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移住やワーケーションに次ぐ選択肢 ー 「第2のふるさとづくり」「地方副業」とは

[May 03, 2022] BY Hiromasa Uematsu

移住をせずに地方とつながる方法はある?

近年、東京圏を中心に、地方と関わりたいと考える人が増加傾向にあるという。内閣府の「第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、東京圏住民の移住への関心は、2019年の25.1%から2021年には34.0%に上昇している。実際に、2021年の東京都からの転出者数は41万4734人であり、2020年の40万1805人と比べて1万3000人ほど増えている。

一方、転入者数の42万167人と差し引きしてみると、いまだ5433人の転入超過であるのも事実だ。住まいはもちろん、転職が必要となることが多い地方移住は、「移住したい」という気持ちだけで実行できるほど簡単ではないのだろう。

移住したい気持ちがありながら、適切な選択肢が見つからない。そんな人におすすめしたいのが、現在の住まいや仕事を維持したまま地方とつながる、“新たな関係性”の構築だ。

関連記事:「地方に住みたい」「地方で働きたい」。そんなあなたを後押しする3つの制度

第2のふるさとづくりで、旅人が「中の人」に

まずは、2021年10月に観光庁が立ち上げた「第2のふるさとづくりプロジェクト」を紹介したい。この場合の「第2のふるさと」とは、何を意味するのだろうか。観光庁は、プロジェクト発足の背景について次のように説明している。

「コロナ禍等によって働き方・住まい方に関する意識が変化する中で、密を避け、自然環境に触れる旅へのニーズの高まりや、ふるさとを持たない大都市の若者が増え、田舎にあこがれを持って関わりを求める動きがあります。こうした新しい動きも踏まえ、いわば『第2のふるさと』として、『何度も地域に通う旅、帰る旅』というスタイルを推進・定着させることで、国内観光の新しい需要を掘り起こし、地域経済の活性化につなげることが重要です」
(観光庁のWebサイトより)

この記述から、行って帰るだけの「旅先」とも、住処となる「移住先」とも違う、中間的な立ち位置の「第2のふるさと」像が浮かび上がってくる。

さらに、2021年3月に公表された「第2のふるさとづくりプロジェクト」有識者会議の中間とりまとめでは、地域の人と自然に交流し、地域での生活の雰囲気を味わい、その歴史や文化に深く触れ、共に地域課題の解決に参画することで深い関係性が生まれるとしている。言うなれば、本来は「外の人」である旅人が、地域の「中の人」になれるわけだ。

三重県の事例に見る、地域貢献がもたらす帰属意識

中間とりまとめには、地域との関係性の構築につながる具体的な事例も紹介されている。

例えば、三重県鳥羽市で行われている「結(ゆい)づくりプロジェクト」では、地域の人々の生業(なりわい)であるワカメ漁を滞在コンテンツ化している。担い手不足に悩む現地のワカメ漁家と、社会に貢献したい都市部の高齢者をマッチングさせるプロジェクトだ。参加者はワカメの選別やカット作業を体験し、現地の生活に触れることで、新たな生き方や暮らし方、第2のふるさとを見つける機会を得られる。

高齢者をターゲットとしているものの、参加者の46%は40歳未満であり、若い層の関心を集めている。さらに、リピーター率は91%とかなり高い。現地の人と交流し、その土地の課題解決に貢献することで、旅人であってもその土地への帰属意識が生じ、「ここ“も”自分のふるさとだ」と感じられるのだろう。

(画像は「第2のふるさとづくりプロジェクト」有識者会議の中間とりまとめより)

滞在・体験型の観光コンテンツに近いものの、体験料などを必要とせず、活動に伴う報酬があるわけでもない。あくまでも地域との関係づくり、そして今まで知らなかった生活・文化を知ることが、参加者の目的や動機となっている。現在の住まいや仕事を維持しながら、深い関係性を別の地域で構築する。それが、移住やワーケーションに続く新たな選択肢となり得る、第2のふるさとづくりなのだ。

遠隔で地方と関わる、「地方副業」の可能性

観光庁の「第2のふるさとづくりプロジェクト」は、地域との関係性の構築を観光というアプローチで模索するものであった。次に、「地方副業」という観点から、地域との関わり方について考えてみたい。

都会の人材と地方企業の間に生じるミスマッチ

都会の人材が地方で働く場合、報酬や仕事内容のミスマッチという障壁が存在し、移住のハードルを上げる要因となっている。ここで、厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」のデータを確認しておきたい。

