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オフィスは、価値を生み出す場。社員を巻き込み「出社したくなる空間」を創出

クラウド会計ソフトなどを展開するフリー株式会社でオフィス業務を担当する碇奈弓さんに、社員を巻き込んだオフィスづくりのポイントをお聞きします。その具体的な方法とは?

「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げる、フリー株式会社。「クラウド会計ソフト freee」や人事労務ツールの「freee人事労務」など、バックオフィス業務で数多くのSaaSサービスを展開しています。事業の急成長とともに働く人たちも急増し、経営戦略上、企業文化の醸成も重要になってきています。社員が出社したくなるための工夫や仕掛けづくりなど、オフィスの気になることをキーパーソンにインタビューして解き明かしていきます。

事業の急成長を維持するためには、効果的なオフィス環境が不可欠

──リモートワークを経て、大崎のオフィスに移転した背景を教えてください。

 当社では2020年2月からリモートワークとなり、2022年8月から原則、全社員に対して出社を推奨する方針に切り替えると同時に、現在の大崎オフィスに移転しました。

移転前のオフィスは、9フロアにわかれていました。フロアがわかれていることで別部署の人の業務内容が見えづらく、同じ会社の者同士なのにコミュニケーションしにくいという課題がありました。また、2019年6月には従業員数が481人でしたが、2022年6月には916人と倍近くに膨れ上がり、これまでのオフィスのままでは人が入り切らなくなりました。

──事業の急成長による組織拡大のため、新たなオフィスを探さないといけなくなったのですね。

 既存のオフィスで挙がっていた課題の解決は必須でした。実際に移転をするまでの期間はたったの10カ月。この規模の移転にしては、短期間で行うことになったのですが、実は2022年4月まで私は育休をいただいていました。ですから前半はオフィス移転の主担当が不在のなかで始まったのです。

──現在、リモートワークに移行する企業も増えていますが、なぜ再び出社というワークスタイルに切り替えたのでしょうか?

 確かに国内企業ではリモートワークにシフトする会社も増えていますが、弊社は違います。重要かつ抽象的な話をするときには、リモートワークでは議論が進みづらいという声が上がっていたからです。

例えば、「課題が見えていないケース」や「今後どう改善していくのか」というような抽象的な話のときには、オンラインでは議論が進みづらい。一方で対面であれば、ホワイトボードに書きながらブレストもできます。それに場の雰囲気を見ながら話していけるので、結論への道筋が見えやすいという強みがあります。

ほかにもメンバーに確認したいことが出てきたとき、オフィスで隣に座っていれば、パッと会話をすればすぐに解決できるじゃないですか。でも、リモートではスケジュールを確認して、空いている時間帯に話をしようとする。すると確認に数日かかることになり、ビジネススピードも大幅に落ちてしまいます。

私たちフリーは、ミッションを「スモールビジネスを、世界の主役に。」と掲げています。経営陣からもスピードが落ちてしまうのは課題に感じるという声が多く、オフィスに戻ることを選んだわけです。

現在のオフィス

──駄菓子屋やパーティールーム、キッチンなどユニークな会議室がたくさんありますが、どうやってテーマ決めなどを進めていったのですか?

 社内のSNSで「新オフィスにあったら嬉しいもの、普通にオフィスにはないけどフリーならここまで攻めてほしい等なんでもOK!実現可能性とかコストとか無視で、理想ドリブンで自由に発想しよう」などと大喜利的に呼びかけまして・・・・・・。従業員の皆さんがオフィスに戻ってきたくなる仕掛けについて216件のアイデアが集まり、そのなかから運営のメインメンバーで企業カルチャーに合っていて、かつコミュニケーションが新たに生まれそうなもの、を前提に絞り込んでいきました。

そのうえで発案してくれたメンバーに「会議室をつくりたいので一緒に企画してもらえませんか?」と声をかけると、ぜひ参加したいという回答をもらえることが多かったのです。

──コンセプチュアルな会議室をつくるにあたり、苦労されたことはありますか?

 キッチン会議室のように水回りが必要なケースも初めてでした。全体会議などを行う大人数の収容が可能なパーティールームでは、音量に気をつけないといけないというように、運用を開始してから見えてきた注意点もあります。これまで導入したことのない設備が多かったので、とにかく戸惑いながらも使われ方を見ながら運用をチューニングしていきました。

キッチン会議室「シャショク」
縁側会議室「タイシャクタイショウヒョウ」

──大喜利をし、オフィス移転のプロジェクトメンバー以外を巻き込んだことのメリットはありましたか?

