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国内外の成功事例に学ぶ、「RPA」導入時に重視したいポイント

[June 01, 2021] BY Rui Minamoto

RPAとは何か?

政府が主導する働き方改革の推進を受け、RPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用が注目されている。その直訳は「業務プロセスを自動化するロボット」であり、これまで人が行ってきた定型的なデスクワークを、ソフトウエアロボットを用いて自動化することを指す。

アメリカに本社を置くリサーチ・アドバイザリー企業「Gartner(ガートナー)」は、2020年9月のプレスリリースで、2021年には世界のRPAソフトウエア売上高が前年比19.5%増の18.9億ドルに達する見通しを発表した。パンデミックが経済にも影響を与える中、RPA市場は2024年までに2桁の成長率で拡大すると予測しているのだ。

同社のバイスプレジデントでアナリストのファブリツィオ・ビスコッティ氏は、プレスリリース内で「RPAプロジェクトの主な推進要因は、プロセスの品質、スピード、生産性を向上させる能力」であるとした上で、「COVID-19の危機下においてもコスト削減の要求に応えようとする組織にとって、それぞれの能力がますます重要」になっていると説明。RPAへの投資により、企業はデジタル最適化の取り組みを迅速に進められると述べている。

RPAが重視される背景

RPAは、「帳簿入力」「伝票作成」「ダイレクトメールの発送業務」「経費チェック」「顧客データの管理」「ERP(統合基幹業務システム)やSFA(営業支援システム)へのデータ入力」など、反復性の高い業務においてその効果を発揮する。RPAをオフィスで導入するメリットとしては、主に以下の3つがあげられる。

1.業務の効率化

RPAで業務を代行・自動化するソフトウエアロボットのことを、「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」と呼ぶこともある。人と違って、ロボットは24時間365日の稼働が可能だ。人的ミスが起こりやすく、ダブルチェックが求められるような作業も大量かつスピーディーに処理するため、業務を大幅に効率化できる。

2.経済的コスト・精神的負荷の軽減

企業としては、RPAの導入で膨大な事務作業にかかる人件費やアウトソーシング費を抑えられ、人件費の削減につながる。一方、従業員にとっては、納期やルーティン業務に追われるストレスから解放され、精神的負荷を軽減できる。人材不足が深刻化する中、RPAはその解決策になり得ると期待されている。

3.売上を最大化

RPAが定型的なデスクワークをサポートすることで、従業員はよりクリエイティブな業務に専念できるようになる。その結果、新たなビジネスの機会やイノベーションが生まれ、より積極的な経営戦略の構築にもつながると期待される。

近年、日本国内では労働人口の減少や競争の激化、リモートワークへの移行などを背景に、業務の改善・効率化を求める声が高まっている。RPAは、そのソリューションの一つとして注目されている。

日本国内におけるRPAの導入状況

ICT市場調査コンサルティングのMM総研が、国内企業2000社を対象に行った「RPA国内利用動向調査 2021」によると、2021年1月時点におけるRPAツールの導入率は年商50億円以上の大手・中堅企業(以下、大手・中堅企業)で37%となった。さらに、2022年度には50%に上るとの予測も報告されている。一方、年商50億円未満の中小企業(以下、中小企業)のRPA導入率は10%と大きな差が見られた。

また、大手・中堅企業において、利用促進の面ではパンデミックはポジティブな影響を与えていると見られ、活用部門数や業務数が増えたと答えた企業は47%に上った。コロナ禍でテレワークの普及が急速に進み、出社する従業員が限られることなどもその背景にあると考えられる。

ちなみに、中小企業でRPAの導入を準備中・検討中とした企業は25%、未検討は64%となった。これは、2017年中頃の大手・中堅企業の状況とよく似ているという。今後、中小企業でも導入が進む可能性は十分にあるだろう。

さらに同レポートでは、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を後押しする「DX投資促進税制」が2021年に創設されることにも言及。新規のシステムと既存のシステムのつなぎ役として、RPAが活躍することも想定されると述べている。

国内外の事例と、RPAの導入を成功させるポイント

組織の規模によって導入率に差は見られるものの、今後ますます活用が広がると予想されるRPA。成功のヒントとなる国内外の事例を、以下に紹介する。

1.イギリスの事例:「歳入関税庁」

一般社団法人行政情報システム研究所の記事によると、税金や関税、国民保険料の徴収を司るイギリスの「歳入関税庁」は、2014年よりコンタクトセンターへのRPA導入の検討を開始している。当時、同センターのオペレーターは、7つある既存システムをすべて起動させ、情報を確認しながら市民の電話に対応する必要があった。対応にかかる時間は、1人につき平均6〜7分。ときには一度の通話で解決できず、市民が何度も電話をかけなければならないこともあったという。

