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海外企業がキックオフイベントで行うアクティビティのアイデア10選

海外の企業のキックオフイベントでよく行われるアクティビティを、目的別に「チームビルディング強化」「コミュニケーション促進」「クリエイティビティ促進」「エンゲージメント向上」に分けて10個紹介する。

チームづくりに必要な「経験の共有」

日本でも大ヒットした映画「トップガン マーヴェリック」(2022年公開)。この映画の印象的なシーンに、ビーチフットボールの場面がある。トレーニングそっちのけで砂浜でのビーチフットボールに興じるパイロット訓練生たちに対し、軍の責任者が眉をひそめる。それに対し、彼らの教官であるマーヴェリック(トム・クルーズ)は「Create a Team(チームづくり)」と喝破したのだ。
この場面が示唆するように、チームが信頼とつながりを築くためには、何かを共に成し遂げる経験を共有することが有効である。特にハイブリッドワークが普及し、従業員の居場所が分散した現在の職場環境では、意識して機会を設けなければ「経験の共有」はなされにくい。

そこで本記事では、チームに不可欠な絆と強い人間関係を築くために、主に欧米のキックオフイベントで取り入れられているアクティビティを紹介していきたい。
 

海外企業がキックオフイベントで行うアクティビティ10選

キックオフイベントとは、新しいプロジェクトやチームの発足を祝うために行われるイベントである。欧米のビジネスシーンではさまざまなフォーマットがあり、バリエーションも豊富だ。また、ひと口に「キックオフイベント」と言っても、どのような効果を求めるかによって行われる内容は大きく変わってくる。
今回は大きく4つの目的別に分け、「チームビルディング強化」「コミュニケーション促進」「クリエイティビティ促進」「エンゲージメント向上」のアクティビティを提案したい。

 

【チームビルディング強化をめざすアクティビティ】

最初に紹介するのは、チームをつくり上げ、メンバー間の絆を強めることを目的としたアクティビティだ。キックオフイベントとして最も一般的なニーズに対応したものといえるだろう。
 

1.「チームビルディングトレーニング」タイプ

チームビルディング強化を目的とする場合、グループワークやアウトドアアクティビティを通じて信頼関係の構築をはかる「オリエンテーリング」を採用する企業が多い。オリエンテーリングとは、屋外に設置されたポイントを地図とコンパスを用いながら通過し、フィニッシュまでの所要時間を競う野外スポーツのことである。なかでも筆者が面白いと思ったのはオランダのレンタルボート会社が主催する「Sloepen Spel」というアクティビティだ。

ボートに乗って行われる、水上のキックオフイベント(画像はSloepdelenのWebサイトより)

運河の多いオランダらしく、チーム対抗で行われる水上のオリエンテーリングである。数名ごとにチームに分かれ、それぞれのボートにiPadを持って乗船する。船上でクイズを解いたり、ミニゲームをしたり、課題やクイズに答えたりする必要があり、正解するとiPadに次のチェックポイント座標が表示されるというものだ。
船を進めるにはメンバーの協力が不可欠なため、リーダーシップのある人、ナビゲーションの才能に優れた人、飲み物を注ぐ人、船内の雰囲気を楽しくする人など、個々のパーソナリティがおのずと明らかになってくる。他のチームの妨害ができるところもエキサイティングだ。船上でも簡単な飲食ができるが、開催後の表彰式の後には、ディナーパーティのオプションなどもつけられ、全体の懇親会を兼ねることもできる。
 

2. 「チームビジョンワーク」タイプ

企業やチームが成長するためには、目標やビジョンを明確化し、共有することが重要である。そんな時におすすめなのが、「ビジョンマップ作成ワークショップ」だ。ビジョンマップとは、チームが向かうべき道筋、達成すべきゴールをビジュアル化したもの。実際の地図を活用することもあれば、ピラミッドのような図式を用いて行われることもある。

以下の動画では、ビデオマーケディングの専門家であるコルトン・トルシック氏が、視覚的にわかりやすいビジョンマップの作成手順を解説している。実際のビジョンマップをいくつか見ることができるので参考にしてみてほしい。どういった形式であれ、チームメンバー間で進むべき方向をビジュアルで共有することは、キックオフ時には大いに有効だ。

