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オフィスでも広がる「メタバース」の活用ー バーチャル会議、ワークプレイス、VR展示会

[May 31, 2022] BY Rui Minamoto

「メタバース」とは何か?

2021年10月、Facebook社が社名を「Meta(メタ)」に変更したことで話題になった「メタバース」。「meta(超越した)」と「universe(世界)」を組み合わせた造語であり、主にオンライン上に構築された仮想空間を指すことが多い。とはいえ、新しい概念であるため、その定義は現在も更新中だ。

メタバースについて、同社は「現在のさまざまなオンライン上でのソーシャル体験を掛け合わせたようなもの」であり、「時には3次元に拡張され、時には現実世界に投影される」と説明。ソーシャルテクノロジーの進化に貢献するため、今後は2次元的なスクリーンの先にあるVR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの没入型体験の提供を目指していくという。

Meta社のメタバース開発へのシフトは象徴的だったが、米国の調査会社Emergen Researchは、世界のメタバース市場が2020年の476.9億米ドルから、2028年には8289.5億米ドルまで成長すると分析している。年平均成長率にすると、43.3%の拡大だ。

すでにメタバースのアイデアは、ゲームやオンラインイベントといった形で実現している。
ここへきて、VRによる仮想空間内でのリアル体験、ARによる仮想空間と現実空間の融合、アプリ内暗号資産(仮想通貨)などの技術革新がめざましい。メタバース活用の可能性が圧倒的に広がっているのだ。

日本でメタバースを「知っている」人は1割未満

今やメタバースはエンターテインメント領域にとどまらず、経済活動やコミュニティ形成での活用が世界的に期待されている。その一方、日本における認知度や実際の利用率は芳しくないようだ。

日本トレンドリサーチが2021年12月~2022年1月に日本全国の男女2200名を対象に実施した調査によると、メタバースという言葉を「知っている」と回答した人は8.3%、「聞いたことはある」と回答した人は16.1%と、合わせても24.4%にとどまった。また、「知っている」「聞いたことはある」と回答した人のうち、メタバースの利用経験を持つのは60.3%であった。

利用したメタバースのサービスについては、オンラインゲームやチャット、バーチャルイベントが多く、少数ながらVRを活用した旅行や株取引をあげる声も見られた。日本でメタバースの認知度を上げるには、ビジネスシーンや行政サービスなどでの活用が鍵になるかもしれない。

オフィスにおけるメタバースのサービス事例

パンデミックは様々な業界に影響を及ぼしたが、メタバース市場においてはポジティブな変化が見られる。特に、新様式として定着しつつある在宅勤務の増加傾向は、市場の収益をさらに促進するものと予想されている。

メタバースのメリットとして、国や地域を問わずコミュニケーションをとれること、非現実的な体験をリアルかつ手軽に得られることなどがあげられる。これらの特徴を活かした、オフィスにおけるサービス事例を紹介する。

1. メタバースの急先鋒が提供するバーチャル会議室「Horizon Workrooms」

Facebookから改名したMeta社は、2021年8月に「Horizon Workrooms」のベータ版を公開した。「理解し合うための第一歩は、(バーチャルで)同じ部屋に集まることから始まる」とのコンセプトで、ユーザーが物理的にどこにいても、アバターとしてバーチャルな会議室に集まり、一緒に仕事ができるように設計されている。サービスの利用には、VRヘッドセット「Meta Quest 2」が必要となる。

(画像はMeta QuestのWebサイトより)

なかでも画期的なのは、実世界で使用しているデスクトップやキーボードをVR内に反映させられること。対応機種は限られるが、この仕様により仮想空間内でも画面共有やメッセージの送信、タイピングなどをスムーズに行える。また、コントローラーを使えば、共有のホワイトボードに文字や絵をシームレスに書き込むことも可能だ。

同サービスは、リアルな会議室の再現性を高めることで、「みんなが同じ場所にいる」という感覚を各メンバーが持てるように促している。そうした仕掛けが、臨場感のあるバーチャル空間を生み出しているのだろう。

2. メタバースの入り口を目指す「Mesh for Microsoft Teams」

Microsoft社は、2022年中に「Mesh for Microsoft Teams」の提供を開始する予定だ。物理的に異なる場所にいる人々が、共通の3次元体験を通して共同作業に参加できる「Microsoft Mesh」のMR(複合現実)機能と、仮想会議への参加やチャット送信、共有ドキュメント上でのコラボレーションなどを可能にする「Teams」の生産性ツールが融合されたものになるという。

(画像はMicrosoftのWebサイトより)

同社は、Mesh for Microsoft Teams を「『メタバース』と呼ばれる、人、場所、モノのデジタルツインが配置されたデジタル世界への入り口」と定義。一般的なスマートフォン、ノートPC、MRヘッドセットから誰もがアクセスしやすい設計を意識している。

同サービスの企画チームは、世界中に約70万人の社員を抱えるグローバル企業Accentureと協力し、Meshを活用した没入感ある仮想空間の構築に数年かけて取り組んできた。その一例が、「Nth Floor」と呼ばれる仮想キャンパスだ。Accentureの社員は、同キャンパスで開催される交流会やプレゼンテーション、パーティーなどのイベントにあらゆる場所から参加できる。

