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イタリア家具ブランド会長が日本に伝えたい、家具・オフィス・働き方デザインの本質

[January 21, 2020] BY Kazumasa Ikoma

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イタリアの家具メーカー『Arper(アルペール)』の製品は、世界90カ国以上で親しまれている。同国を象徴とするデザインは、料理(Food)、ファッション(Fashion)、家具(Furniture)の”3F”に代表されるが、Arperはその中の家具分野を牽引してきたブランドの1つだ。しかし同社は、他のブランドが世間より先駆けた製品を生み出して流行をつくるのとは異なり、人のニーズを徹底してヒアリングした上で「人が必要としているもの」をつくりだす。また同社の製品の大半は環境に優しく持続可能性があるのが特徴的で、「人」にも「環境」にも配慮したデザインは社会から高い評価を受けている。

Arperが持つデザインに対する考え方は、家具のみならず、近年のオフィス業界全体にも必要とされている。健康経営やWELL認証、SDGsやLEED認証などのキーワードが最近挙がるのは、まさに人や環境に配慮した空間が求められているということだ。

今回Worker’s Resort編集部はイタリアから来日中のArper会長、クラウディオ・フェルトリン氏に取材を実施。社会に認められる本質的なデザインを追求する彼はどのような視点で家具を見ているのか。そして世界中の働く環境、そしてそこで働く人々を見てきた彼の目に、日本のオフィスはどのように映っているのか。話を伺った。

持続可能なデザインに向けての取り組み

1989年創業のArperは、住宅やオフィス、公共施設向けのイスやテーブル、インテリア製品を専門に取り扱っている。「なぜかわからないけど好きになるもの」「説明できないが惹かれるもの」を形にし、人々の直感に訴えかける製品づくりを行う。そのためには単なるイス以上の「何か」を要素として付け加える必要があり、その1つに持続可能性も挙げられるという。

同社製品の最大の特徴の1つである「持続可能なデザイン」は、世界的にも環境保全に対する意識が高い欧州でも認められている。その立ち位置を築けたのは、フェルトリン氏がイタリアやヨーロッパでのデザインにおけるサステイナブルな意識の高まりをいち早く察知し、早期から環境への貢献に取り組んできたからだ。

2005年に本格的な取り組みを始めた同社では、2007年に自社製品のライフサイクル(原料の選択から、組み立て、輸送、使用、そして廃棄にいたるまで)の見直しを行っている。そして2009年には、製品が環境に与える影響に関する情報を明記するよう定めた「環境製品宣言(EPD)」のもと、その環境保全認証の取得基準となる製品カテゴリールール(PCR)を作成。これは現在も家具業界における基準として機能している。その透明性ある製品づくりは高く評価され、Arperはイタリア国内では初、ヨーロッパ圏内では2番目となる「EPD環境プロセス認定」と呼ばれる認定を取得した。

さらにArperは国際組織のFSC(森林管理協議会)が認定するイタリア・ファニチャーアワードも受賞。このアワードは、製品の原料として厳格な環境・社会・経済的基準を守って管理された森林などで採取した木材のみを使用する会社を評価するもので、この賞に同社の長年にわたる取り組みが認められた。

同社の代表作の1つであるイス『Catifa』は、上品で繊細なカーブを帯びた座面にシンプルでスタイリッシュな雰囲気を漂わせており、オフィスのみならずカフェや商業施設でも取り入れられるほど人気を集めている。これも、材質選びからすべて環境を配慮したデザインをもとに設計されている。

Photo credit: Marco Covi

「何か惹かれるもの」の要素はサステイナビリティだけではない。身体に優しいものを生み出すために人間工学に基づいた設計はもちろんのこと、また快適性(コンフォート)の要素も加わる。ヒューマンセントリックなアプローチを取るArperは、その他にも人が家具を使うときのシチュエーションや実際にどのように動くかに集中してものづくりを行うとフェルトリン氏は力強く語る。

徹底して「人=ワーカー」の声に耳を傾けてきたArper。フェルトリン氏によると、ワーカーたちからオフィス環境に関して聞かれる声は過去20年ほどでかつてない変化を遂げ、「仕事に対する向き合い方が今世界中で大きく変化している」と語るほど、家具づくりにも大きな影響を与えているようだ。

>次ページ:世界から見た日本の働き方、遅れはあるものの「焦る必要はない」

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この記事を書いた人

Kazumasa Ikomaフロンティアコンサルティングにてリサーチャーを務める。アメリカ・サンフランシスコでオフィスマネージャーを務めた経験をもとに、西海岸のオフィスデザインや企業文化、働き方について調査を行い、人が中心となるオフィスのあり方を発信していく。

    
    
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