画像はYouTubeより

 

【コミュニケーション促進をめざすアクティビティ】

キックオフイベントの目的をチームメンバー間のコミュニケーション促進におくこともあるだろう。そんなときには、以下のようなゲームはいかがだろう。
 

1.「アイスブレイクゲーム」タイプ

参加者がお互いを知り、コミュニケーションを活性化するためのゲームとして「2つの真実と1つの嘘(Two Truths and A Lie)」がよく知られている。やり方は簡単で、自分自身についての簡単な「3つのこと」を考える。そのときに、3つのうち2つは真実で、1つだけ嘘の内容にする。3つのことを発表し、どれが嘘なのかを他の参加者が当てていくというシンプルな構成だ。必要に応じて、質疑応答の時間を設けてもいい。テーブルにいる全員を回ったら終了となる。
正解を発表する際、出題者に嘘や真実についての解説を加えてもらうと、より深く人となりを伝えることができる。事前準備や特別なツールを必要とせず、簡単な自己紹介と一体感の醸成が期待できるゲームといえる。
 

2.「プレゼンテーションコンテスト」タイプ

チームごとにプレゼンを行い、アイデアや計画を競い合うコンテスト形式の活動はいかがだろう。例えば、チーム対抗でビジネスのための新しいアイデアを提案するよう促し、小グループでビジネス向けの新製品やサービス案を発表し合うというものだ。メンバー同士でさまざまなアイデアをブレインストーミングし、他のチームや審査員に対して説得力のあるプレゼンテーションを協力しながら作成する。
ここで重要なのは、アイデアに制約を加えないこと。あくまでも目的は、チームのコミュニケーション促進だからだ。現実的でない突飛なアイデアもたくさん出てくるかもしれないが、実際の事業に役立つ革新的なアイデアが現れる可能性も潜んでいる。
 

3.「ストーリーテリングセッション」タイプ

ストーリーテリングとは直訳すると「物語を話すこと」であり、参加者自身の経験やエピソードをストーリーとして語っていくものだ。日々の仕事に追われていると、メンバーの重要な成果や個人のエピソードが認識されないことも多い。そうした隠された経験を共有することで、チームメンバー同士の理解を深め、絆を強めることを目的としている。
仮に口頭で語るのが恥ずかしい場合は、雑誌の表紙や誌面のように写真やコピーを配置して、それを解説するというスタイルも面白い。過去のプロジェクト、ビジネスでの成功体験、個人的な出来事などを事前に雑誌の表紙風にデザインし、他のメンバーに発表するのだ。事前準備が必要となるが、雑誌の表紙風にデザインできるアプリは多数リリースされているので、要素さえあれば作業はそれほど大きな負担にはならない。チームメンバーがどのような表紙をつくるのか、見てみたいと思う人も多いのではないだろうか。

雑誌の表紙風にタイトルや見出しを作成できるアプリの一例。日本語入力も可能(画像はAppleのApp Storeより)

 

4. 「ロールプレイング」タイプ

チームメンバーが特定の役割やシナリオを演じることで、コミュニケーションや協調性を高めるという方法もある。「マーダーミステリーゲーム」と呼ばれるタイプのロールプレイングイベントは、ホスト(イベント主催者)が事前につくった犯罪計画に沿ってチームメンバーが容疑者や刑事の役を演じる。プレーヤー(チームメンバー)が協力して手がかりを集めたり、個別に謎を解明するために競い合ったりするゲームだ。

マーダーミステリーゲームを楽しむ参加者たち(画像はMurder Mystery Co.のWebサイトより)

 

小道具や衣装に凝ると、イベントはより臨場感のあるものになる。そうした手配や事前の脚本作成の手間などが必要になるため、アメリカにはマーダーミステリーゲーム専門のイベント主催会社も存在する。企業イベントのほか個人宅のディナーなどでも大人気だという。イベントの後は、チームメンバーとすっかり打ち解けられるだろう。謎解きゲームは日本でも人気があり、社内イベント用にサービスを提供する企業も現れ始めている。

 

 