同調査によると、日本人の賃金は全国平均で307.4千円とのこと。都道府県別に見ると、最も高い東京都で364.2千円、最も低い宮崎県は244.6千円と、およそ1.5倍の差がついている。いくら環境がよくとも、移住によって収入が減少するとなると、躊躇してしまう人も少なくないだろう。

次に考えたいのが、仕事内容の地域差だ。中小企業庁の「2016年版小規模企業白書」では、人口1000人あたりの業種別事業所数を、大都市と田舎(郡部の町村)で比較している。データを見ると、情報通信業は大都市のほうが田舎に比べて8.1倍も多い一方、建築業は田舎のほうが都市部の1.5倍多く、両者の産業構造には明らかな違いがある。

人口1000人あたり全事業所数(郡部と大都市の倍率比較)
画像は中小企業庁「2016年版小規模企業白書」より

産業構造が違えば、当然ながら求められる人材やスキルも異なる。地方移住の課題として、自分の能力を活かせる仕事がないというミスマッチが存在するわけだ。

地方副業を支援するサービスの増加

そのようなミスマッチも、副業ならば解消しやすくなる可能性はある。地方企業にとって、都会の人材をフルタイムで雇用するのは経済的に難しくとも、副業という形でスポット的に仕事を発注するのであれば負担は少ない。雇われる側からしても、本業を維持している状態ならば、給与水準がある程度低くなっても許容範囲であろう。

では、実際にどのようにして地方での副業案件を見つければよいのだろうか。「2015年版中小企業白書」では、UIJターンを伴う転職先を見つける際の課題として、「候補となる転職先の情報がない/集められない」という回答が23.7%と最も高かった。それは、副業探しでも同様だろう。

そんなときに活用したいのが、地方副業専門のWebサービスだ。近年、Skill Shiftふるさと兼業LoinoといったサービスやWebサイトが続々と生まれている。Skill ShiftのWebサイトに掲載されている地方副業事例を見てみると、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)化や、マーケティング支援といった仕事内容が多いことに気付く。

つまり、既存の地方企業のビジネスを、都会で培ったDXやマーケティングの知識で支援する事例だ。このような関わり方であれば、産業がやや異なる分野であっても貢献が可能となるだろう。

関連記事:拡大する企業・自治体の副業人材活用 ― テレワークでさらに活性化

地域の表と裏の両面に関われる「おてつたび」

このほか、「観光」と「労働」という2つのアプローチで、地域と関係性を結ぶ方法もある。「旅先で稼ぐ」新たな方法として注目されているのが、株式会社おてつたびが提供するWebプラットフォーム「おてつたび」だ。サービスを通して、人手不足に悩む地方事業者と地方に興味がある若者をマッチングさせている。

利用者は、農園の収穫作業や冬の雪かきなど、短期的・季節的に発生する仕事を「お手伝い」する。地域側は働き手を得られ、利用者は観光目的で地方を訪れながら、仕事を通じて地域とそこに住む人に深く関わり、さらに報酬を旅費の足しにできる。観光とは、地域の言わば“よそ行きの顔”を見る行為だが、仕事は地域の日常に入り込む行為だ。おてつたびを利用すれば、その両面を垣間見ることができるだろう。

報酬ではなく、関係づくりの手段として「仕事」を捉える

各種ツールやサービスの発達により、日本のどこにいても仕事ができるようになった。ワーケーションだけではなく、都会の仕事を抱えたまま田舎に移住することも不可能ではない。ただし、それらはあくまでも自分のいる場所を変えただけであり、真にその地域の中へ入り込んだとは言えない。一方、地域の仕事に携わることができれば、働き手には地域社会や地域の人々への責任が生じることになる。

仕事とは、働くとは、そもそも何なのだろうか。そのことについて考えるとき、私たちはどうしても報酬や生活の糧という観点にとらわれがちだ。しかし、第2のふるさとづくりプロジェクトや地方副業の事例は、仕事にはそれ以外に「関係づくりの手段」という側面があることを教えてくれる。

あなたは今、何のために働いているのだろうか。あるいは、何を求めて移住先を探しているのだろうか。仕事の意味を捉え直して考えると、今とは違う選択肢が浮かび上がってくるかもしれない。

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この記事を書いた人

Hiromasa Uematsu 編集者/インキュベーションマネージャー。観光系Webメディアの編集長を勤め、企業・自治体のPRコンテンツを作成。約3年でメディア規模を10倍に成長させる。現在は「Aomori Startup Center」の相談員として起業家・経営者を支援しつつ、これからの地方の働き方を発信している。



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