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新たな出張スタイルとして普及する? 「ブレジャー」のメリットと注意点

[April 13, 2021] BY Yumi Uedo

ブレジャー(ブリージャー)とは

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、この1年、人の移動は限定的なものになっている。そんな中、ポスト・コロナを見据えて日本でも関心が高まると予想されるのが「ブレジャー(ブリージャー)」だ。観光庁も、ブレジャーを新たな旅のスタイルとして位置付け、国内での普及に向けて検討を重ねている。

ブレジャー(Bleisure)は、「ビジネス(business)」と「レジャー(leisure)」を組み合わせた造語で、「出張休暇」とも訳される。観光庁のウェブサイトでは、ブレジャーを「出張等の機会を活用し、出張先等で滞在を延長するなどして余暇を楽しむこと」と定義している。新たな出張スタイルとして日本でも注目されはじめているが、欧米では数年前より普及が進んでおり、すでに一般化しつつある。

2014年に、アメリカのBridge Street Global Hospitalityが、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア太平洋地域の宿泊客640名を対象に行った調査の報告書「The Bleisure Report 2014」では、次のような回答が得られている。

・回答者の83%が、出張の際に街を探索している
・回答者の30%が、出張に2日の休暇を組み合わせてブレジャーを楽しんでいる
・半数近くの回答者が、出張のたびに個人的な旅行を組み合わせている
・回答者の78%は、ビジネス旅行に余暇を加えることで、仕事の価値を高められると考えている

この報告書からも、2014年の時点でブレジャーを楽しむ人々がいた様子がうかがえる。

ブレジャーの世界的な広まりを受け、日本でも2020年初頭から観光庁主導で「ブレジャー促進連絡会」を開催している。これは、会議や展示会、研修などのために訪日する外国人に向け、出張の前後に余暇を組み合わせた国内旅行を推進するもので、日本での消費額向上をねらいとしている。

今後、パンデミックが収束して移動の制限がなくなれば、ブレジャーは再び世界的な広まりを見せると予想される。

ブレジャーとワーケーションの違い

ブレジャーに類する言葉として、「ワーケーション」があげられる。ワーケーション(Workcation)は、「仕事(Work)」と「休暇(Vacation)」を合体させた造語で、テレワークを活用して観光地やリゾート地などで余暇を楽しみながら、仕事も行うワークスタイルを指す。

両者は似た意味合いで捉えられがちだが、決定的な違いがある。それは、利用者の働く環境だ。

ブレジャーは「出張先で仕事を終えた後に休暇を楽しむ」ものであり、出張がなければ利用は難しいが、出張があればどのような職種でも利用できる。一方で、ワーケーションは「休暇先でテレワークを活用して仕事をするスタイル」を主に指すため、テレワークのような遠隔地で仕事ができる制度が整っている企業で、なおかつそれが可能な職種に利用が限定される。

日本では、ワーケーションのほうが言葉としての浸透率は高いようだが、上記の違いから、職種による不均衡が起こらぬよう両者の導入を検討するのも一つの策であろう。

関連記事:大手企業から自治体まで。ワーケーションの成功事例と今後の展望

ブレジャーを導入するメリット

ブレジャーの導入は、従業員・企業・地域それぞれにメリットをもたらす。従業員にとってはストレス低減やリフレッシュにつながり、モチベーションや業務効率の向上も期待できる。その結果、帰属意識が高まり、企業においては生産性向上や離職率の抑制も見込めるだろう。滞在する地域の活性化にもつながり、自治体にとってはその土地の魅力を広く知ってもらう機会ともなる。

また、ブレジャーは出張をベースとしているため、滞在する地域への理解をビジネスに活かせることもメリットとなる。

例えば、観光する中でその地域に詳しくなり、現地のクライアントとの関係性が向上するというのもその一つだ。また、滞在を通して地域の事情を把握することで、顧客が抱えている課題をより深く理解できるようになる、新規取引先の開拓につながる、などの効果も得られるだろう。

日本国内での導入事例

日本国内でブレジャーを活用している企業はまだ少なく、2019年5月に制度を導入した日本航空(JAL)がその先駆けとなっている。同社は2017年にワーケーションを導入しており、休暇制度の多様化が進んでいる代表的な企業の一つだ。

また、JALでは、ブレジャーを促進する旅行パック「ブリージャーサポート」の販売も行っている。北米線片道分の運賃とハワイ線片道分の運賃を組み合わせて手配できるサービスで、北米出張の帰りにハワイでの休暇を楽しみたい出張者を対象としている。なお、北米からハワイまでのフライトは別途手配が必要となる。

関連記事:コロナ禍で移り変わるワーカーの意識。2021年、働く環境に求められることとは

休暇中にケガをしたときはどうなる? 導入時の注意点

JALのようにブレジャーを制度として導入してはいないものの、同様の取り組みを水面下で許可している企業もあるかもしれない。あるいは、これから制度化を検討する企業もあるだろう。そこで、ブレジャーの導入や利用にあたって注意したい点を、以下に紹介しておく。

1. ブレジャーの費用負担は?

出張の経費として認められるのは業務に関わる範囲に限られ、余暇部分で必要になった交通費や宿泊費などは会社に請求できないのが一般的だ。どこまでを経費として負担するかは、それぞれの企業での判断となるが、認識に違いが生じないよう「出張旅費規程」で明確に示しておく必要があるだろう。

2. ブレジャー中のケガや事故は、労災保険給付の対象になる?

労災保険とは、業務上のケガや病気、障害などに対して保険給付を行う制度である。観光庁は労災保険給付について、出張中のケガや病気のほか、休暇後に出張の帰路についた後で事故に遭った場合も、業務に関連する行動の範囲内と認められれば対象となるとしている。

※就業形態によっては当てはまらないケースもあり、労災保険給付の対象になるか否かは個別案件ごとの判断となる。

一方で、休暇中の事故によるケガや病気は、業務中に起こったものではないため、ブレジャー中であっても労災保険給付の対象外となる。出張先から休暇先まで移動した場合も、その移動については業務外とみなされ、給付の対象外となる点に注意したい。

※就業形態によっては当てはまらないケースもあり、労災保険給付の対象になるか否かは個別案件ごとの判断となる。

このほか、緊急事態が起きたときに出張者の所在がわかるよう、企業側が全旅程を把握しておくこと、会社に不利益をもたらすような行動を慎むよう出張者に求めることなども、ブレジャーを導入する上で必要な対応と言える。トラブルが生じないように企業と出張者の双方が規定を正しく認識し、出張者はそのルールの範囲内で余暇を楽しむことがブレジャーの運用には求められる。

ポスト・コロナで再び人の往来が盛んになれば、日本でもブレジャー制度の整備を求める声が高まるかもしれない。各企業の動向とあわせて、観光庁や自治体などの取り組みにも引き続き注目していきたい。

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この記事を書いた人

Yumi Uedo編集者/ライター。従事していた出版社およびWebメディアでは、大手企業・自治体をクライアントに持ち、多数のPR記事の取材・執筆・編集を担当。現在はフリーランスとして企業のコラムページを複数担当するほか、サスティナブルなライフスタイルの発信にも力を入れている。