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コミュニティを育てファンを増やす「ファンスペース」と「オンラインコミュニティ」―WORK STAGE TREND2023 #3

記事作成日:[July 27, 2023]
/ 記事更新日:[July 23, 2023]
BY Worker's Resort Editorial Team

コミュニケーションを活性化するオフィスとは?

かつて、オフィスは「正社員が集まって業務を進めるための場所」だった。しかし、働く場所と時間、雇用形態が多様化する現代では、オフィスにも正社員だけでなく、さまざまな関わり方のメンバーが存在する。企業に対するエンゲージメントの高さや、熱量もさまざまだ。オフィスに集う人びとのエンゲージメントを高めるためには、社内のコミュニケーションを活性化し、コミュニティを育てることが有効である。

未来の働き方や働く環境づくりについて考える「WORK STAGE TREND」。第3回では、コミュニケーションの場としてのオフィスについて、「ファンスペース」や「オンラインコミュニティ」の具体例を挙げながら紹介していく。

関連記事:働き方の多様化に向け、オフィスに求められるコミュニケーション機能のさらなる拡張―WORK STAGE TREND2023 #2

リアルなコミュニケーションを通じて企業のファンを増やす「ファンスペース」

働き方や雇用形態の垣根を超えて、熱量の高いワーカーや企業の関係者が集まり、交流を行う物理的なスペースを「ファンスペース」と呼ぶ。この場所では、企業の未来やそのためのアクションについて、社内外のメンバーが直接顔を合わせ、意見交換をすることができる。

2020年以前にも、オフィス内のセミパブリックな空間については、「オープンイノベーション」などの文脈で議論されてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、リアルなコミュニケーションを活性化する場としてのオフィスについては検討を中断せざるを得ない状況が続いていた。今後は企業のビジョンを共有したり、相互理解を深めたりする活動を通じ「ファン」を増やすための場として、オフィスが新たな役割を担っていくことになるだろう。

【ファンスペース①】電通デジタル 汐留PORT 7階

オフィス内に「ファンスペース」を設けている企業の例を見ていこう。2022年2月に稼働を開始した株式会社電通デジタルの新オフィス「汐留PORT」は、リモートワークの導入が進む中、「Real empowers us. リアルな世界が、私たちを強くする。」をコンセプトにリニューアルされた。

(画像は株式会社電通デジタルのニュースリリースより)

中でも7階は、来客との多様なコミュニケーションが生まれることを目指すフロアとなっている。「ホテルのラウンジ」をイメージして設計されたというスペースには緑が多く配置され、来客が長時間くつろげるよう工夫されている。待ち合わせ前後にコーヒーを飲みながら仕事をすることもでき、待ち合わせをしていた社員以外のメンバーとも、つながりが生まれるきっかけとなることを想定している。

【ファンスペース②】三井情報株式会社 MKI LOUNGE

三井情報株式会社(MIKI)では、2020年1月、東中野オフィス9階に、オープンなコラボレーションスペース「MKI LOUNGE」を開設した。もとは食堂だったフロアを全面リニューアルし、社員だけでなく、来客やパートナー企業の関係者が気軽に立ち寄れる場所を目指したという。

(画像はすべて三井情報株式会社のWebサイトより)

人が集まるバーカウンターや、靴を脱ぎリラックスして会話するスペース、雲梯とバランスボールチェアを備えたミーティングスペースなど、部門や会社の壁を超えたコミュニケーションを促す仕掛けがなされている。

社員のみならず、企業に関わる人びとが滞在したくなる、自然にコミュニケーションが生まれるセミパブリックなスペースを設けることは、企業のビジョンやバリューに共感する人びとを増やすことにつながるだろう。

WEB上でつながり合い、エンゲージメントを高める「オンラインコミュニティ」

物理的な場所であるファンスペースに対し、オンラインでの交流を提供するオンラインコミュニティも、時間や距離の制約を超え、エンゲージメントや熱量を維持向上する上で有効だ。SNSのようにオープンな場では語りにくいことも、ある程度メンバーが限定されているオンラインコミュニティでなら、比較的発言しやすい。