VRのなかで世界中のAccentureの社員が出会い、有意義な会話を楽しみ、パンデミック以降は新人研修の場としても活用。国や地域、時間の垣根なくバーチャル空間を共有できるという、メタバースの利点が存分に生かされている。まずは2022年前半に、Mesh for Microsoft Teams のプレビュー版として、Teamsでのビデオ会議にパーソナライズされたアバターで参加できるサービスの提供を始める予定だ。

3. “孤独”を解消するビジネス・メタバースを推進する「oVice」

2020年2月、石川県七尾市で代表取締役のジョン・セーヒョンによって設立された、oVice株式会社。週刊東洋経済の「すごいベンチャー100 2021年最新版」に選出されるなど、創業して早々に注目されている新進気鋭の企業だ。

同社が提供する「oVice」は、オンライン上で自分のアバターを自由に動かし、相手のアバターに近づくことで話しかけられる2次元のバーチャル空間。テレワークにおけるバーチャルオフィスや、展示会をはじめとするオンラインイベント会場など、様々な場面での活用が進み、2022年2月時点で発行スペース数は2万件を突破している。

(画像はoViceのWebサイトより)

同サービスのユニークな点は、自分のアバターに近い声は大きく、遠い声は小さく聞こえるところにある。それにより、まるで現実の空間で話しているような感覚を味わうことができる。偶然聞こえてきた会話に参加して、その会話のなかで生まれた新たなアイデアを形にするというシナジーも生まれやすい。

oViceは、SaaSマーケティングプラットフォームの「BOXIL」が主催する「BOXIL SaaS AWARD 2022」で「SaaS トレンド大賞 コミュニケーショントレンド2022」を受賞。評価の対象となったのは、人材総合サービスを提供するエン・ジャパン株式会社の導入事例だ。

エン・ジャパンは、oViceを利用して20フロア以上に及ぶバーチャル本社を開設。1200人以上がそこでの勤務を開始した。社員アンケートでは、93%の社員がバーチャルオフィスを導入して良かったと回答。「誰かと話していたら、実際のオフィスのように近くで聞いている同期や先輩が会話に参加。そこでアドバイスをもらったり、多拠点の社員と交流できる」といった声も寄せられている。

このほか、大人数でも話したい人と話せるというoViceの特徴を生かしたサービス「oVice宴会」も提供。リモートワークで感じやすい「孤独」への一つの解決策を示す、メタバースの活用事例となっている。

4. アバター接客機能付きのVR展示を1万円台から提供する「CYZY SPACE」

2006年に創業し、京都・東京を拠点にソーシャルVRとAIチャットボット事業を展開する株式会社メタバーズ。「メタバースとバーチャルビーイングスの専門企業」を掲げる同社が提供する「CYZY SPACE」では、スマートフォンやWebブラウザで利⽤できる、ビデオ通話・アバター接客機能付きのVR展示場を1万円台から貸し出している。

(画像はCYZY SPACEのWebサイトより)

CYZY SPACEでは、汎用的な展示会場兼イベントスペースの雛形を用意しており、画像や動画を差し替えてバーチャル展示会を簡単に運営できるという。ニーズに合わせて、空間やアバターをカスタマイズしたり、オリジナルデザインに変えたりすることも可能。バーチャル展示会のほか、VRイベント、学会、シンポジウム、バーチャルキャンパス、ワークプレイス、VR店舗など、活用範囲は多岐にわたる。

一方で、同社は「Hubs Cloud」というVR空間サーバを活用したオリジナル仮想空間の構築も手掛けている。このサービスを使えば、独自のユーザー管理や解析機能を備えられるほか、自社のブランドやサービスを反映した空間づくりなども可能になる。

あえてシンプルなフォーマットの仮想空間を提供することで、リーズナブルな価格と扱いやすさを実現しているCYZY SPACE。一歩踏み込んだ利活用を提案しているところも、同サービスの特徴と言えるだろう。

今後は、メタバースとリアルの「ハイブリッド型」も広がる?

今回は、オフィスにおけるメタバースのサービス事例を中心に、ビジネスでの活用を紹介した。日本ではまだ知名度が低いメタバースだが、利用できるサービスは確実に増えてきている。今後、軽くて画質の良いデバイスなど、VRやARを使った機器が発展すれば、ワークプレイスにおける活用もさらに浸透していくだろう。

ちなみに、先述のoViceは株式会社リコーとの共創で、バーチャル空間とリアルなオフィス空間の360°ライブストリーミングの融合を目指すプロジェクトを展開している。多くのワーカーがリモートワークの魅力とともに、リアルなワークプレイスならではの価値も再確認している今、メタバースとリアルなオフィスのメリットをつなぎ合わせる試みはさらに加速するものと思われる。

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この記事を書いた人

Rui Minamoto 女性誌のインタビューから経済誌の書評欄まで、幅広いテーマの取材・執筆を担当。近年は、広告・PRプランナーとして消費者インサイトの発掘や地方若者議会で「広報力養成講座」の講師も務めている。



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