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なぜ企業はオフィスにカフェテリアをつくるのか?現代のワークスタイルや経営課題における効果を探る。

[December 12, 2017] BY Shinji Ineda

皆さんは社員食堂を利用したことはあるだろうか?これまで社員食堂と呼ばれていたスペースは近年、内装のデザインからメニューに至るまで様々な創意工夫がなされている。もはや従来の社員食堂という呼び方より、カフェテリアという方が相応しいと言えるだろう。ご存知の通りサンフランシスコやシリコンバレーでも多くの企業が、自社でカフェテリアを構えており、ランチタイムを中心として多くの社員がメニューから食べたいものを選び、楽しく食事の時間を過ごしている。

しかし多大な設備投資がかかる上に、時期ごとのメニューの考案や衛生面の管理など、運営に大きなリソースを割くカフェテリアを、なぜ企業はオフィスに用意するのだろうか?今回は、日本でも多く認識されている福利厚生や社内交流というところから少し視点を変え、カフェテリアが現代のワークスタイルや経営課題にもたらす効果について考えていきたい。

ミレニアル人材の獲得

社員食堂はこれまでも社員への福利厚生として利用されてきた。自身でお弁当を持ってくる人もいるだろうが、社外の飲食店や店頭でお弁当を毎日購入するのは意外と金銭的な負担になる。そこで企業は、社員食堂で食事を安価または無料で提供することで、社員に魅力を感じてもらおうと努力してきたのである。もちろんその魅力は採用にも効果をもたらしてきた。

ただしミレニアル世代については、また少し事情が異なる。ミレニアル世代とは1980〜2000年代初頭に生まれた世代で、幼い頃よりテレビゲームやインターネット・SNSに触れ、デジタルネイティブとも呼ばれる若者層である。この世代はデジタル技術の発達によって、それまでとは異なる学生生活を送っている。その中の一つがおしゃれなカフェの利用だろう。彼らは学校が終わった後も、自身のスマホやノートPCなどデジタルデバイスを片手にカフェに集まり、そこで勉強をしたり、会話を楽しんだりしている

日本でも現在多くの人がスターバックスを利用しているが、ゆったりしたソファや落ち着いた照明の明かりには、誰しもがついつい長居したいと思うのではないだろうか。そのスターバックスが日本に参入したのが1996年だ。東京銀座に日本1号店を出店した後、日本各地に店舗を増やしていった。2015年には国内で1000店舗に到達し、現在では47都道府県全てにスターバックスは存在する。年代を追っていくと、ミレニアル世代の成長とあわせて、スターバックスがいかに身近な存在になっていったかが理解できるだろう。オフィス構築のプロジェクトにおいて「スターバックスのようなスペース」を望む声が多くあるが、実はこれは極自然なことであり、そして事実世界中で要望されていることなのである。

近年の社員食堂が街中にあるカフェテリアのイメージに近づいている理由は、ミレニアル世代にとって居心地の良いスペースを求めた結果であると考えてよいだろう。

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生産性の向上

社員同士の昼食による交流が人間関係構築に寄与し、チームのパフォーマンス向上につながるという考え方は、今さら述べることではないだろう。事実、多くの企業が生産性向上に向けてチームビルディングに力を入れて取り組んでおり、もはやその取り組みは昼食に限ったものではない。以前ご紹介したアウトドアワークスタイルも、まさにその一つだ。

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しかしカフェテリアを社内に設けることは、より直接的な効果につながることを、みなさんお気づきだろうか?それは休憩の質向上による時間の効率化である。働く人々が自らの時間を切り売りしている考えの強い日本では、だいたいの人が企業の決めた時間に沿って休憩をとっている。そのため「社内にカフェテリアを設けることで時間効率が上がる」と言われても、イメージをしにくい人が多いだろう。

しかし西海岸では、働く人々が自らの時間を企業へ提供しているというより、自身がどのような成果を企業に提供できるかを強く意識している。解りやすくいうと成果主義だが、つまりは休憩時間を取ろうが取るまいが、価値のある成果を多く提供することが大事であるという考えである。そのためには質の高い休憩を取ることが自身のパフォーマンスにとって重要になる。また個人により休憩時間の過ごし方は異なるが、しっかり心身が休まるのであれば、その時間はもちろん短いに越したことはないはずだ。

もしあなた自身やあなたの勤める会社が、労働時間の売り買いより成果を重視しているとしたら、普段社員が利用している社外の飲食店より優れた環境を社内に用意することで、これまでにない成果が生まれるかもしれない。

情報漏洩リスクの回避

皆さんは同僚と昼食を取っているとき、どのような会話をしているだろうか。もちろんプライベートな話で盛り上がっていることもあると思うが、おそらくその多くは仕事の内容であろう。話題も具体的な業務内容から顧客・社内制度・人間関係など多岐にわたるはずだ。しかし何気なく外部で交わしている会話が、競合他者や情報を得たい第三者にとって、おいしい情報ばかりなのはお気づきだろうか。ノートPCや携帯電話の普及により、備品のセキュリティ管理に力を入れている企業は多いが、最も重要な情報を持っているのは社員であることを忘れてはならない。しかしそのようなリスクも、オフィスにカフェテリアを設け利用を推進していくことで、多少は回避につながるのではないだろうか。もちろん「あなた達は社外で何でも話してしまうので、外食は禁止だ!社内のカフェテリアを利用しなさい!!」なんて伝え方は不適切である。あくまでカフェテリアの利用は命令ではなく、自主的に社員に選択してもらえるよう、企業側が快適性や特典について積極的に工夫を行なっていく必要がある。

少し話は変わるが、これまで日本国内と西海岸で多くのオフィスに訪問しつつ話を聞いてきた中で、企業における情報取り扱いの違いについては、個人的に面白さを感じている。例えば西海岸の企業のオフィスを見てみると、せっかくミーティングルームを使っているのに、ドアを開けっ放しで会議を行なっている様子をたまに見る。これは同じ社内の人間であれば多少情報が漏れたとしても、そこに不意な意見やアイデアが飛び込み、スピードやイノベーションにつながることを期待しているからだと聞いたことがある。会議室のガラスも日本のように目隠しなどなく透明ガラスをよく用いているが、これも同様のことが理由と言えそうだ。この社内情報の取り扱いにおける違いとイノベーションについては、また次の機会として話を戻そう。

オフィス内にカフェテリアを設けることはイコール、社員が周りを気にせず仕事の話題と共に食事を取れる環境を提供できることだと言えるだろう。それはどこでも働ける環境が整いつつある現代において、情報漏洩という企業・個人双方のストレスを解放することにつながるはずだ。

【関連記事】企業カフェテリアが禁止に?巨大テック企業従業員も困惑の事情とは

時代とともに変わる、オフィスのカフェテリアの役割

今回あげた3点以外にも、先にあげたチームビルディングやウェルネスカルチャーの浸透など、オフィスのカフェテリアは多くの役割を担うことができる。カフェテリアは一見贅沢な空間に思えるかもしれないが、テクノロジーの発達により個々が多様な働き方を実現できるようになった昨今、実際にチームとして働くためのより現実的で、一番簡単な方法なのかもしれない。

そして何よりも、美味しい食事をリーズナブルな価格で食せることは、多くの社員の笑顔につながるはずだ。

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この記事を書いた人

Shinji Inedaフロンティアコンサルティングにて設計デザイン部門の執行役員を務める。一方、アメリカ支社より西海岸を中心としたオフィス環境やワークスタイルなどの情報を、地域に合わせてローカライズ・ポピュラーライズして発信していく。



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