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テレワークのストレスを軽減する「オンラインデトックス」| WORK STAGE TREND2023

ニューノーマル時代の働く環境を表す新概念「ワークステージ」をキーワードに、未来の働き方やオフィスの環境づくりについて提言を行う連載企画。第5回は、テレワークのストレスを軽減する「オンラインデトックス」について解説する。

「オンラインデトックス」のすすめ

デジタルコミュニケーションとテレワークが普及し、働き方の自由度が高まる中、オフィスにも、仕事をするための物理的な場所だけでなく「コミュニケーションの場」として機能を拡張することが求められている。

本連載の第3回では、コミュニケーションを促すためオフィス内に設けられた「ファンスペース」や、オンラインでの交流を提供する「オンラインコミュニティ」について、第4回ではオフラインとオンラインのメリットを併せ持つ「フィジタルコミュニケーション」について解説してきた。

テクノロジーの進化によりコミュニケーションの利便性が高まる一方で、オンラインミーティングに費やされる時間が増え、ワーカーの心身にかかる負担やストレスが課題となっている。そこで今回の記事では、オンラインコミュニケーションから一定の距離を置く「オンラインデトックス」の時間を設けることを提案したい。オフラインの時間を持つことによりワーカーのストレスが減少し、業務の生産性も上がることが期待される。

過剰なオンライン会議は、ワーカーのストレスを増大させる

テレワークを導入している企業では、オフィスへの通勤時間が大幅に削減され、時間や場所にとらわれることなく仕事ができるようになった。Web会議システムが普及し、どこからでも会議に参加することができる一方、従来であれば参加する必要がなかったミーティングにも招待されるようになり、業務時間を圧迫されてストレスを感じているワーカーも多いのではないだろうか。

2022年11月に株式会社ワーク・ライフバランスと株式会社DUMSCOが行った調査によると、テレワークの推進により、高いストレスを感じているビジネスパーソンの割合が全体的に減っている一方、1日4件以上のオンライン会議に参加しているビジネスパーソンで高いストレスを抱えている人が多い傾向が見られたという。

画像は株式会社DUMSCOのプレスリリースより

また、同調査では、高いストレスを感じているビジネスパーソンのうち57%は、本人もストレスを自覚できておらず、突然休職するリスクがあることも指摘されている。

画像は株式会社DUMSCOのプレスリリースより

多すぎるオンライン会議は、ワーカーの心と体に負担を強いるだけでなく、企業にとっても収益損失のリスクになりかねない。

信頼関係がない中で「見られている」というストレス

新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業では急激な働き方の変革を余儀なくされた。コロナ禍に就職、転職したワーカーの中には、対面によるコミュニケーションで信頼関係を築く余裕がないまま、テレワークでの業務がスタートしたケースもある。

Web会議ツールや、前回の記事で紹介した「フィジタルコミュニケーション」を可能にするデジタルデバイスは、組織内のメンバーに信頼関係の土壌がある場合、互いの存在をより身近に感じさせる役割を果たす。だが、相手と一緒に仕事をした経験が少なく、まだ信頼関係が構築されていない場合には、監視されているようなストレスを感じることもあるのではないだろうか。

また、「生産性パラノイア」についての記事で紹介したように、テレワークで部下の働く姿を実際に見ることができない上司は、「部下が生産性高く仕事をしているかどうか」を過度に心配する傾向がある。このような不安を解消するべく、パソコンのカメラを使ったり、画面やマウスの動きを読み取ったりして部下の仕事ぶりを監視する「監視ツール」も登場している。信頼関係を構築できないまま「監視ストレス」だけが強まれば、ワーカーの心身にかかる負担は当然大きくなる。生産性が上がるどころか、マイナスの影響を与えてしまうかもしれない。

「ノー会議デー」や「オフィスアワー」でオンラインデトックスを促す

オンラインコミュニケーションによるストレスを軽減するためには、出席するべき会議を厳選し、ミーティングの間にインターバルを置く、テレワークでもチーム内の信頼関係を築く仕組みを作るなどの工夫が欠かせない。

加えて重要なのは、ワーカーがオンラインから離れて過ごす時間を持てるよう、企業が環境を整備することではないだろうか。デジタルデバイスから距離を置く「デジタルデトックス」の必要性はこれまでも指摘されてきたが、日常生活のあらゆる側面がデジタル化された現代において、スマートフォンやPCを完全に排除することは難しい。一方、「オンラインデトックス」は、オンライン上のコミュニケーションから一時的に離れることで実現でき、比較的ハードルが低い。

週に1日程度、社内会議を行わない「ノー会議デー」を設けることも、不必要なオンライン会議を減らす上で有効な施策のひとつだ。「ノー会議デー」のメリットについて取り上げた記事で紹介した通り、日本でも既にノー会議デーを導入し、ワーカーの心身にかかる負荷を減らすことに成功している企業がある。オフラインでの思考や作業に集中する時間を確保することで、業務の生産性を上げる効果も期待できるだろう。

「会議をしない日」を定めるのがノー会議デーだが、逆に積極的にコミュニケーションをとる日時を「オフィスアワー」として設定する方法もある。元は大学のような教育機関で、教員が学生からの質問や相談に応えるため、研究室に待機する時間を指す言葉だ。企業においてもこのような時間帯を設けることで、リアルなコミュニケーションが促進され、オフィスアワー以外の時間におけるオンラインコミュニケーションの負荷を減らすことができるだろう。

オンラインデトックスが向上させる、テレワークの生産性

Web会議ツールが普及し、テレワークの導入が進んだことにより、多くのワーカーが時間と場所の制約から解放された。デジタルツールを活用して、大都市の近郊に限らず、自分の好きな土地に移住して仕事をする人も増えている。

離れた場所に複数の拠点を持つ企業にとっては、メンバー間のコミュニケーションを促進する上で、第4回で紹介した「tonari」のような最先端のコミュニケーションツールが助けになるだろう。

新しいワークスタイルが広がれば、新たな課題も生まれる。手軽に出席できるからこそ増えてしまうオンライン会議の時間や、「常に見られている」という感覚が、ワーカーに過度なストレスを与える可能性もある。企業がテレワークと同時に「オンラインデトックス」の仕組みを導入することは、ワーカーの心身を健康に保ち、チーム内の健全なコミュニケーションを促す上で重要だ。

ストレスが取り除かれれば、個人の仕事の質は上がり、生産性が向上する。一人ひとりが能力を発揮することで、企業全体の競争力も高まるだろう。

「ワークステージトレンド」第6回の記事では、これまで取り上げてきた論点を踏まえ、自己実現や貢献実感を意識した働き方「コンシャスワーク」をテーマに、働きがいを生む場としてのオフィスについて考える。

この記事を書いた人:Worker's Resort Editorial Team