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オフィス選びの新たな指標へ。テナントビルで進む、電力の「100%再エネ」化

[May 16, 2022] BY Wataru Ito

都心部に増える、再生可能エネルギー100%のオフィスビル

近年、再生可能エネルギー(以下、再エネ)由来の電力を導入する賃貸オフィスビルが増えている。三菱地所株式会社は、2022年1月時点で、東京・丸の内エリアを中心に19棟のビルで使用される電力をすべて再エネ由来に切り替えた。これにより、入居するテナント企業は、オフィスの使用電力を100%再エネに切り替えることが可能になった。三井不動産株式会社や住友不動産株式会社、東急不動産株式会社なども同様の動きを加速させている。

この背景には、テナント企業における再エネ電力に対するニーズの高まりがある。事業活動における二酸化炭素(CO2)の排出量を削減するうえでは、オフィスで使用する電力の見直しが有効と考えられているためだ。

化石燃料由来の電力から、再エネ由来の電力へ。自社ビルに比べ、取り組みが立ち遅れていた賃貸オフィスビルの最新動向について、大手不動産会社とテナント企業、双方の事例を中心に紹介したい。

関連記事:脱炭素社会とは? 日本が掲げる目標と国内企業の取り組み事例

テナントビルでも急速に広がる、再エネ電力導入の動き

環境省によると、業務部門(事務所ビル、商業施設などの建物)からのCO2排出量は、2019年時点で国内全体の約2割を占めるという。また、1990年度と2019年度を比較すると、産業部門からのCO2排出量は24%減少したが、業務部門では48%増と大幅に増加している。オフィスビルにおいて、再エネを活用したCO2削減は喫緊の課題となっている。

一方で、オフィスビルの大半を占めるテナントビルでは、再エネ電力への切り替えが難しいとされる。それは、建物の開発・運用者(不動産会社)と使用者(テナント企業)が異なるためだ。近年、多くの企業間で再エネ導入の取り組みが活発化しているが、自社ビルとは対照的に、賃貸オフィスではその動きが鈍かった。

そんな状況に風穴を開けようとしているのが、大手不動産会社だ。自社とテナント企業、双方の脱炭素化を実現すべく、所有する賃貸オフィスビルへの再エネ電力導入を急ピッチで進めている。

また、行政もこうした動きを後押ししている。2021年9月、環境省はテナント企業などによる脱炭素化の取り組みをまとめた「リーディングテナント行動方針」を策定。この行動方針に賛同する企業や自治体を募集・公表することで、テナント企業の再エネ活用ニーズなどを建物オーナーに知らせ、テナントビルの脱炭素化促進を目指している。

テナントビルで再エネ電力を調達する方法

では、不動産会社などの建物オーナーはどのようにして再エネ電力を調達し、テナントに供給するのだろうか。調達については、敷地内に設置されているエネルギー源の活用のほか、太陽光、風力、バイオマスなどの再エネ発電所から直接調達する方法、そして、少し複雑な話になるが「非化石証書」の利用などがあげられる。

再エネ電力などの非化石電源には、電気そのものの価値に加え、「CO2を排出しない」という環境価値がある。ただし、電力の取引市場で調達する場合、発電方式を選ぶことができないため、その環境価値を「非化石証書」という証書にして売買している。電気の小売事業者がこの証書を購入すると、扱う電気のCO2の排出量が少ないことの証明となるのだ。この非化石証書と組み合わせて電気を供給することで、小売事業者は実質的に再エネ電力を届けていると見なされる。

大手不動産会社における再エネ電力供給の動向

再エネ電力をテナントに供給する仕組みも様々だ。ビル全体で一括して再エネ電力を導入する企業もあれば、ロビーやエレベーター、廊下などの共用部と、テナント各社が使用する専有部で切り分ける方針の企業もある。各社の取り組みを見ていきたい。

1. 三菱地所株式会社

ビル単位で再エネ電力の導入を進めている三菱地所。2022年度中に東京都内・横浜市内に所有するすべてのオフィスビル、商業施設の全電力を再エネ由来とすることを発表している。導入する再エネ電力は、太陽光、風力、バイオマスなどの再エネ発電所から送電される「生グリーン電力」と、再エネ電力証書である「トラッキング(追跡)付FIT非化石証書」の購入から成る。これにより、入居するテナント企業は、自社で再エネ電力を利用しているものと認められる。

(画像は三菱地所株式会社のプレスリリースより)

同社は、2050年までに再エネ電力比率を100%とすることを目標に掲げている。すでに、2021年度の切り替えによって30%程度を達成。2022年度の切り替えによって50%程度まで達する見込みで、当初の目標を大幅に上回るペースで進めている。

2. 東急不動産株式会社

同じく、ビル単位で再エネ電力の導入に取り組む東急不動産は、2022 年度中に同社単独保有のすべてのオフィスビル、商業施設を再エネ由来の電力に転換する予定だ。再エネ事業「ReENE(リエネ)」に取り組んでいる強みを活かし、自社で保有する再エネ発電所の「トラッキング付FIT非化石証書」を利用している。なお、テナント企業は通常の電気料金で再エネ由来の電力を使用できるという。

再生可能エネルギーの導入スキーム
(画像は東急不動産株式会社のプレスリリースより)

また、不動産会社としていち早く「RE100(事業活動で使用する電力を100%再エネでまかなうことを目指す国際イニシアティブ)」に加盟した同社は、当初2050年までの目標達成を掲げていたが、25年前倒しして2025年とすることを発表している。

