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人材採用のニュースタンダード。AI導入で起きる2つの変化と求職者に求められる3つの準備

[June 30, 2020] BY Chinami Ojiri

全世界が直面したパンデミックの影響を受け、2020年は働く環境を取り巻く様々なスタンダードに変化が見られる年となりそうだ。近年、働き方の多様化に伴い、オフィスデザインやテレワークについてはすでに一部企業で見直しが図られていたが、比較的既存のプロセスにならってきた採用のあり方は、より迅速かつ環境に適応した変化が求められるのではないだろうか。

これまでの就職や転職に関する大まかな採用方法を見てみると、日本独自のシステムである新卒者の一斉採用にはじまり、合同企業説明会やインターンなどの準備期間から、エントリーシートやSPIなどの書類審査やテスト、そして面接やグループワークなどの対面コミュニケーションといった一連の流れがあった。しかし、3密(密閉、密集、密接)回避やソーシャルディスタンスへの考慮が必要となった今、求職者と企業共に新たな採用方法への適応が必要となるだろう。

今回は、オンライン採用に伴う変化やメディア、そして求職者に求められる準備について考えていきたい。

AIの導入で変化すること

エントリーシートなど応募書類のスクリーニング

かねてよりAI採用は日本でも一部企業で導入されてきたが、今となっては業種や企業規模関わらずAIツールの活用に取り組む必要が出てくるだろう。

とりわけ人事業務へのAI導入に積極的なアメリカでは、すでに多くの企業でATS(Applicant Tracking System)と呼ばれるAIによる履歴書スクリーニングシステムが採用されている。もともとは毎週数千件以上の応募書類に対応する大企業向けに開発されたシステムだったが、履歴書などの応募書類AIスクリーニングサービスとして有名なJobscanが行ったリサーチ(2019年実施)では、フォーチュン500社の98.8%が既にATSを導入しているということが分かった。

ATSを提供する会社によりスクリーニング内容は異なるが、基本的なプロセスとしては、募集職種別に応募書類を収集し分類。そして、募集職種に沿った履歴書コンテンツ(キーワード&フレーズ)のスキャンを行い、マッチ度により応募者をランキングしていく。

左欄:スキル、中央欄:履歴書コンテンツ、 右欄:募集内容
(画像:Jobscan Resume Match Resportより)

一見シンプルなスクリーニングだが、驚くことに応募者の75%がATS審査を通過できず不合格者ボックスにいれられてしまう。そのため、履歴書作成の際には、ATSを考慮したフォーマットやコンテンツなど、人事担当者まで辿りつくまでの戦略が重要になる。TopResumeMonsterなど、アメリカではAIスクリーニングやアルゴリズム対策を身につけた専門家による履歴書作成サービスが数多くあり、筆者の周りでも利用者が多い。

欧米に比べるとまだ未熟だった日本のAI採用だったが、今後は新たな採用スタンダードの一部として定着していくかもしれない。

対面面接とWEB面接

オンライン採用に伴い、従来のスタイルから大きな変化が見られるのが面接方法だろう。一般的に対面コミュニケーションが基本とされてきた面接だが、今回のパンデミックを機にWEB面接が増加したのは言うまでもない。株式会社マイナビが発表した『マイナビ 2021年卒学生就職モニター調査 5月の活動状況』によると、31.6%の学生が最終面接を受ける中、5月に受けた全ての面接のうち、94.7%がWEB面接であり最終面接を含むほとんどの面接がオンラインで実施されたようだ。

WEB面接だった社数、WEBでない面接だった社数(平均)、面接のWEBでの実施率
*その期間に受けた面接のうちWEB面接だったものの割合
(グラフ:『マイナビ 2021年卒学生就職モニター調査 5月の活動状況』リサーチより)

オンラインツールとしては無料利用可能なSkypeやGoogle Hangouts、Zoomなどから、WEB面接システムに特化した有料ツールまで、機能や価格、導入実績により選択肢は様々だ。無料体験や資料請求が可能な場合も多く、目的に合ったツールを見つけるのがよいだろう。

