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【前編】働き方改革はGAFAに学べ 世界4大テクノロジー企業が取り入れるコーポレートキャンパスとは

[February 06, 2018] BY Kazumasa Ikoma

仕事の作業スペースに留まらず、生活に必要なほぼすべての機能を広大な敷地に内包するコーポレートキャンパス。スポーツ設備や娯楽施設、カフェテリア、ヘルスケア施設に移動手段となる通勤バス等をすべて無料で社員に提供し、カジュアルな格好に自由な就労時間という環境を整えたこの「キャンパス型オフィス」は、今日のワークスペースの中でも最高レベルの施設だろう。

今回はそんなコーポレートキャンパスについて、前後編の2部作にわたってお送りする。世界の大企業が社員の働き方改善のために取り入れたワークプレイスとはどのようなものだろうか。本記事では、コーポレートキャンパスの紹介とその歴史について触れていく。

コーポレートキャンパスとは

「コーポレートキャンパス」と聞いた時に一番に思い浮かぶのが、カリフォルニア州マウンテンビューにあるGoogle本社のGoogleplexだろう。「キャンパス」という言葉が入っているように、コーポレートキャンパスには大きく次の3つの特徴がある。

1. 広大な敷地と仕事用作業スペース

「キャンパス」と呼ばれる所以は、ある程度の人数がそこで共同作業を行えるというところにあり、実際にここで紹介する企業も1つのキャンパスに数万人単位の作業スペースを充実させている。郊外にあるキャンパスならばそれを実現しやすいし、都市部にあるものでも高層ビルや近い建物とのツギハギでキャンパス化を行うことができる。この広いスペースはもちろん仕事の作業以外のスペースにも充てられる。

2. 娯楽・生活スペース

次にキャンパス要素として挙げられるのは、生活スペースや、それを通じて人とのつながりを作る社交的な環境だ。大きな企業になればなるほど社員同士のコラボレーションや共働というのは大きな課題となる。カフェテリアやジム、運動場等が学校キャンパスにあるように、社員が集まってミーティングをする場所だけではなく、予期せぬ場所での社員同士の偶然の出会いが起こるような動線設計も必要だ。またクリニックのように、社員の健康維持をサポートする施設もコーポレートキャンパスに見られる特徴の1つである。

3. 自然豊かな公園施設

他の単なる巨大オフィスには無くてコーポレートオフィスにある特徴は、庭があること。室内や室外にかかわらず、自然豊かな公園スペースを確保し、社員のインスピレーションの源となるような環境があることもコーポレートキャンパスと呼ばれる条件の1つだ。

関連記事:ワークプレイスと自然の調和、バイオフィリックオフィス5事例

BIG & Heatherwick StudioによるGoogleの新キャンパスのデザイン

こうして他に類を見ない充実した施設とそこでの社員の自由な働き方はこの種のオフィスの最大の特徴だ。そして、先述のGoogleを含めた世界の4大テクノロジー企業と言われているGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の本社はすべてこのコーポレートキャンパスの形態を取っている。

そんなコーポレートキャンパスはどのように成り立ってきたのだろうか。

コーポレートキャンパスの歴史

Bell Labsのトランジスタチーム(写真はComputer History Museumより)

もともとコーポレートキャンパスは、アメリカ国内においてリサーチサイエンティストやエンジニアのための研究開発施設として誕生した。 最初に作られたのは、アメリカ最大手の電話会社、AT&Tがニュージャージー州に1942年に建てたとされるBell Labs。初期のコーポレートキャンパスはアイビーリーグの大学キャンパスのように、草木が生える自然豊かな中庭が存在し、穏やかで安全な場所で研究開発に集中できるように設計されたワークプレイスだった。

当時のコーポレートオフィスは、インダストリアルパーク、リサーチパーク、もしくはテクノロジーパークと呼ばれ、その名が表す通り産業と科学の融合を実現させる先進的な設備であると同時に、自然を享受する場所であった。このBall Labsに続き、1950年代にはGeneral Motors、General Electric、IBMそしてGeneral Life Insuranceといった企業が、広い敷地が確保できる郊外に同様のコーポレートキャンパスを建設した。

Bell Labs(写真はTypology: Corporate campusより)
アイビー・リーグを代表するハーバード大学の中庭、ラドクリフクアッド

それまで都市部にオフィスを持っていた大企業が少し離れた郊外にコーポレートキャンパスを建てたことは、当時の人口移動問題に繋がった。1950年代、戦後のアメリカにおいて都市部の人口は溢れ、さらに市民は人種ごとに分かれて暮らし、不安定な治安状態であった。その中で中流・上流階級の白人が、非白人の多い都市部から郊外へ移る、いわゆる「ホワイトフライト」が発生。コーポレートキャンパスには高学歴の白人研究員が多く集められたこともこのホワイトフライトを起こした要因の1つとなった。