そこで、7つの既存システムからロボットが自動で情報収集し、ダッシュボード画面に表示するRPAの仕組みを構築。検証の結果、作業を効率化できると判断されたため、導入が正式に決定された。RPAの導入によって情報確認の必要がなくなった分、電話応対に集中できるようになり、40%のコストダウンに成功。2015年には、より大規模な試験的プロジェクトへの投資も決定している。

内閣府のロボティック・オートメーション・ユニット長を務めるジェームス・メリック・ポッター氏は、歳入関税庁での成功要因の一つとして、コンタクトセンターの業務の性質をあげている。複数の処理を一つにまとめるような「トランザクション」系の業務が多いため、RPAによる自動化の「使用例」を見つけやすいのだという。

ポッター氏は、重要なのは技術を導入することではなく、どのような業務で、ユーザーがどう関わり、そこにどんな課題があるのかを知ることが重要だと強調する。まずは対象となる業務の現状や課題をしっかり把握した上で検討を始めることが、成功の糸口となりそうだ。

2.インドの事例:「Federal Bank」

次に、RPAプラットフォームのリーディングカンパニー「UiPath」の事例記事にある、「Federal Bank」の取り組みを紹介したい。Federal Bankはインドのケララ州に本社を置く民間銀行で、約10年間で1,250を超える支店を展開するまでに急成長している。しかし、その急成長により、必要な業務やコンプライアンス要件が増加するという課題を抱えていた。

例えば、顧客識別コードの管理・統合もその一つだ。それに関連する新たなコンプライアンス要件を満たすため、必要なデータを統合しなければならなかったが、手作業だとかなりの時間を要してしまう。こうした作業を自動化するため、RPAの導入を検討し、導入。その結果、10人の従業員と1年にわたる時間が必要とされていたプロジェクトを、半年で完了できたという。

Federal Bankは、その成長と顧客満足をサポートするため、それまでも常に戦略的にテクノロジーを取り入れてきた。チーフ・オペレーティング・オフィサーのシャリニ・ワリエ氏は、「重要なプロセスを自動化することで、コストを削減し、データの精度を向上させ、会社全体の効率化において拡張性の高いソリューションを得られると確信している」と述べている。テクノロジーに敏感で、「プロセスの自動化」に意識的であったことも、スムーズな導入を後押ししたと言えるだろう。

3.国内の事例:「日本生命保険相互会社」

「IT Search+」の記事によると、日本国内では日本生命保険が2010年にRPAの検討を始め、2014年に導入している。その背景には、保険商品を銀行で販売できるようになったことがある。契約件数の増加が予想される一方で、契約にまつわる事務作業の中には手作業で行うものが多かったため、RPAの検討・導入に至ったという。

例えば、保険金の請求や住所変更など依頼が顧客からあった場合、それまでは書面の情報を手入力で登録していた。そこで、証券記号番号など必要な情報が入ったバーコードを書面に付けて送付し、返送された書面のバーコードを読み取ってCSVデータ化すれば、ロボットが自動で処理をする仕組みを構築した。

RPAを活用するためには、ロボットが処理できるデータを用意する必要がある。そこで、同社は書面にバーコードを付与することにしたのだ。その成功を足掛かりに、2018年より保険事務以外の部門などでも活用を始めている。

加えて同社の取り組みで特徴的なのは、ロボットを擬人化したことだ。「日生ロボ美ちゃん」と名付けてキャラクターを制作することで、「ロボットに仕事を奪われるのではないか」といった現場の拒否感を防ぎ、自分たちの仕事を手伝ってくれる「仲間」という意識を社内に浸透させている。

「対象業務の見極め」、そして「ロボットが処理できるデータの準備」と併せて、「現場への配慮」もスムーズな導入には欠かせない視点だ。RPAのサービスを提供するベンダー主導ではなく、あくまでもサービスを利用する企業が主体となって進めることが重要である。

AIとの違いと今後の展開

RPAを導入するにあたっては、AI(人工知能)との違いを認識した上での活用が求められる。現状、ルール化された自動処理の作業だけを正確に実行していくツールがRPAであり、蓄積された膨大なデータを参照しながら自律的に処理すべき作業を判断するのがAIである。RPAよりAIのほうがはるかに導入コストが高いことも、違いの一つだ。

今回紹介した事例は、AIよりもRPAの導入が適切と思われるケースであり、ルール化できる業務や繰り返し行う業務、PC上で完結できる業務が多かった。RPAの成功事例が増える中、今後はRPAとAIを連携させる動きも活発化することが予想される。そのあたりの動向にも、引き続き注目していきたい。

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この記事を書いた人

Rui Minamoto 女性誌のインタビューから経済誌の書評欄まで、幅広いテーマの取材・執筆を担当。近年は、広告・PRプランナーとして消費者インサイトの発掘や地方若者議会で「広報力養成講座」の講師も務めている。



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