豊富な機能を備えたオンラインコミュニティプラットフォームサービスは年々増えており、市場規模の拡大が見込まれる。本項では具体例を紹介しながら、コミュニティプラットフォームサービスについて解説する。

【オンラインコミュニティ①】Coorum

Coorum(コーラム)は、企業の顧客やファンのコミュニケーションを支援するオンラインプラットフォームだ。

(画像はcoorumのWebサイトより)

自社の商品やサービスを利用する顧客のコミュニティを運営することで、ファン(ロイヤル顧客)を増やすことを目指している。口コミや活用アイディアなど、ファンにコンテンツを発信してもらうことはもちろん、熱量の高いユーザーにヒアリングをし、商品開発につなげることも可能だ。

BtoC企業がブランドや商品のファンコミュニティを運営するほか、企業で働く社員やアルバイトスタッフのコミュニケーション促進等、社内コミュニティの運営にも活用されている。

【オンラインコミュニティ②】Commmune

Commmune(コミューン)は、オンラインコミュニティの企画、構築から運用まで、一気通貫のサポートを受けることができるプラットフォーム。カスタマーサクセスに必要な顧客のコミュニティをノーコードで構築できるサービスであり、ポイント機能やバッジ機能などのインセンティブで、ユーザーのアクションを促す。

(画像はCommmuneのWebサイトより)

顧客の質問や要望をとりまとめる場として活用したり、口コミをマーケティング戦略に役立てたりと、顧客との関係構築、顧客体験の向上やファンコミュニティの形成に活用されている。

【オンラインコミュニティ③】Tailor Works

Tailor Works(テイラーワークス)は、地域、業界、業種、テーマなどを超えて、全国のコミュニティとつながる共創コミュニティプラットフォーム。

(画像はTailor WorksのWebサイトより)

オンラインコミュニティ作成に特化したサービスで、トークルームや相談、アイディアの投稿、イベント開催やコンテンツを投稿できるマガジンなどの機能があり、ユーザー同士のコミュニケーションを促す機能が豊富だ。

地方自治体が企業誘致のために導入したり、地方銀行が会員同士のコミュニケーションを促進したりと、さまざまな活用事例がある。

【オンラインコミュニティ④】OSIRO

OSIRO(オシロ)は、クリエイターがコアなファンと直接つながるためのコミュニティ運営プラットフォームである。

(画像はOSIROのWebサイトより)

デザイン性の高い、独自の世界観でコミュニティを作ることができる。熱量の高いファンと直接つながり、お金と応援を受けとるサブスクリプション型を採用しており、クリエイターが安定的な収益を得ることにつながる。出版社のWEBメディアや映像クリエイター、料理研究家など、さまざまなジャンルのクリエイターが活用している。

オンラインコミュニティを活用することで、企業は自社のブランドや商品、サービスの「ファン」を増やすことができる。製品を販売するだけでなく、価値観や世界観の共有を通じファンとの深いつながりを構築することで、顧客のエンゲージメント向上が期待できるだろう。

リアルなオフィスとオンラインコミュニティを併用し、ファンコミュニティを育てる

テレワークを導入している企業では、WEBミーティングやチャット、メールなどを通じてコミュニケーションをとることが日常となっている。業務を進める上で最低限必要な情報は、そういったやりとりで事足りる場合も多いだろう。だが、信頼関係を深め、コミュニティを形成してエンゲージメントを高める上では、それだけでは不十分だ。

リアルなオフィスには、言語化が難しい情報の伝達や価値観の共有、熱量・文化を伝えるといった役割が期待される。オンラインコミュニティを併用することで、共感してくれる人の輪を広げ、さらにファンを増やすことができるだろう。

本連載の第4回では、フィジカル(オフライン)とデジタル(オンライン)を掛け合わせた新たなコミュニケーションの形態「フィジタルコミュニケーション」について、詳しく解説していく。

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