キャンパスで育まれる企業文化

その後、コーポレートキャンパスは物理的に設備の整ったワークプレイスであるという点以外にも、「文化的、そして社交的な場所」、つまり社員同士が仕事以外にもつながりを構築できる場所だという認識が形成されていった。アメリカの大学キャンパスが単に勉学を行うだけの場所ではなく、時には課外活動や、スポーツ、社交的活動を通じて学生生活そのものを豊かにする場所であるように、コーポレートキャンパスもただ仕事をするためだけの場所ではなかった。社員の共同体意識や地域社会的意識を育むには最適で、彼らの生活全般を良くするものだったのである。

実はコーポレートキャンパスが持つ文化的な側面は、今日テクノロジー企業が多く集まるサンフランシスコ・ベイエリアの文化と密接な関係があると言われている。それはコーポレートキャンパスの誕生の背景が、1960年代にサンフランシスコで発祥したヒッピー文化の考え方に非常に近いということ。当時ヒッピー達はすでに文化が出来上がっている先進地域から離れて、自然のある場所で近しいマインドセットをもつ人々と独自の集落を作り、自らのルームを決め、自分を解放した。その姿が、テクノロジー企業が郊外に自らの企業文化で固めたキャンパスを作る姿と重なるというのである。

機能的な部分で評価されることが多いコーポレートキャンパスだが、実は企業のマインドセットを社員に反映させる上でも重要な役割を担うことが時代とともに認識されるようになった。

このように社員の包括的なオフィス体験を高め社員の成長を実現させるにつれて、コーポレートキャンパスは進化を遂げながら、研究職以外の一般社員用のオフィスにも適用されていった。オフィスはそれまであった従来のワークプレイスの常識から抜け出し、レクリエーション施設やカフェテリア、ソーシャルスペース、簡単な買い物やサービス施設を含むところまで拡大。社員がコーヒーを飲んだりテニスをしたりすることはあくまで企業が提供するワークスタイルをこなしているに過ぎない、という考え方が一般的になっていった。

21世紀のキャンパス

そのように少しずつ改善を続けてきたコーポレートキャンパスだったが、1990年代から在宅勤務の考え方や一部作業のオフショアリングが少しずつ広まるようになり、「社員が常にオフィスにいる」こと自体が少なくなった。それに合わせ、コーポレートキャンパスの機能にも変化が見られるようになった。

企業は社員にオフィスに来たいと思わせるような工夫として、上に挙げた施設以外に実際に食事を作れるスペースやリビングルームのような生活空間を漂わせるような空間づくりを行った。さらに自身で運転する代わりにインターネットに接続可能な企業専用通勤バスも提供し、自宅にいてもオフィスにいても時間を有効に使いながら仕事と生活行動のほぼ全てを行うことが可能になった。そして今日のコーポレートキャンパスは私たちがGoogleplex等で知る仕様になっている。

企業が現代のコーポレートキャンパスに求めるものは、最終的には社員同士の出会いと共働である。今キャンパスに置かれている公園や娯楽施設、生活スペースは自宅にいても同機能を利用することができる。しかし、同僚に会えるのはこのコーポレートキャンパスなのだ。これこそ今日のコーポレートキャンパスがワークライフインテグレーションを支える理由であり、そのキャンパスがオフィスの仕様を超える目的である。仕事と生活の一体化こそ、コーポレートキャンパスが実現する新たなワーク/ライフスタイルだ。

デンマーク・ビルンに2019年完成予定のLEGO Campus

ここに現時点で企業のコーポレートキャンパスが提供する施設・スペースを並べてみた。このリストを見てみると、現代のコーポレートキャンパスがもはや単純に「オフィス」とは呼べないほどの施設になっているのがわかる。

  • カフェテリア
  • バー
  • 保育施設
  • 美容室・ヘアスタイリングルーム
  • ランドリールーム・クリーニングサービス
  • 温泉・スパ・サウナ
  • 病院
  • ゲームルーム
  • 仮眠ルーム
  • マッサージルーム
  • ジム
  • スイミングプール
  • バスケットボールコート
  • ハイキング・ジョギングコース
  • 自転車修理
  • 公園
  • 映画館
  • 植物用温室

関連記事:企業カフェテリアが禁止に?巨大テック企業従業員も困惑の事情とは

このような巨大キャンパスを持てるのは世界でも一握りの企業ではあるが、世界的に著名なテクノロジー企業GAFAを中心とした資金力のある企業は次々と建設を進めている。彼らが持つコーポレートキャンパスから見えてくるものは何か?後編で触れていくことにする。

後編に続く

<参考記事>

The New Corporate Campus
Modernism, Postmodernism, and corporate power: historicizing the architectural typology of the corporate campus
The rise of the corporate campus
Upbeat Site Furnishing – A LOOK INSIDE WHAT’S SHAPING THE NEW CORPORATE CAMPUS

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この記事を書いた人

Kazumasa Ikomaフロンティアコンサルティングにてリサーチャーを務める。アメリカ・サンフランシスコでオフィスマネージャーを務めた経験をもとに、西海岸のオフィスデザインや企業文化、働き方について調査を行い、人が中心となるオフィスのあり方を発信していく。

    

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