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「固定席」の効果、続々と判明。チームメンバーと隣り合って働くメリットとは

固定席か、フリーアドレスか。あるいはそれらの最適解とは──。オフィスの座席レイアウトに関する最新研究で、チームメンバーに近い席で仕事をすることや各自に割り当てられた固定席で作業をすることは、従業員のパフォーマンスを改善する効果があると明らかになった。

自発的な出社を促すには

近年発表された複数の研究によると、働く人々の多くはチームメンバーの近くで仕事をしたいと考えており、チームメンバーの近くで働ける環境を与えられることで、自発的に出社するモチベーションが高まるという。また、従業員は各自に割り当てられた固定席があるオフィスでは、ベストなパフォーマンスを発揮できるという調査結果も報告されている。

オランダ・アイントホーフェン工科大学のDeniz Tuzcuoglu氏らの研究論文(2025年)は、オランダ政府職員から収集したデータを分析し、通勤時間やオフィスでのチームメンバーとの距離の近さが、職員の勤務場所の選好に影響を与えていると結論づけた。研究者らは「組織は従業員がチームメンバーと近い席で働ける環境を整え、オフィスの魅力を高めることで、自発的な出社を促すことができる」と指摘している。

従業員は同僚との交流を求めている

チームメンバーの近くで働ける環境の力は、先行研究でも裏付けられている。英エディンバラで開催されたTWRカンファレンスで、Deniz Tuzcuoglu氏らが2024年に発表した研究では、「従業員が出社か在宅ワークを選ぶ際の理由として最も多く挙げられたのは、『オフィスにはチームメンバーが出勤しているから』や『自宅には同僚がいないから』である」と報告された。

また、2025年に発表された同研究チームの研究論文も、出勤義務のない日でも従業員が出社したがる動機を分析した結果、「従業員に勤務場所を選択する自由が与えられている場合…(中略)社会的なつながりに関わる要素をより重視する傾向がある」と指摘している。

さらに、オランダのエラスムス・ロッテルダム大学のGijs van Houweilingen氏らの研究(2017年)は、チームメンバー同士の座る位置が近ければ近いほど、従業員の絆が強まることを明らかにした。しかし、チームメンバーとデスクを共有する状況だと人々の能力は十分に発揮されず、自分専用の固定席がある場合に、従業員の気分とパフォーマンスは最も良好な状態になるという。

豪シドニー大学のJungsoo Kim氏らによる研究(2016年)も、チームメンバーと交流しにくい環境で働く従業員たちは、生産性が低下しがちであり、固定席がない場合で特にその傾向が強いと報告している。

固定席は出社率を上げる

豪クイーンズランド大学のKen Tann氏とOluremi Ayoko氏は2020年に発表した研究論文で、固定席などの「テリトリー」を持つことは、従業員の創造性や業績、ウェルビーイングと連動すると論じた。このテリトリーによる「所有感」は、仕事に対する姿勢(コミットメントや満足度)に影響を与え、組織市民行動(従業員による役割外の自発的な行動)を引き出す重要な感覚である。

加えて、独チューリッヒ応用科学大学のVirna Monero-Flores氏は、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)で働く人々を対象とした調査(2020年)で、チームメンバーやプロジェクトパートナーとの近接性が、勤務場所の希望を決めるうえで最も重要な判断基準のひとつであることを明らかにした。この研究によれば「固定されたワークスペースを1日中確保できること」も重要な判断基準だという。

米ロチェスター工科大学のShalini Khazanchi氏らの研究(2018年)でも、「物理的近接性(物理的なアクセスの向上)は、チームメンバー同士の有益な絆を醸成できる」と報告されている。また、環境心理学者でワークプレイス・ストラテジストのNigel Oseland氏らによる調査(2024年)では、「固定席を割り当てられている人は、固定席がない人に比べて出社を好む傾向が強い」という結果が示された。

視界に入る人数を絞る

実際に、従業員の視界に入るチームメイトの数とその配置には、研究に基づくベストプラクティスがある。

英ロンドン大学のKerstin Sailer 氏が主導した研究(2021年)では、従業員が自分の職場環境を低く評価する傾向が強いケースとして、「オフィス内で視野に入るデスクの数が多すぎる」または「自身のデスク周りより広い共有スペースに背を向けて座っている」ことが挙げられている。このような状況下では、他者との情報共有不足や、チームのアイデンティティと結束力の低下など、従業員のチームワークに悪影響が及ぶ恐れがあるという。

この研究結果は、次のことを示している。

「視界に入る人数をある程度減らす一方で、共有スペースの様子が見える位置に座らせ、環境に対するコントロール感を高めることが、人々の集中や生産性に対する肯定的な評価を大幅に上げた。(中略)今後は、オフィスの環境改善に向けた実利的な選択として、より小規模で落ち着いて仕事ができる空間設計が求められる」

共有スペースの座席占有率は70%程度に

英ジャーナル『Journal of Corporate Real Estate』に掲載されたSandra Brunia氏らの論文(2016年)は、前述のSailer氏のチームが指摘した効果の側面を以下のように定量的に示した。

「従業員の集中力とプライバシーの問題を考慮すると、およそ15人以上を収容できる大規模なオープンスペースは避けるべきである。(中略)広大なオープンスペースは、視覚的・音響的に小区画エリアに分割すべきだ」

チームメンバーと隣り合った場所で働くメリットを享受しようとしても、結果としてオフィス設計における技術的な非効率性が生じる場合がある。なぜなら、全従業員が同時に出勤するわけではないため、どの時間帯をみても、使用されていないデスクがほぼ確実に存在するからだ。

しかし、デンマークの建築家であるJan Gehl氏は、著書『Cities for People』(邦題『人間の街:公共空間のデザイン』)で、共有スペースの座席の占有率を70%程度に抑えれば、利用者の気分を最も良好に保つことができると指摘している。

結論として、実証されたデータをもとに総合的に判断すると、チームメンバーが快適な人数で隣り合って働ける職場環境の提供にかかる金銭的コストは、パフォーマンスとウェルビーイングの向上という成果によって十分に相殺されるといえるだろう。


※本記事は、Worker’s Resortが提携しているWORKTECH Academyの記事「Close to colleagues: the benefits of sitting next to team members」を翻訳したものです。 

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