【クリエイティビティ促進をめざすアクティビティ】

キックオフイベントの目的をチームメンバーの創造性向上やアイデア出しトレーニングなどにおく場合、以下のようなアクティビティがある。
 

1.「アイデアワークショップ」タイプ

海外企業のキックオフイベントでは、「クックオフ(Cook Off)」がよく行われる。料理をつくり、審査員がその味を審査するコンテストだが、キックオフイベントで行う場合は、チームを小さなグループに分け、あらかじめ決められたメニューを各チームが美味しくつくれるように挑戦するなど、チームワークの要素を加えると効果的だ。
調理するメニューは、ピザやパスタ、スイーツなど何でもかまわない。そこに縛りをひとつ加え、例えば「メープルシロップを使う」というように、すべてのグループが使用するべき材料をひとつ設定するとよい。制約があるなかで、新しくかつ美味しい料理をつくるためには創造性とアイデアが必要であり、チームでまとめ上げるためにはリーダーシップや協調性も必要となってくる。
 

2. 「イノベーションワークショップ」タイプ

チームメンバーのイノベーション能力や課題解決能力を高めたい場合は、「エッグドロップチャレンジ(The Egg Drop Challenge)」がおすすめだ。これはアメリカやヨーロッパではメジャーなアクティビティで、子ども時代に学校やサマーキャンプなどで経験したという人も多い。
エッグドロップチャレンジは非常にシンプルで、生卵を数メートルの高さから落としても割れないように工夫するゲームである。チームを数名のグループに分け、主催者が用意した素材(紙くずや輪ゴム、綿など)を使い、卵が落ちても割れないように試行錯誤を繰り返す。最初のほうはなかなか上手くいかないが、何が良くなかったかについてグループで検証を行い、生卵に対してより良い状況をつくり上げていくところに魅力がある。
実施後は振り返りを行い、どういった工夫を行ったのか、その理由、経過中に起こったハプニング等について尋ね、個人のポジティブな貢献を明確化するとよい。卵を割らないというシンプルな課題だからこそ無限の解決策があり、創造的思考が試される。
 

 

【エンゲージメント向上をめざすアクティビティ】

全社的なキックオフイベントなどで、企業理念やビジョンの共有、エンゲージメント向上を主な目的とする場合、次のようなアクティビティがおすすめだ。
 

1.「モチベーションブースト」タイプ

欧米では、社会奉仕活動と融合させたオフィスイベントなどもよく行われている。例えば、チームメンバーで地域のエリアの清掃に参加したり、高齢者施設でのボランティアに参加したりといった内容だ。社外でチームメンバーと共に過ごし、共同作業をすることで、お互いの絆を深めることが期待できる。また、人の役に立つ経験を通して自己肯定感が育まれ、仕事のモチベーションを高めてくれる可能性もある。さらには地域にも貢献できるという、一石三鳥の活動といえる。

 

2. 「エンターテイメントショー」タイプ

参加者やプロのエンターテイナーによるショーを楽しんだり、チーム対抗のクイズに挑戦したりすることで、チームの結束力を高める方法もある。このエンターテイメントショータイプで有名なのが、コカ・コーラ社のキックオフイベントだ。

大型イベントドームを貸し切ったコカ・コーラ社のキックオフイベント

夜はドリンクバーやライブもあるパーティに(画像はすべて舞台芸術を担当したNENAD MARKOVICのWebサイトより)

 

800名が参加する企業の年次パーティーも兼ねており、講演やその年のMVP従業員の表彰なども行われる。ドリンクや軽食が振る舞われ、夜の部はバンド演奏なども加わって、リラックスしたパーティになる。このような雰囲気なら、チームメンバーはもとより、上司や他部署のメンバーともくだけた会話ができそうだ。これほど大規模なものでなくても、小さなライブ会場を貸切ったり、舞台装飾や進行をプロに依頼したりすることで、非日常の雰囲気が演出できるだろう。企業理念やビジョンを改めて印象付ける効果も高く、会社へのエンゲージメント強化が期待できる方法だ。

 

 

目的に応じたアクティビティの選択を

今回は、海外のキックオフイベントでおなじみの10のアクティビティを紹介した。すぐに取り入れられそうなものから、それなりの事前準備が必要なものまでさまざまだが、一番重要なのはそのキックオフイベントにどのような成果を求めているかだ。目的に応じたアクティビティの選択に本記事がお役に立てば幸いである。

この記事を書いた人:Naoko Kurata