例えば、株式会社NEOLAB(ネオラボ)が提供するCalling(コーリング)は1クリックで簡単に始められるWEB面接システム。ルーム(オンライン上の仮想会議室)制の課金モデルとなっているため、どれだけIDを発行しても、月に何時間使っても費用が変わらない。

Callingでの利用可能サービス一部(画像:Calling HPより)

また、株式会社manebi(マネビ)が提供するplayse(プレイス)はヒアリングシート、Web面接、評価シートで採用面接の効率化を手助けしてくれる。評価シートでは、共通の評価項目でスコアとコメントを残すことができ、面接時の聞き忘れや、面接担当者ごとの評価基準の均一化を図れる。また、ダッシュボードでは応募者のステータスやアクティビティを把握できるようになっている。

評価シートとダッシュボード (画像:playse HPより)

採用の効率化や、時間や交通費負担の軽減など、WEB面接故のメリットがある一方で、求職者と企業共に、オンラインだけでは会社の雰囲気や人柄が伝わりにくいという声もある。今後の社会的状況に応じてWEB面接導入の割合は変化すると予想されるが、求職者の利便性や安全性から、対面とWEB面接の双方の使い分けを検討する企業も増えると考えられる。

求職者に求められる3つの準備

①「Be memorable」

イギリス発の完全栄養食ブランド『Huel(ヒュエル)』で人事部長を務めるレベッカ・バウシャー(Rebecca Bowsher)は、求職者への助言として「記憶に残るように(Be memorable)」とアドバイスした(2020年5月24日CNBC記事より)。募集要項に沿った適切な応募書類を準備することはもちろんだが、オンライン選考では対面の機会が少ない分、より人事担当者の印象に残る工夫が採用のポイントになるかもしれない。例えば、カラフルなビジュアルやグラフを使用した履歴書を作成したり、応募書類をパワーポイントでまとめスライドショーのように見せるなど、オンライン採用ならではの自己PRも考えられる。

クリエイティブな求人方法を打ち出す企業もあり、オープンソースのGitリポジトリ管理ソフトウェアを提供するGitLab(ギットラボ)のダレン・マーフ(Darren Murph)は、求人内容ビデオをアップロードし、応募者を募った。多くの応募者は、応募書類に加えてボイスレコードやムービー、YouTubeリンクを添付するなど、テクノロジーを駆使した自己PRを以って求人募集に応えた。

②言葉と感情表現を意識する

対面面接の場合も同様だが、事前に質問内容を予測し、準備しておく。リクルートキャリア就職みらい研究所が2021年入社の学生を対象にした調査では、31.4%の学生がWEB面接で「自分の話が伝わるか」不安に感じていることがわかった。

2021年度入社の学生対象「Web面接について最も不安に思うこと」
(グラフ:リクルートキャリア就職みらい研究所調査より)

また、WEB面接では温度感が伝わりにくい可能性もあるため、声のトーンや視線、表情などをより意識する必要がだろう。物理的に離れた状態でのコミュニケーションならではの、感情表現が求められると言えそうだ。

③WEB面接環境を整える

オンラインで面接を行う際は、インターネット環境に加え、服装や背景など環境を整える。自宅で面接を受けるのが大半かと思うが、画面越しの面接官の気が散らないように、極力クリーンでシンプルな背景を選び、会話に集中できるよう場作りをする。また、事前の企業リサーチを踏まえ、企業の雰囲気に合わせた服装を選ぶ。

企業によって面接ツールが異なるため、事前にSkypeやGoogle Hangouts、Zoomなどの一般的なソフトウェアプログラムをデバイスにインストールしておくことをお勧めする。ビデオカメラとマイクなどが適切に動作するかを確認し、テストをしておくことで面接中のトラブルを未然に回避しておく。

刻々と変わる環境下の中、企業と求職者共に手探り状態の採用が進むが、オンライン採用ならではのメリットや可能性に目を向けながら、日本だけでなく世界で起こる新たな採用の動きに注目していきたい。

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この記事を書いた人

Chinami Ojiriフロンティアコンサルティングで設計デザイン部に勤めた後、渡米。経験と知識を広げる為、現在はNYの美大にてインテリアデザインを学んでいる。

    
    
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