活用した照明などの省エネを徹底することで、「平成28年省エネ基準」の建物と比較して約52%もの電力削減に成功したという。さらに、太陽光発電システムと蓄電池を連携させた「電力自立システム」の導入により、電力の自給も目指している。

こうした取り組みが評価され、2018年11月には、一般社団法人産業環境管理協会が主催する「第1回エコプロアワード」において「国土交通大臣賞」を受賞。同ビルが試みる「電力自給オフィス」というモデルは、日本国内はもちろん、電力普及に課題を持つ途上国での展開も期待されている。

2. 中小企業の事例:オフィスの真横で里山を再生する「石坂産業株式会社」

埼玉県三芳町で、「自然と美しく生きる」をコーポレートスローガンに産業廃棄物中間処理事業などを手掛ける石坂産業。廃棄物の減量化・再資源化98%の達成をはじめ、電力・CO2削減など環境に配慮した全天候型資源再生プラントの創設、プラントからオフィス機能を独立させた社屋ビルの設置といった、業界で類を見ない試みを行う企業として知られている。

東京ドーム約4個分の同社敷地内には、多様な動植物が生息する「くぬぎの森」、 自社農園「石坂オーガニックファーム」、食を通して環境や地産地消を感じる「くぬぎの森交流プラザ」などの施設も配置されている。一帯は「三富今昔村」と呼ばれ一般解放されており、同社が保全する里山を軸とした「自然と地域の共生プロジェクト」の側面から、 “サステナブルフィールド”とも称される。

くぬぎの森

くぬぎの森(画像は三富今昔村のウェブサイトより)

三富今昔村は、憩いの場として親しまれるだけではなく、持続可能な社会づくりのヒントを得られると、遠方からの視察も多いという。同時に、同社の従業員にとっては、自然豊かで心身ともにリフレッシュできるワークプレイスにもなっている。自然環境に配慮したオフィス環境が、従業員の働きやすさ、さらには社会貢献にもつながっている好例だ。

3. スタートアップ企業の事例:オフィスの緑化をエコに実現する「parkERs」

株式会社パーク・コーポレーションのブランドで、空間プロデュースや室内緑化などを手掛ける「parkERs(パーカーズ)」。「日常に公園のここちよさを。」をコンセプトに、花や緑、木や水といった公園にある要素を用いて、人が豊かな時間を過ごせる空間をデザインしている。

parkERs新オフィス

parkERs新オフィス(画像はparkERsのウェブサイトより)

コンセプトを体現する同社オフィスは、多くの植物で満たされているが、SDGsに配慮した試みも各所に見られる。例えば、「アウトドアパーク」と呼ばれるエリアに敷きつめられたウッドチップには、東京都檜原村の間伐材を使用。また、「フォレストパーク」と呼ばれるエリアの床材には、コーヒーの豆かすなどが原材料の土を練り込んだ三和土(たたき)が採用されている。

さらに、水什器の循環を用いた水力発電や、ソーラー発電での自家発電にもチャレンジしているという。植物の育成にもエネルギーは必要だが、それを自分たちでつくり、電力消費を抑えることで、企業コンセプトを持続可能的に実現しようとする姿勢がうかがえる。

全社を巻き込んだ取り組みが必要不可欠

今回は、オフィス運営で取り組む、環境面でのSDGs事例を紹介した。もちろん、「経済」、「社会」、「環境」という3つのファクターを有するSDGsでは、環境単体ではなく、それらがうまく相互作用し循環できる状況が望ましいのは言うまでもない。

ただ、3社の事例においては、環境面での配慮が「労働環境の改善」や「営業利益」にもつながっている。最初から“三方良し”の好循環を目指さずとも、コピー用紙のリユースや会議資料のペーパーレス化、ゴミの削減、使っていないスペースの消灯など、今すぐできることから着手するのも有効な方法と言える。

また、事例では、自社のスローガンやコンセプトに沿って展開している様子も見て取れる。まずは、それぞれの企業が掲げるテーマや特性に沿った形で目的を設定し、社内でしっかり共有することが肝要だ。そして、一部の部署だけで行うのではなく、全社を巻き込んで取り組む姿勢が成功を左右するのではないだろうか。

この記事を書いた人:Rui Minamoto

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