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「静」から「動」へ。運動量アップにつながる、オフィスデザインのアイデア

[March 08, 2022] BY Kaori Isogawa

「運動する時間がない」状況にどうアプローチする?

ワークプレイスに求められる形は、時代とともに変化する。例えば近年では、従業員の健康管理を経営的な視点で考えて実践する「健康経営」が重視され、オフィスにもその要素が取り入れられている。今回注目する、無理なく運動量を増やせるオフィスデザインもその一つだ。

健康維持のためには適度な運動を習慣付けたいところだが、忙しい働き盛り世代にとって運動の時間を確保するのは容易ではない。内閣府の「国民生活に関する世論調査(2021年度)」でも、時間のゆとりの有無に関して、「余裕がない」または「あまり余裕がない」と回答した人の割合が、18~29歳で28.6%、30~39歳で38.3%、40〜49歳で46.4%、50~59歳で41.1%にのぼっている。そこで考えたいのが、体を動かす機会が増える仕組みをオフィスに取り入れるというアプローチだ。

体を動かせば心身がリフレッシュされ、健康増進やウェルビーイングの実現につながる。加えて、集中力が上がる、仕事のパフォーマンスが向上するといった効果も期待できるだろう。また、政府も「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」などの制度を通して健康経営に取り組む企業を紹介している。こうした評価を得ることができれば、企業価値の向上や優秀な人材の確保にもポジティブな影響をもたらすと考えられる。

では、具体的にどのような手法を用いればよいのだろうか。本記事では、運動量アップにつながるオフィスデザインのアプローチ法と実際の事例、オフィスに導入したいツールを取り上げ、そのヒントを探る。

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オフィスで体を動かす機会を増やすために​​

基本的なアプローチとしては、「動線を増やす」「階段を利用する」「座位行動を減らす」があげられる。

まず、「動線を増やす」については、オフィスの構造や内部の通路を複雑にするという手法が有効だ。横に広いフラットフロアよりも、複数階にまたがる多層構造のほうが運動量アップにつながる。カフェテリアや休憩室、会議室、商談エリアなどの各機能を分散させるのもよいだろう。さらに、エレベーターではなく階段での移動を誘導すれば、「階段を利用する」も実現できる。例えば、オフィスの中央部分に大胆に階段を配置するレイアウトも、効果的なアプローチとなる。

そして、「座位行動を減らす」ためには、立ち姿勢で利用できるスタンディングデスクを設置するのも一つの手だ。椅子に座った状態から立ち上がるのを億劫に感じることもあるが、立ち姿勢なら次の行動へのハードルが下がり、動く機会を自然に増やせるだろう。

オフィスデザインへの導入例​​

オフィスの移転をきっかけに運動を促すデザインを取り入れる企業もあれば、オフィスの一部にツールを導入する企業も見られる。なかでも特徴的な事例を紹介する。

1. 富士通ゼネラルグループ

富士通ゼネラルグループは、2017年に健康経営推進室を設置し、「富士通ゼネラルグループ健康宣言」を打ち出して健康経営に力を入れている。2019年には、本社内にコンセプトの異なる4種類のゾーンで構成される「健康デザインセンター」を開設した。

(画像は富士通ゼネラルグループのWebサイトより)

執務エリアの「デザインワーキングゾーン」にあるテーブルはすべて可動式の軽量タイプで、フレキシブルに利用できる。また、「アクティブゾーン」には、うんていやエアロバイクなどが設置されており、簡単な運動に取り組める。仮眠や瞑想用の「リラックスゾーン」にあるバランスボールを使えば、インナーマッスルを鍛えることも可能だ。壁で仕切られた「ヘルスケアゾーン」には、産業医や産業保健看護職のスタッフが在室しており、健康相談もできるという。

2. アマゾンジャパン合同会社

アマゾンジャパン東京本社の受付ロビーには、従業員に体を動かす機会を提供するボルダリングウォールが設置されている。レンタル靴もあり、初心者用の5種類のルートに加えて中・上級者用のルートも選択できる本格的な仕様だ。

(画像はアマゾンジャパン合同会社のWebサイトより)

ボルダリングウォールは従業員の要望を受けて設置されたもので、同社ではクライミング部も発足。運動効果を得られるだけではなく、他部署との交流を生み出す場としても機能している。