3. 三井不動産株式会社

三井不動産では、オフィスビルを共用部と専有部に切り分け、それぞれに再エネ導入を推進している。同社は2030年度までに、保有する全国施設の共用部および自社利用部の電力において、グリーン化を実現する計画だ。まずは2022年度までに、首都圏25棟の自社使用電力について、「非化石証書」などを利用して実質的に再エネとする。

三井不動産が推進するグリーン電力化の仕組み(イメージ)
(画像は三井不動産株式会社のニュースリリースより)

また、テナント専有部においても、2021年4月より「グリーン電力提供サービス」を開始した。これは、「トラッキング付非化石証書」の使用により、実質的な再エネとして電力を提供するものだ。テナント各社の経営計画や段階的なグリーン化計画などに応じ、導入時期や導入割合などを柔軟に設計できるという。

4. 住友不動産株式会社

テナント専有部への再エネ電力の導入支援に注力する住友不動産は、テナント各社の方針に配慮し、複数のプランから調達方法を選べる仕組みを整えている。2021年11月に提供を開始した「グリーン電力プラン」では、3つの選択肢を設定。テナント企業が、一般的な手法である「①非化石証書を用いた実質グリーン電力」だけではなく、「②テナント企業が所有する発電所由来の非化石証書を用いた実質グリーン電力」や、「③新設発電所由来の追加性のある生グリーン電力」まで選べる点に特徴がある。

③の「追加性」とは、その電力の使用が新たな再エネ電源の増加につながることを示す言葉だ。欧米などの環境先進国では、追加性を有する再エネかどうかが重視される。住友不動産は再エネの「質」にまで踏み込んだプランを設定することで、環境意識の高いテナント企業の意向に応えようとしていることに注目したい。

テナント企業の事例に見る、オフィスの脱炭素化

ここまで、建物オーナー側の取り組みを見てきたが、入居するテナント企業側にはどのような狙いやメリットがあるのだろうか。最新の事例を以下に紹介する。

1. デロイト トーマツ グループ

三菱地所が保有する新東京ビル、丸の内二重橋ビルに入居するデロイト トーマツ グループ。2021年の4月と5月にそれぞれ再エネ電力への切り替えが行われ、同グループが使用する総オフィス面積のおよそ6割のスペースが再エネ電力で稼働する体制となった。2030年までの「Net Zero Emission」達成を目標とする同グループは、同年を期限として、オフィスで使用するエネルギーの100%を再エネで調達するとしている。三菱地所の再エネ電力調達によって、目標に大きく近づいた形だ。

2. 伊藤忠エネクス株式会社

三井不動産が保有する、霞が関ビルディングに入居している伊藤忠エネクス。実質的な再エネをテナントに提供する「グリーン電力提供サービス」の開始に伴い、同サービスを活用して2021年4月より電力のグリーン化を実現した。これにより、同社の電気使用によるCO2排出量は約8~10%削減されている。

3. アストラゼネカ株式会社

アストラゼネカは、2021年5月、東京ガス不動産株式会社が手掛けた田町ステーションタワーNに本社を移転。100%実質再エネ電気の利用を、オフィステナント単位で開始した。

同社は2025年までに、日本を含むグローバル全体での自社事業において、温室効果ガス排出量ゼロの達成を目指している。環境省の「J-クレジット制度」*の活用により、すでに2020年末時点で、日本の全事業所で消費した電力量の再エネ利用100%を達成しているが、この取り組みはそれをさらに進化させたものとなる。テナント企業が建物オーナーに要望する形で、テナント単位での再エネ利用を実現したという意味でも、画期的な取り組みと言えるだろう。

※J-クレジット制度:省エネルギー設備の導入や再エネ利用によるCO2などの排出削減量、適切な森林管理によるCO2などの吸収量を「クレジット」として国が認証する制度のこと。

4. セガサミーグループ

2018年に、グループ20社を住友不動産大崎ガーデンタワーに集約し、3割強のエネルギー削減を実現したセガサミーグループ。さらなるCO2排出量の削減に向けて住友不動産に協力を要請し、テナント専有部に前述の「グリーン電力プラン」の「③新設発電所由来の追加性を有する生グリーン電力」を導入した。太陽光由来の再エネ電力を使用し、太陽光発電でまかなえない夜間などは「非化石証書」を併用することで、グループ本社の使用電力を実質的に100%グリーン電力化している。

再エネ電力が、オフィス選びの基準を変える

脱炭素経営を推進する企業にとって、入居する賃貸オフィスの電力が再エネ由来かどうかは重要な意味を持つ。特に、エネルギー消費量の多い本社オフィスに再エネ100%の電力を導入できた場合、CO2削減や再エネ推進の取り組みは一気に前進するだろう。

建物オーナーに再エネ電力の供給を求めるテナント企業は、今後さらに増えていくものと思われる。環境省が策定した「リーディングテナント行動方針」のように、行政による支援もよりいっそう拡充されていくだろう。また、オフィス移転にあたっては、再エネ電力を使用できるか否かが、入居先を選ぶ基準の一つになっていくかもしれない。

テレワークの普及によってオフィスビルの空室率が上昇する昨今、建物オーナーとしては自社物件の差別化ポイントを打ち出したいところだろう。環境への取り組み姿勢が問われるこれからの時代、再エネ電力の供給は明確な付加価値となるのではないだろうか。

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この記事を書いた人

Wataru Ito フリーランスのコピーライター。中小企業やBtoB企業を中心に、ライティングを通してブランディング、採用広報、販売促進をサポート。建築学科卒、建材メーカー勤務経験あり。



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