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米メルカリが日本のサービスと働き方に与えた影響 【石塚亮さんインタビュー#1】

[June 20, 2018] BY Shinji Ineda

2018年6月19日、メルカリは東京証券取引所マザーズへ新規上場を果たした。そしてその前月にあたる2018年5月には、米国拠点の1つであるサンフランシスコ 4thストリートにあるオフィスを、同市内から南へ下ったパロ・アルトに移転している。

今回はその準備を進める4月下旬に、移転前のオフィスへ訪問する機会を頂いた。そこでメルカリ共同創業者であり、USオフィスで米国での展開を手がける 石塚氏に、グローバル戦略上におけるUSオフィスの役割とその効果についてお話を伺うことが出来たので、皆さんへお届けしていこうと思う。

米国にあるスタートアップの1つとして見てもらいたい

メルカリは日本国内のモバイルCtoC市場で急成長を遂げ、現在は大きなシェアとともに多くの一般コンシューマーから認知されている。しかし石塚氏は米国市場において「日本から来ている会社の一つ」ではなく、「米国にあるスタートアップの1つ」として見てもらいたいと語る。米国オフィスの採用応募者にも、日本でのサービス展開やビジネスの状況は伝えているとのことだが、USマーケット獲得のためには、ローカルに向けたプロダクト(サービス)開発を行なっていく必要があり、そこに向けて一緒に歩んでいける気概のある人材を現地で獲得したいという思いからだ。

「USに進出した当初は米国側の採用もこれからの状態で、日本にいるメンバーにも支援してもらっていました。」と2014年の米国進出当時を振り返るが、現在ではそういったメルカリの思いに共感した人々がサンフランシスコで70〜80名、ポートランドにカスタマーサポートとして約100名程一緒に仕事をするに至っているのだから、その成長速度には驚きだ。だがその傍、日々大きくなる組織をバインディングするために文化形成をどのように行なっているのか気になり聞いてみた。

日米の人材交流を促進する工夫

メルカリでは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションと、3つの明確なバリュー「Go Bold 大胆にやろう」「All for One 全ては成功のために」「Be Professional プロフェッショナルであれ」を掲げている。これらは世界共通で、入社前の面接時における説明をはじめ、人事評価軸の1つとして組み込まれているとのことだ。そういった取り組みが、同じ価値観を共有しチームが迷いなくミッションに向かって取り組む礎となるが、浸透に向けてはオフィスも一役を担っている。

移転前のサンフランシスコオフィスの一画。バリューの一つ「大胆にやろう」がプリントされたTシャツと、スタッフの写真が飾られている。

その一つが日米の人材交流を効率良く行うために用意されているコミュニケーション機器だ。各ミーティングルームへは、いつでも手軽に日米間でMTGを行えるようにChromeboxが設置されている 。またオフィスの片隅には遠隔でリモート操作ができるロボットBeam(https://suitabletech.com)があり、日本スタッフが米国スタッフとのコミュニケーションに活用しているとのことだ。

遠隔でリモートで操作ができるロボットBeam「Beamのおかげで日本のスタッフも気軽に話ができます。会議室に1台だけある姿を見るとシュールですけどね笑」と石塚氏

各会議室にはChromeboxが用意されている。米国では居抜きが一般的で、家具もこちらのオフィス用意されていたものを使用している。

企業として所有しているファシリティでいうと、日本から気軽に出張に来て欲しいという思いから、サンフランシスコにマンション4部屋を契約しており、7人まで滞在が可能とのことだ。また逆に米国スタッフが渡日する機会も積極的に設けているという。「できるだけ日本へ行ってもらい、Face to Faceでどんな人たちと仕事をやっていくかを理解してもらいたいですね。一度日本の六本木ヒルズのオフィスに行ってメルカリがどれだけ大きい会社かを肌で感じてほしいと思っています。」 とオフサイトにおける交流の重要性も石塚氏は唱える。米国では家族との時間やプライベートを大切にする意識が高く、日本のように頻繁に会社の仲間と飲みに行く機会は少ない。「でもその割には日本へ出張に行くと飲み会を楽しんでいますよ。米国スタッフが日本に行くと『飲み放題』という言葉を覚えて帰ってくるんです。」と笑いを交えながら日米の交流の楽しさ語った。