3. 株式会社保健同人社

健康経営支援や疾病予防サポート事業を手掛ける保健同人社は、2021年3月にウェルビーイングを実現する「健康経営オフィス」を目指し、移転した。新オフィスでは、中央にマルチ交流スペースを設け、その周りにジムゾーンやミーティングゾーン、集中して作業するための執務ゾーンなど7種類のゾーンを配置している。

(画像は株式会社保健同人社のWebサイトより)

エアロバイクや卓球台、ぶら下がり棒などのウェルネスツールの設置のほか、プラス10cmの歩幅を促す足跡マーク、ストレッチコーナーなど、体を動かすための仕掛けが随所に施されている。スタンディングデスクはもちろん、ノートパソコンを使用しながらウォーキングができるトレッドミルも設置。上を見上げる機会をつくることで首こり・肩こりを防ごうと、天井にイラストを入れたり、ウォーキングを促す近隣マップを描いたりと、ユニークなアイデアを採用している。​​

4. いちご株式会社

不動産事業やクリーンエネルギー事業を展開するいちごでは、オフィスの大掛かりなレイアウト変更を実施することなく、運動量アップにつながるデザインを取り入れている。例えば、床面のカーペットに「足跡カーペット」を採用しているのもその一つ。健康的な歩幅の目安として150cmと170cmの身長に合わせた足跡をプリントし、オフィス内を歩くだけで健康につながる仕掛けを取り入れている。

(画像はいちご株式会社のプレスリリースより)

また、休憩スペースの「いちごラウンジ」には、立ち姿勢でミーティングが行えるテーブルを設置。さらに、ウェルネスツールとしてぶら下がり健康器具やマッサージチェアを用意し、単なる休憩スペースではなく、体を動かしたり癒したりする場として機能させている。また、テレワークによる運動不足や健康障害を予防するために、オンライン朝礼でのストレッチ運動も実施。こうした取り組みから、同社はスポーツ庁の「スポーツエールカンパニー」に5年連続で認定されている。

「動き」を促すオフィスツール

オフィスの移転やレイアウトの変更を行うのは難しい場合でも、ちょっとした空きスペースに運動器具を設置したり、オフィス用品を変更したりするアイデアなら導入のハードルは下がるだろう。そこで注目したいのが、次のようなツールだ。

1. TMヘルスケア株式会社「WALKOLUTION」

デザイン性や機能性に優れたヘルスケア商品を扱う、TMヘルスケア。同社のラインナップのなかでも注目したいのが、モーターを使用せずにステップで直感的に速度を調整できるトレッドミル「WALKOLUTION(ウォーコローション)」だ。

 

(画像はTMヘルスケア株式会社のWebサイトより)

専用のデスクを組み合わせることで、作業を進めながらのウォーキングが可能になる。本体に車輪がついているため、オフィス内での移動もしやすい。また、木製の外観はデザイン性が高く、最新のオフィスにも違和感なく溶け込むだろう。

2. Wilkhahn「Stitz」

ドイツのオフィス家具メーカー・Wilkhahn(ウィルクハーン)は、静的なオフィスよりも動的なオフィスのほうが健康増進につながり、社内の交流を生むとの考えから「Office for motion」(「動き」のためのオフィス)を提案している。

(画像はWilkhahnのWebサイトより)

例えば、ハーフシッティングチェア「Stitz(スティッツ)」は、「座る」と「立つ」の中間がコンセプトの製品だ。一般的なスツールと異なり、垂直のポジションだけではなく斜めに傾けた状態でも体を支えることができる。椅子に座ると移動が億劫になる人も、これなら次の「動き」につながりやすいだろう。このほか同社では、ダイナミックに体を動かせるワーキングチェアを開発し、その特性を活かしたストレッチ法をWebサイト上で提案している。

無理なく続けられるアプローチを

健康経営の観点からも注目される、運動量アップにつながるオフィスデザイン。オフィスの移転に伴うリニューアルから、便利なツールの導入まで、複数のアイデアを紹介した。健康に役立てるためには、一時的な活用ではなく続けることが重要だ。オフィスの規模や業務形態などによってニーズは異なるが、「無理なく取り入れる」ことが、継続を促し効果を得るうえでのポイントとなる。

オフィスを出てから体を動かすのではなく、オフィスのなかでちょっとした運動をプラスする。そうした発想であれば、業務時間外に運動する時間を確保しにくい人でも、導入しやすいのではないだろうか。

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この記事を書いた人

Kaori Isogawa ライター/翻訳者。ホームインテリアからオフィスデザインまで、ライフスタイル&ワークスタイルを中心に幅広くコンテンツを作成。外資勤務経験あり。



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