 当事者意識が生まれたことでしょうか。自分がアイデアを出し、オフィスづくりをしたことで、オフィスに対する思い入れが出てきます。オフィスは移転して終わり、というわけにはいきません。例えばキッチン会議室では衛生管理をしなければなりません。料理をした後に、きれいに片づけることも重要です。

実際、企画したメンバーは、オフィスオープン時に「キッチン会議室をつくったのでぜひ見に来てね」とアピールしたり、運用面で活躍してくれたりと相乗効果が生まれました。運営だけが呼びかけるのでは限界がありますが、メンバーが増えると間口が広がり、運用に関わってくれる。これは巻き込んだことによるメリットです。

ミッションをクリアするための仕掛けをあちこちに

──新オフィスについて紹介してください。

 4フロアになり、当社のロゴにもなっている「つばめが海を渡り大地と森を抜けて空に飛び立つ」というコンセプトから、フロアのテーマを「海、大地、森、空」にしました。カーペットの色やドリンクカウンターなどをテーマにひもづけていて、森のフロアではドリンクカウンターに「さわさわ」という名前をつけて、森の雰囲気を出しています。

ちなみにこのビルの構造は真四角で、中央にエレベーターがある形になっています。そこでエリアを4分割したうえで、計算には欠かせない「+、-、×、÷」という四則演算記号を各エリアに割り振り、従業員の位置を知らせるときに「20階の+」というような形で伝えられるように工夫しました。

ドリンクカウンター「さわさわ」

──移転にあたり、KPIのような目標は設定しましたか?

 明確な目標はありませんでしたが、オフィスに戻るのを強制すると楽しくないので、出社したくなるオフィスにしたいというのはありました。引っ越しといえば、“そば”じゃないですか。そこで移転当初、オフィスの一角にそばのカップ麺をたくさん並べて自由に取ってもらうことにしました。

ほかにもキッチン会議室を利用して、一緒に料理をするイベントを行ったり、DIYの会議室では12月に向けてクリスマスのオーナメントをつくったりなど、いろいろなイベントを実施しました。その様子を見て、今では社員が自発的にいろいろなイベントを開催しています。まずはお手本じゃないですが、使っているところを見せるのは大事でしたね。

成長の原点である企業カルチャーの醸成には、“働く場”が重要

──企業カルチャーを醸成するにあたり、オフィスはどのような位置づけになると考えていますか?

 当社では「本質的な価値を追求するカルチャー」を重視していて、「マジ価値」と呼んでいます。ユーザーさまにとって本質的な価値があると自信を持って言えることに業務の軸足を置いているのですが、 オフィスを「価値があることを生み出せる場」にするために、いろいろな仕掛けをしています。

例えば、来客会議室には「シギョウ(士業)」「ハンバイ(販売)」「ガクシュウ(学習)」のようにお客さまの業種や事業名をつけ、ユーザーさまが仕事をしているシーンの写真を額に入れて壁に飾っています。社員がこの写真を見て、ユーザーさまを目にすることでなんだか背筋が伸びるような瞬間をつくり出しているのです。

会議室「ガクシュウ」。ユーザーの方々の写真が飾られている

──経営戦略上でのオフィスの位置づけを教えてください。

 組織が急拡大するなかで、いろいろな価値観を持った人たちが入ってきています。しかし、人数が増えても目線を同じに合わせていかなければいけません。課題解決を目指す前に、共通認識がないと話し合いもうまくいかないからです。

例えば当社では、価値基準のなかでも「理想ドリブン」という言葉があります。まずはリソースにとらわれずに理想から考えていこうということなのですが、この共通認識があれば自ずと「ユーザーにとっての理想ってなんだろう?」という観点からすぐに本質的な議論をすることができます。こうした共通認識を持ちながら、オフィスで顔を合わせて話すことで、ミッション達成までのスピードを一層加速させていく。そういう意味でもオフィスは、経営戦略上、重要です。

──エントランスも会社のグッズなどが飾られていて楽しい雰囲気ですね。

 ありがとうございます。当社ではオフィスのコンセプトを「楽しさダイバーシティ」としているのですが、人それぞれ、楽しいと思うことは違うのでこのネーミングにしています。コンセプチュアルな会議室は、テーマに合ったしつらえをすることなどで、「ちょっとした楽しさ」を感じてもらえたり、リラックスできる空間の中で間接的に生産性を上げるのにつながればいいなと思っています。

──今後、どんなオフィスに進化させていきたいですか?

 オフィスを移転してまだ2年目なので、まずは日々の運用をしっかりと行いたいです。今回のオフィス移転を通じて見えてきたことがあります。それはわれわれ、バックオフィスの人間が現場を理解することの重要性です。例えば、お客さま対応で電話業務が多い部署では、メンバー同士が隣に座ると周囲の声が気になってしまいます。もちろん、このような課題に対しては日々改善していますが、現場を理解していれば、オフィス移転時に設備や座席の配置についてよりよいものを選べたかもしれません。

いずれにしても現場から上がってくる声には潜在的なニーズが隠れているので、常に耳を傾け、よりよいオフィスづくりに反映していきたいですね。そのためにも、われわれバックオフィスがどんなことを考えているのかを発信をして知ってもらうことで、意見の言いやすい環境づくりを続けたいです。決して独善的にならずにいろいろな人を巻き込み、総務だけで完結しないオフィスづくりにこれからも取り組んでいきます。

この記事を書いた人:Noriko Matsuba