オフィスエントランス。エレベーターを降りると大きなロゴが来客者を迎え入れる。

エントランスに設置された飾り棚。棚を彩る小物はメルカリを通じて購入したものだそうだ。

アメリカのオフィスの在り方が日本に影響を与えている

ここまでの話だと、日本で築かれたカルチャーを米国にどうやって伝えているか?という意味に捉えられがちである。しかしプロダクトとワークカルチャーにおいては、米国で得た気づきを逆に日本へフィードバックしているケースも多くあるという。

まずプロダクトでいうと、当初日本では個人ごとにおススメの商品をレコメンドしていくなどのカスタマーゼーションは、重視していなかったそうだ。「当時はそれをやらなくてもうまくいっていました。でも人種や経済的状況といったバックグランドが異なる米国でビジネスを行ってみると、みんなに対して同じ商品をススメても、うまくいかなかったんです。」そこでローカルの人からレコメンデーションをもっとカスタマイズした方が良いのではと提案を受けたという。それを米国で実施してみると効果がみえたため、そこで日本側にも適用したらもっとうまくいくんじゃないか考え、実践していったとのことだ。日本のやり方をどうアジャストして米国でビジネスを行うかと検討する企業が多いなか、米国でつくりあげたものを日本に逆輸入するという、メルカリならではの考え方が窺える。

インタビューにご対応頂いたメルカリ共同創業者であり、メルカリUSの石塚氏

またワークカルチャーにおいても米国側から取り入れたものがいくつかある。例えば1on1がそのひとつに挙げられる。近年は日本でも1on1に取り組む企業が増えたが、メルカリでは米国オフィスがそのきっかけになったという。「当時は米国におけるスタッフの1on1だったんですが、米国事業に協力する日本スタッフも多くいたため、そういう人たちとも1on1をやったほうが良いよね、と必然的に行われるようになりました。」そしてそれが次第に日本にも広まっていったとのことだ。

米国で重要視されるオフィスマネージャーの役割

カルチャーという観点でいうと、オフィスマネージャーいわゆる日本でいう総務が文化醸成の大切な役割を担っているという。「オフィスマネージャーによってオフィスの在り方は相当変わります。どうやってオフィスに愛着を持ってもらうか?オフィスに来たいと思ってもらうか?オフィスで楽しんでもらうか?という部分はオフィスマネージャーが担っていますね。」米国では一般的に、自前でオフィスを用意する10〜20名規模の段階から、オフィスマネージャーを雇用するケースが多い。またその業務内容は日本の総務よりもさらに、オフィスのマネジメントへ特化している。さらにオフィスマネージャーはチームビルディングのために社内イベントを企画したり、価値観を共有した人材を雇用するための採用にも携わっていく。最高財務責任者をCFO、最高技術責任者をCTOなどというが、そうなるとオフィスマネージャーはあながち企業の最高文化責任者といったところだろう。

社内リフレッシュスペース。こちらに用意される食べ物や備品の管理もオフィスマネージャーの役割だ。

オープンスペースにはビリヤード台も用意されている。

日本とは異なりSFでは転職を繰り返しながらキャリアアップを図っていくのが一般的で、ここがオフィスに対する意識の差に影響を及ぼしているといってもいい。つまり長期雇用をベースとした日本企業的な環境より、転職が当たり前という方が、企業から人が離れるのを防止するための努力として人間関係を育み良い環境を作っていこうとする意識が高いと言える。

企業が拠点を展開していく際、その市場にあわせた体制と拠点トップ独自の意向が色濃く反映されていく場合もある。しかしメルカリでは3つのバリューが拠点を跨いだチームのバインディングを担い、文化醸成を意識した運営がオフィスマネージャーを中心になされていることがわかった。また「米国で得る気づきを日本へフィードバックさせるのも米国オフィスを構える狙いであった」と石塚氏が語る通り、日米のシナジーがメルカリの成長を後押ししてきたことも、よく理解できたのではないだろうか。

続いて後半では、移転目的や今後のビジネス展開について聞いていく。また移転後の新しいオフィスの様子も紹介していこう。

メルカリ、移転を控えたサンフランシスコオフィスのバルコニーより

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この記事を書いた人

Shinji Inedaフロンティアコンサルティングにて設計デザイン部門の執行役員を務める。一方、アメリカ支社より西海岸を中心としたオフィス環境やワークスタイルなどの情報を、地域に合わせてローカライズ・ポピュラーライズして発信していく。



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